軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

150.卑怯馬鹿の質の悪い冗談

「シリトラ、ほら。組合だよ。コーバスだよ」

「・・・・・・」

組合に入ってきたのは、死んだ目をしたシリトラと、それに必死に話しかけているモレリア。俺が求めていたのは、あんな状態のシリトラじゃねえ。

普段なら組合に入ってきて早々、みんなを怒鳴りつけるのが正しいシリトラだ。だというのに組合のこのおかしな状況を見ても、死んだ目で何も反応しねえ。

今度はどうもシリトラが故障してるようだ。モレリアが必死にシリトラに話しかけている。

「うわ、何これ?組合をこんなにして怒られないの?」

シリトラに必死に話しかけていたモレリアだったが、流石に組合の様変わりに気付いたようだ。

「ねえ、シリトラ。組合をこんなにしたら流石に駄目だよね?」

「・・・・・・・だ・・・め・・・?」

「そう、絶対ダメだって。これはいつもの悪ふざけだから、シリトラが注意しないと」

「・・・私が・・・注意」

おお!何かシリトラの死んだ目に光が戻ってきた。

「そうだよ!シリトラが止めないと!何でこうなっているか分からないけど、どうせくだらない理由の、いつものバカ騒ぎだって分かるでしょ?」

「バカ騒ぎ・・・分かる!私にも分かります!・・・モレリア!水!」

「はいはい」

急に元気になったシリトラが、モレリアに魔法で水を出してもらい頭から被る。そうして自分の顔を両手でパンパンと叩き、体を振って水を飛ばしたシリトラはいつものシリトラに戻っていた。

「こら!あなた達!何で組合をこんなに訳分からない事にしているんですか!片付けなさい!」

「うへえ。シリトラだ」

「帰ってきて早々、うるせえなあ」

「いや、それよりもシリトラも塗るぞ!」

「シリトラ、ちょっと待て!壁の布を剥がすな!」

みんなに怒りながらも、壁の布を剥がして回るシリトラを慌てて止めて、アウグ達が詳しく説明するが、

・・・・・

「はあ?呪い?馬鹿じゃないんですか?あなた達なら呪いを取り込んで余計性質が悪くなるでしょう?」

「馬鹿とはなんだ!喧嘩売ってんのか?」

「呪いなんて取り込んだら腹壊すかもしれねえだろ!」

「ふーん。呪い程度に怖気づいたんですか?」

シリトラの煽りに単純な連中がすぐにヒートアップする。

「馬鹿野郎!誰が呪い程度にビビるかよ!」

「逆に呪い返してやるよ!」

「まあ、ビビりのこいつらは仕方ねえけど、俺は呪いなんて何とも思ってねえけど」

「嘘つけ!ハイーシャが一番ビビッて漏らしてたじゃねえか!」

「漏らしてねえよ!勝手に話創ってんじゃねえ!ぶん殴るぞ!」

「こら!喧嘩はこの辺片付けてからにして下さい!ベイル!ゲレロ!あなた達もそこから降りなさい!」

うお!こっちに飛び火してきやがった。ってあれ?何か俺めっちゃ睨まれてない?シリトラに恨まれる事したか?

取り合えず分かんねえから、モレリアに聞くか、と考えて近づいていくと、何故か安心したような顔をしていた。

「よお、モレリア。どうした?見た事ねえぐらいキモイ笑顔になってんぞ?・・・っと!あぶねえ!蹴ってくんな!」

「ベイルがこれ以上変な事言わなければ蹴ったりしないよ。なにせ、ようやくシリトラが直って僕は気分がいいからね」

「シリトラ何かあったのか?来た時はすげえ顔してたけど?」

「ああ、ちょっと、説明出来ない事がたて続けに起こってね。考え過ぎておかしくなってたんだ。けどコーバスの組合見て、元気になったみたいだ」

あれ見て元気になるってシリトラ頭大丈夫か?俺は最初見た時ドン引きしたぞ。

「あのヘンな儀式見て元気になるっておかしくねえ?」

「違うよ。儀式じゃなくて、みんなが変わらず馬鹿だったからだよ。凄い難問で頭悩ませてた所に、単純な計算が出てきたみたいなものかな。みんなが頭悪くて本当に助かったよ。王都でシリトラが壊れてから全然直らないんだもん。流石の僕もかなり慌てたよ」

うーん。取り合えずコーバスの連中が馬鹿だってのは同意見だ。ただ、その中に俺は入ってねえよな。

「でも、シリトラさん。俺らの呪いどうしたらいいんですか?今まではこうやって祈っていたから止まってたのに、祭壇壊したらまた不幸が降り掛かってきますよ?」

ショータンはまだ呪いが怖いのか、シリトラに少しだけ不満の篭った声で質問する。

「はあー。それなら一番恨まれるのはこうやって祭壇壊した私でしょう。いいですよ。これからの呪いは私が全て引き受けましょう。これで文句はありませんね?」

「ええ?マジっすか?そんな事言って後で俺達に呪い返しとかやめて下さいよ」

「そんな事出来ないので安心して下さい。そもそも私は呪いなんて信じてませんから、問題ありません。それと!体に異変が出ている二人は医者に行ってきなさい!どうせ裏路地で立っている女を買って病気を移されたんでしょう。呪いじゃなくて自業自得です!」

シリトラがそう怒鳴ると、股間を抑えながら、そそくさと組合から出て行く二人が見えた。

よし。この調子なら明日のカラーリング無しになりそうだ。やっぱりこういう時はシリトラだぜ。さーて。酒でも飲むか。

金?全部エールに使われたから持ってねえはずだろって?

帰る途中で絡んできた馬鹿どもから巻き上げた決まっているだろ。

・・・・・

酒?・・・・!!!

「ああああああああ!!!!」

「ベイルうるさいですよ!」

「うるせえ!ちびっこ!こっちはとても大事なことを思い出したんだ!!」

小言がうるせえシリトラを怒鳴りつけて、慌てて受付のリリーの所に向かう。

「リリー!大変だ!」

「ベイルさんの顔が大変な事になってますよ。その顔で勢いよく詰め寄られると、流石に怖いのでやめて下さい。ラルダなら泣きますよ」

カラーリングベイルは今日で終わりだから、大丈夫だ。ラルダを泣かせる事はねえ。

「そんなんどうでもいいんだ。荷物だ!俺宛に荷物届いてただろ?あいつだ!あの王都の卑怯馬鹿の女。ナンバー3を受け止める・・・アフィル!アフィルだ!あいつから荷物届いてるだろう?」

「エフィルさんですね。何で忘れてるんですか?一応弟子ですよね?」

「ああ、あいつは破門にした。理由はねえ」

「理不尽すぎません?」

あいつのせいで嬢ちゃん貴族に名前覚えられてんだぞ。破門にされて当然だ。

「うるせえ。それよりも荷物だ。届いているだろ?王都から俺のウイスキーがな!」

そうなんだ。あの卑怯馬鹿にウイスキー頼んでたのさっき思い出したぜ。カルガーと別れる時にコーバスに送るように伝言頼んでおいたから届いているはずだ。

「ああ、あれですか。ベイルさんのだったんですね。差出人も受取人も不明だったから商業ギルドに売りましたよ」

「はあああああ?嘘だろ!何で俺のウイスキー勝手に売るんだ!」

「いえ、こういう場合は3日経過したら売る決まりですから」

「う、嘘だろ。・・・何で・・・こんな・・・」

酷い、流石にこれは酷い。桜で癒された俺の心が、どんどん荒んでいくのが分かる。あの卑怯馬鹿何で受取人の名前書いてねえんだ。信じられねえ。

「リリー、俺はちょっと旅に出る。しばらくしたら王都が跡形も無く消えると思うが、気にするな」

「何、さらっと不謹慎な事言っているんですか。そんな大事件起きたら国中大騒ぎですよ。気にしないのはベイルさんぐらいです。・・・・はあー。冗談ですよ。冗談」

「・・・・冗談?」

「そうです。ちゃんとベイルさん宛に届いて組合で保管してあります。今の小芝居はエフィルさんからの依頼です。これを読めば分かってもらえるはずです」

そう言ってリリーから渡された手紙には、俺にウイスキーを渡す前にさっきの小芝居をして欲しいと書いてあった。そしてその下に『先生、私の考えた卑怯技どうですか?びっくりしました?別れも言わずに王都を出た卑怯技の仕返しです。今度会ったら感想聞かせて下さいね』と書いてある。

・・・・・・

おおおおお!!!ふざけんなよ!あの卑怯馬鹿!マジで信じられねえ!こんなん卑怯技じゃなくて、性質の悪い冗談じゃねえか!今度会ったらクイトと一緒に肥溜めの刑だ!アウグだけじゃねえ、ハイーシャもぶち込んで倍肥溜めの刑にしてやる!

「ラルダ、ベイルさんを倉庫に案内してあげて」

「はい、ベイルさんこっちです」

俺が怒りに震えているのが分かったのか、受付前で邪魔なのか分からねえが、リリーにそう言われて、ラルダに案内されたのは組合の倉庫。組合員は職員立ち合いじゃないと絶対入れない場所だ。手癖の悪いのが多いからね。・・・そう言えば俺の無料券盗んだ奴が、まだ、誰か分かんねえんだよな。あとで情報屋に聞いてみるか。