軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

100.女王蜂蟻討伐依頼③

そこからは2回、合計3回蜂蟻を釣って数を減らしたんだけど、俺等は20、23、25匹だった。合計68匹。単純計算で4チーム合計で272匹討伐した事になり、運よく巣の半分ぐらいを殺したとすれば今回巣の規模は500匹以上って所だ。予測より倍以上に数が違うけど偵察のロッシュ達何やってんだよ。

「で?ペコー、どうすんだ?」

今は一度巣穴の近くで全員合流して入口を観察中だ。

「最後は巣の入口前で同じ様に、中の蜂蟻を釣ってから突入だな。ただ、釣れる数は今までの比じゃねえだろうから気をつけろよ」

そう言って入口の所の蜂蟻に駆け出したペコー達は、速攻で瀕死にさせ、瀕死になった蜂蟻は口を打ち鳴らして助けを呼ぶが・・・。

「何か少なくねえか?」

「思ったより来ないですね」

巣の入口前で対応していたペコーとショータンが、思ったより釣れなくて不思議そうにしている。今の所、巣の中から釣れたのは30匹ぐらいだ。ペコーは100は出てくるだろうと言っていたけど、半分もいねえ。

取り敢えず瀕死の蜂蟻をペコーが巣の奥に蹴り込んで、また少し様子を見る事に。そうして待機していると、後ろで解体している1級の会話が聞こえてきた。

「ええ?これが魔石?小っちゃいなー」

「だろ、これが胸のどこかにあるんだよ。ペコーさんが言うには売れても10ジェリーぐらいらしい。そんなの蜂蟻の体液塗れになりながら探すのも馬鹿らしいだろ。俺は気になって1匹だけ探してみたけど、もう二度とやらねえ」

「だな、10ジェリーは無いわ」

俺も気になって見せてもらったが、本当に見た事ないぐらい小さい魔石だった。吹けば飛ぶぐらいの大きさで、下手したら10ジェリーでも買い取ってくれないんじゃねえか。

そうしてしばらく待つが、特に巣穴から蜂蟻が出てくる様子は無い。虫だから待ち伏せとか考える頭は持ってねえだろうし、本当にもう出てこないみたいだ。

「このままここで待っていても仕方ねえから巣に入るぞ。ショータンのチームは入口を見張っておいてくれ。残りは全員で突入する。話じゃあ巣の中は、結構横穴があるみたいだから、気をつけろよ」

そう言って松明を点けて、ペコーを先頭に地面に空いた巣穴に突入していく。巣穴自体は俺等が立って歩くには十分な高さがあり、傾斜もそこまできつくないが、武器を振り回すにはちょっと狭いし、足場も悪い。ただ、所々天井が高く平坦で広い場所があるので、蜂蟻が出た場合は、そこで迎え撃っている。

そしてペコーの言う通り、横穴がたまに出てくるが、そこがただの部屋で行き止まりの場合は良いんだけど、そこから先に道があると面倒だけど、調べないといけない。そんな訳で既に各チームで別れて巣穴を進んでいる。

「それにしても全然いねえなあ」

「そう言う事言うな」

ペコー達と別れてから、まだ一匹も遭遇していない事をアブブがぼやくと、松明を掲げ先頭を進むランが怒り出す。アブブみたいな事言うとフラグになるからな。一番気を張っている斥候のランにとっちゃあ、冗談じゃ済まねえだろう。

「横穴」

怒っていたランだったが、横穴を見つけたので足を止める。松明を持つのは戦闘のランと最後尾のフェイローなので、確認はフェイローが行う。途中の横穴はくまなく調べているけど、俺は万が一に備えてフェイローの代わりに後ろの警戒だ。

「特になにも・・・ここも同じように木の枝や葉っぱなんかが集められていますね」

またか。何でこんなものが必要なのか・・・虫の考える事は良く分かんねえな。なんて思っていたんだけど、次の横穴は全く別のモノが集められていた。

「ここは・・・ちょっと違うな・・・こ、これは!!!」

中を調べていたフェイローの驚く声に全員が一気に警戒する。

「みんな入って来てくれ。蜂蟻はいないから大丈夫だ」

なら何をそんなに警戒してんだ?気になりながら横穴に入ると、その意味が分かった。

「これって、骨!!・・・人の?・・・いや、魔物?」

「髑髏があるから人だな、けど魔物の骨もあるな」

「そう、それからこれを見てくれ。何か分かるかい?」

驚くメンバーにフェイローが足元に転がっている装備類を指差す。

「ウトリとケーレのメンバーの装備品だ・・・クソッ!」

どうやら撤退合図聞かずに先走った奴らの装備品らしい。やられているとは思っていたけど、肝心の中身が無いな。

そこから軽く調べたけど、装備品の他にも金や、虫系の魔物の甲殻なんかが落ちていた。この横穴に落ちている物で共通している事はとにかく堅いって事だろう。

「要するにここは蜂蟻が食べられなかったものを捨てておく、ゴミ捨て場みたいな場所なのではないでしょうか?」

イシュカの言葉にみんな顔を曇らせる。その言葉は多分正しいんだろう。ただ、そうすると、先走った連中は全員もう食われているって事になるんだよなあ。

「今はその話は後だ、さっさと仕事するぞ」

暗い顔した連中を俺の言葉で無理やり動かす。落ち込むのは全部終わってからにしてくれ。

そこからもしばらく探索していると、道の先に明かりが見えて来たので全員警戒するが、そこで待っていたのはペコー達だった。向こうも俺たちの明かりに気付いて警戒していたみたいだったけど、明かりが俺達だと気付くと警戒を解いてペコーが近づいて来た。

「おお!お前らの道も結局ここと繋がったのか」

「『お前らも』って事は2級の連中もって事か?」

俺の疑問にペコーが頷いて近くの横穴を指差す。中を見ると、2級のチームが何とも言えない表情で立っていて、その中の数人が悔しそうに泣いているのが見えた。その足元にはバラバラになった体の一部が見える。

ああ、やっぱり先走った連中は助からなかったか。冷たいようだけど欲だしたから自己責任だ。それよりも俺が気になるのは落ち込んでいる連中だ。こんなんで落ち込んでたら命がいくつあっても足りねえぞ。と言った所で全く関係ない俺の言葉なんて聞いてくれる訳ねえ。そうすると、一つしかねえ。

「よし、全員合流したから先に進むぞ。お前らいつまでも落ち込んでるなよ!置いていくぞ!」

ペコーが落ち込んでいる連中に血も涙も無い言葉をかけるが、落ち込んでいる連中を連れて行っても足手まといにしかならねえ。こういう時は脅しじゃなくてマジで置いていくのがコーバスの組合員だ。

その証拠にペコー達は気にせず先に進む。俺も当然後をついていく。少し遅れて『転がった剣』の連中も何か言いたげな顔でついてくる。1級の荷物持ち達はついてこねえなあ。あいつらにも少し刺激が強すぎたか?

そんな事を考えながら探索を続けていると、ようやく全員が追いついて来た。その顔は全員いっぱしの組合員になっていた。特に仲間を殺されていた連中だ。中々いい面構えだ。

「ペコーさん。依頼と違うが俺等にも蜂蟻と戦わせてくれ!」

その中でも仲間を殺された連中だろう。中々いい顔でペコーに詰め寄っている。

「ハハハ、てめえらいい面構えだ。その顔に免じて戦闘に参加させてやる。ただし、探索優先で俺の命令には絶対従えよ」

そうして全員で再び探索を始めたんだが、すぐにおかしな横穴を見つけた。

「おい、何だここ?っていうかあの魔物何だ?」

襲ってきた蜂蟻を斬り殺したペコーが疑問の声をあげるが、中の気持ち悪い光景を見ても誰も答えられない。

部屋の中は蜂蟻数匹と白くて4mぐらいのデカい白いミミズみたいな魔物が蠢いていたからだ。蜂蟻はまあ、別にどうでもいい。

ただデカい白いミミズはよく見れば蠢いているように見えたのは蜂蟻の幼虫だ。ミミズの口の中から入って体の中を食いまくっているんだろう。更に気持ち悪い事にそのミミズの薄皮一枚だけ残って中が透けて見えているから蠢いているように見えたんだ。・・・・・見た目すげえ気持ち悪いぞ。・・・・・あ!グロ耐性ない1級や2級がゲボッてる。『転がった剣』もアブブ以外全滅なんだけど・・・こいつら耐性弱すぎだろ!スラムの奥の奥行けばこれよりヤベえ死体転がっているから、そこで耐性つけてこい!

「おい、これ気持ち悪いけどどうする?っていうか何で腹の中から食ってんだ?蜂蟻の幼虫にそんな習性あるって書いてなかったけどな」

蜂蟻を瞬殺したペコーが不思議そうに首を傾げる。

「ペコー、それよりもこの気持ち悪いのどうする?」

「この食われている魔物見た事ねえな」

「でかいけど蜂蟻に食われているから強くはなさそうだな」

ペコーの仲間がゴチャゴチャ言っているが、俺は無視して幼虫共が列を成しているミミズの口部分を思いっきりこん棒で殴りつける。幼虫数匹が弾け飛び、丁度良い具合に口の周りに幼虫がいなくなったので、口を適当な紐で縛り付ける。

「筆頭何してるんだ?」

「分からん、あいつマジで何してんだ?」

「ベイル何がしてえんだ?」

アブブやペコー達が不思議そうに俺の奇行を見ている。ここまでやってまだ分からねえのか?ここからこうやるんだよ!

って事で縛った所を持って大きく振り回してそのままの勢いで壁に叩きつける。これを2~3回繰り返せば完了だ。これでミミズの中で蠢いていた幼虫は全滅だろう。

「おお!頭いいな」

「ベイルってたまにあり得ねえ事するよな」

「どうやって殺すか考えていたけど、これなら簡単だな」

へへへ、もっと褒めろ。・・・ただなあ、これで終わりだと思ったら大間違いだ。俺は再びミミズを振り回し、その辺をうねうねしている幼虫に叩きつける。ハハハ!これでこの部屋の魔物はほとんど俺が退治したって事だな。後でサボっていたとか言わせねえぜ。

俺の行動を見て感心しているのはペコー達とアブブだけ。他はと言うと・・・

「ウエエエ!!」

「オヴェエエ!!」

「オロオロオロ!」

何かきったねえ声が更に大きくなった気がする。仲間の復讐誓った奴らもここで耐えきれなかったようだ。

「まったく、これぐらいで吐くんじゃねえよ」

「この前地獄味わったってのに情けねえな」

「そうだな、この前の肥溜めより全然ましじゃねえか」

「お前らこの前の牢屋にぶち込まれた時の事を思い出せ!!」

・・・・・・・・・

「ウエエエエエえええええええ!!」

「オヴェヴェエエエエエエエエエエ!!!」

「オロオロオロオロロロ!!!」

ペコー達の言葉で更に状況が悪化する。何であのきったねえ出来事を今、思い出させた?状況が悪化するって分かるだろ。

取り敢えずこいつらが落ち着くまで待つか。そう言えばこのミミズどうすればいいんだ?

「おい、ペコー。このミミズどうする?一応見た事ねえ魔物だから持って帰るか?」

「ああ、皮だけだけど、未発見の魔物がいたって証拠になるだろ。潰れた幼虫は要らねえから捨てておけよ」

「へえ、へえ。ペコーは人使いが荒いぜ」

とかボヤキながら紐を解いて、口を床にして持ち上げると潰れた幼虫が自身の体液と共に滑り出てくる。気持ち悪いなあ。

そんな事を考えながら奥の方の幼虫も頑張って捨てようとしていると、ある事に気付いた。

・・・・あれ?このミミズの皮って滅茶苦茶弾力あるな。ゴムみたいにすげえ伸びる!伸びすぎて俺一人じゃ限界まで引っ張れねえぞこれ。

「何遊んでいるんですか?」

俺が一人ミミズの皮で悪戦苦闘していると、気付いたアブブが近づいて来た。

「遊んでるんじゃねえよ。それより丁度いい、アブブそっち持て」

このミミズ太さが直径1mぐらいで、俺が思いっきり両手広げても余裕なぐらい横方向には伸びた。それなら縦方向にはどれくらい伸びるのか気になったので、アブブに手伝ってもらい調べる事にした。その結果・・・・

「おいおい、滅茶苦茶伸びるじゃねえか!」

「筆頭、これ以上下がれねえ!これすげえ伸びるんですけど!」

壁を背にしたアブブの所までの距離はだいたい20m、元々が4mぐらいだから5倍は伸びている。伸びているが感触的にまだまだ伸びる余裕がありそうだ。

・・・・・あれ?このミミズの皮凄くね?待てよ、この皮もしかしてアレが作れるんじゃねえ?

ふとある事を思いついて、顎に手を当てて考え始める。そうすると、手に持ったミミズの皮の事から意識が離れる。その結果、引き伸ばされていたミミズの皮が俺の手から離れ、元に戻ろうと勢いよくアブブに飛んでいく。

うん。その結果は想像できただろう。パーン!という小気味よい音と共にアブブの叫びが穴の中に響き渡る。

「いてええええ!筆頭!いきなり手を放すな!」

芸人並みにいいリアクションのアブブ君。怒ると初対面の時のような生意気な口調に戻るんだね。

「悪い、悪い。ちょっと思いついた事があってな」

そう言いながら腰の解体用ナイフを抜いてミミズの皮の尻の方を切り裂こうとナイフを突き立てるが・・・・。

「あれ?ナイフが全然刺さらねえ。どうなってんだ?」

何故かナイフが皮に全く突き刺さらない。何度も試しているが、結果が変わる事はない。

「筆頭、何やってんだ?解体用のナイフもちゃんと研がねえと駄目だぜ」

「研いでいるっての!何ならこっちの大鉈より手入れしてるぞ」

「それはそれでどうなんだ?それより俺にやらせてくれよ。この辺にナイフ刺せばいいんだろ。・・・・・あれ?何で?」

「ほらー。ナイフ関係ねえだろ。この皮が異様に弾力があってナイフが刺さらねえんだよ」

アブブも自分の解体用ナイフで皮を突き刺すが、俺と同じように刺さる事はない。そしてそれを見ていたペコー達が今度は乱入してくる。

結論として、ペコー達のナイフでも皮は切り裂けなかった。更に剣で切ろうとしたけど、そっちも全く駄目。まったく切れる様子が無かった。

「おい、この皮全然切れねえ。どうなってんだ?」

「すげえ弾力してんな。剣でぶった切ろうとしても切れねえんだけど?」

「この魔物、打撃系の武器が有効そうだな」

「じゃあ、こいつ、蜂蟻はどうやって倒したんだ?」

・・・・・・

ペコーの問いに全員が押し黙る。蜂蟻じゃあどうやっても打撃系の攻撃なんて出来る訳がねえ。だって蜂蟻の攻撃は噛みつきか、酸、毒針の3つしかねえからな。

「最初見た通り、食った幼虫が腹の中から食い破ったとかじゃねえの?」

確かにその可能性もあるかもしれない、けど、良く見ればミミズの口には細かい歯が並んでいるから、丸呑みにするか疑問だ。

「あ!そう言えばさっき、筆頭が皮を振り回している時に、一か所だけ皮に穴が空いてる場所があって体液が漏れていた。もしかしてその穴って毒針攻撃の痕だったりしますかね?」

今度はアブブからの意見だ。そっちの方が可能性が高い。って事で確認する事にした。

「イシュカ、この中に水球出してくれねえか?」

アブブがミミズの口を開けてイシュカにお願いする。さっきまで吐きまくってようやく落ち着いた所にアブブからこれだ。まーた口抑えて気分悪そうだぞ。まあ気持ち悪そうだけど、水球自体は出してくれたので、ペコー達と水漏れ箇所を探すとすぐに見つかった。

「やっぱり穴開いてましたね」

「これはアブブの方が正しいだろうな」

「毒針攻撃でこのミミズ死んだんだな」

「って事はこいつに槍が有効って事か。俺等のパーティに槍使いはいねえな」

「槍と言えばクワロの所だな」

アブブもペコー達もそんな事を話しているが、俺は早速行動に移すぜ。その辺の転がっている蜂蟻の腹を叩き潰して毒針を手に入れる。そして、その毒針をミミズの皮に突き刺すと、そこそこ力を入れた所で貫通した手応えがあった。

「おお!穴が開いたぞ。やっぱりこのミミズには蜂蟻の毒針が有効みたいだ」

「よし、これでこの魔物が出ても問題無いな。取り敢えず一人1本は毒針持つようにしとくか。間違えて自分をブッ刺すなよ」

ペコーがみんなに指示を出しているが、俺の用事はまだ終わってねえんだ。むしろここからなんだ。

「お!穴が空けばそこからナイフで切れるんですね」

俺の行動を見ていたアブブが感心したように話しかけてくる。だが、今はそれどころじゃねえ、俺は今、異世界定番のあのアイテムが出来るんじゃねえかと、それだけで頭が一杯だからだ。

尻に近い方の皮をぐるりと一周切り裂いてから、切り裂いた所の近くに、再び毒針でいくつか穴を開けそこに紐を通して軽く縛れば完成だ。

「おい、ベイル。遊んでねえで先に進むぞ!」

「ちょっと待て、ペコー。俺は今物凄いアイテムを開発した。これを見てみろ」

「ああ?何言ってんだ?そのミミズの皮で作った袋が凄いアイテムなのか?別に普通・・・・」

呆れた様子のペコーだったが、途中で俺が作った物の有用性に気付いたのか言葉を詰まらせた。

フフフ、ペコーは気付いたな。

「おい!荷物持ち!こっちに来てベイルの持っている袋の中に荷物を入れろ!」

ペコーがそう言うと、荷物持ちの1級が集まって来て、指示通り俺の作った袋の中に荷物を入れていく。もうね、思った通りどんどん荷物が入って行く。

みんなもう分かっただろう。これは異世界じゃ定番の『魔法鞄』だ。そうだよ、異世界ってのはこうやって何でも無限に物が入る鞄とか魔法があるんだよ。俺も一時期探していたけど、ようやく見つけたぜ。これで大八車引いて歩く必要もねえな。もしかしたらこれの開発権利で金が貰えるかもしれねえから、帰ったら早速組合長に相談だ。

何て事を考えていたんだけどなあ。

この『魔法鞄』俺が想像していたのと違うんだよ。容量無限とは最初から思って無かったけど、皮が思っていた以上に伸びるから結構容量はあったんだ。そこはいいんだ。ただ当り前だけど入れれば入れるほど、鞄がデカくなっていくんだ。水風船に水入れて膨らますと水が入った分だけ風船も膨らむだろ、そんな感じ。そしてこれも当り前だけど、入れれば入れるだけ、鞄が重くなるんだよ。収納した物の重さが無くなるとかそんな都合のいい事は起きねえ。時間停止機能付きとか無茶を言うつもりは無かった。けど何か一つ『魔法鞄』っぽい機能はついていて欲しかったぜ。

「『魔法鞄』とは程遠いな」

想像と違ったので、かなりがっかりして、思わず言葉が漏れてしまった。

「おお!ベイルにしては良い事言うじゃねえか!確かにこいつは魔法みたいだ。こいつは『魔法鞄』って呼ぶ事にしよう」

俺のボヤキが少し聞こえたのか、一番聞きとっちゃ駄目な所をペコーが聞いていたみたいで、勝手に『魔法鞄』と命名しやがった。

「え?おいペコー。流石にそれは名前負けしてるだろ、どこも魔法要素ねえじゃん」

個人的には『風船鞄』の方がしっくり来る。風船ってこっちじゃ誰も知らないから、しっくり来るのは俺だけだけど。取り敢えず『魔法鞄』って名前だけはやめさせよう。

「馬鹿言え。こんだけ物が入る鞄だぞ、魔法じゃなくて何なんだよ!」

「いや、普通にミミズの皮だろ。『皮鞄』とかでいいだろ」

「ねえよ」

「却下だ」

「だせえ」

「センスねえな」

おいおい、ボロクソだよ。だったら俺はもう知らねえぞ。故郷じゃ俺がポロリと漏らした事で開発が進められていたんだ。いずれ本物の『魔法鞄』が開発されたら恥掻くのはてめえらだからな。

「チッ!じゃあ、勝手にしろ。何かあっても俺を巻き込むなよ」

・・・・何て言わなけりゃ良かったと後悔したのは、それからしばらくしてからだった。『魔法鞄』とも呼べねえ代物だと思ったんだけど、何故か超売れた。本物が開発されなかったってのもあるだろう。

開発権利は俺以外の今回依頼を受けた組合員全員だったので、入ってくる金はそこまで多くはなかった。それでも安宿で節約生活すれば、生きていけるだけの金が毎月入ってくるぐらいにはあった。本物の『魔法鞄』の知識なんて無駄に持っていたおかげで、俺一人大損こいたって話だ。