軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第45話『美しい光の粒』

「ま、待てよ」

先頭の赤髪の少年が、剣を振り下ろした姿勢のまま声を詰まらせた。

「なあ、冗談だろ。旅人同士だぞ? ちょっと煽っただけじゃん」

「私の許可なく鑑定をした」

私は左手を腰へ下ろした。

銀牙は、腰の右側に取り付けた金属製の固定具へ収めてある。刃の背と鍔元を噛ませて保持する留め具だ。右腕を失ったままでも左手で抜けるよう、柄は左側へわずかに傾けて固定していた。

「私を邪神の眷属と呼んだ。倒せば勇者になれるかもと笑った。剣を抜き、恩寵を叫び、攻撃スキルを放った」

言いながら、赤髪の少年の前まで歩く。笑顔は忘れずに、ね。コミュニケーションの基本は笑顔を忘れないことだ。

私の拘束とは異なり、無理に急ぐ必要はない。ロヨンの拘束は安定しており、剣に残っていた青い光も薄れている。

この草原の中で、彼らの髪色だけが妙に鮮やかだった。跳ねた赤髪。肩のあたりで揺れる金髪。革鎧の奥で濁る緑髪。短杖を抱えた桃色の髪。最後尾の青髪。

いかにも駆け出しの旅人らしい、分かりやすい色分けだ。

固定具の留め金を外すと、硬い金属音が小さく鳴った。左手だけで柄を握り、銀牙を横へ引き抜く。黒銀の刃が滑り出て、湾曲した鉈剣の縁に曇天の白い光が細く乗った。

「ここまで積み上げておいて、ちょっと煽っただけ、は通らないだろう」

「やめ――」

金髪の少女が震える声を出した。

先ほどまで赤髪の少年を止めようとしていた少女だ。背中に負っていた大斧の刃は想像よりもずっと大きく、彼女の体格には少し不釣り合いだったが、抜いた以上は武器だ。

多少の良識はあったのかもしれない。だが、彼を本気で止めるには弱すぎた。こちらを邪神の眷属と呼ぶ流れに身を置き、最後には斧を抜いた。

「初めてのプレイヤー狩りだ」

赤髪の少年の視線が銀牙へ落ち、次に私の顔へ戻った。

「ま、待てって。悪かった。謝る。鑑定したのは悪かったからよ。だから――」

「そうだ。鑑定だったね」

私はそこで足を止めた。

さっきこの少年が無断でこちらへ伸ばしてきた不快な視線を、私はまだ覚えていた。装甲の隙間から内側を撫でられるような、あのぬるりとした感触。

便利な機能だと言ったのは彼だ。

なら、こちらも使ってみようではないか。お互い様だろう?

「簡易鑑定」

赤髪の少年の身体が、びくりと震えた。

「うっ、今、何か――」

視界の端に淡い表示が浮かぶ。

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

▼基礎情報▼

♦名称:ブラッド

♦属性:旅人

♦レベル:7

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

「ブラッド、レベル7。なるほどね」

私は表示を眺め、軽く頷いた。

「剣神ソルドラシュの恩寵を自慢するには、少し頼りない数字だね」

「て、てめえ、勝手に鑑定――」

「ただの機能だろう?」

ブラッドの言葉が止まった。

私は彼の耳元へ顔を寄せる。

機械の身体には呼吸が必要ないが、その機能が無いわけではないのだ。機神様はその権能を大いに振るい、きっちりと拘って創造なされた。

「斬れないものはないんだったね。なら、自分の首がどこまで綺麗に落ちるか、最後によく見ておくといい」

こともなげに銀牙を横へ走らせる。

刃はスっと軽く入った。皮膚を裂き、肉を割り、頸の骨へ触れたところで一瞬だけ重い感触が返る。左腕の出力を少し上げ、そのまま押し切った。

頭部が胴体から離れた。

赤髪が少しだけ宙を舞い、敷石へ落ちる。鈍い音がして、一度だけ弱く弾んだ。頬が石に擦れ、ブラッドの顔が横向きになる。見開いた目は、まだ自分の身体が倒れる様を理解できていないようだった。

直後、胴体の切断面から血が噴き出す。温かい赤が古い道へ撒かれ、少年の身体は片手剣を握った姿勢のまま膝から崩れ落ちた。支えるべき命が途切れ、肉体が形を保てなくなったその様子に、思わず胸が高鳴った。

その様子を見て、残り四人が、それぞれ声にならない悲鳴を上げる。

「ひっ……!」

「いや、いやいやいや!」

「おい、嘘だろ、死んだ、死んだって!」

緑髪の少年が必死に叫ぶ。革鎧の肩当てが震え、左手の盾が小刻みに鳴っていた。短槍を握る右手には力が入っているが、ロヨンの拘束がそれを許さない。

ゲームだから死んでも戻る。そう頭で分かっていたとしても、目の前で仲間の首が落ちれば、身体は理屈より先に震えるらしい。

私は銀牙を軽く払った。赤い線が刃から飛び、敷石に散る。

二人目は、金髪の斧使いにした。

彼女は目に涙を浮かべていた。大斧を握った手は震え、刃先がかすかに上下している。口元が何度も開閉し、言葉にならない謝罪が喉の奥で絡まっているようだった。

「君は止めようとしていたね。少し感動したよ」

私が言うと、彼女の目に一瞬だけ希望のようなものが宿った。

「でも、結局止まらなかったからさ。しょうがないんだ。ごめんね」

その光が消える。

「簡易鑑定」

アイカ、ね。

彼女の肩がビクリと跳ねた。こちらが名を覗いた感触が伝わったのだろう。涙に濡れた目が、恐怖と嫌悪でさらに大きくなる。自分たちが軽く扱った行為を、今度は自分が受ける側になった。たったそれだけで、彼女の顔色は紙のように白くなっていった。

なぜそうも怯える?これはそんなにも怖い行為なのだろうか。マナー違反の簡易鑑定ではなくて、きちんと許可をとった上での鑑定はみな行わないのか?

鑑定にそこまで怯えるような要素は存在しないと思うのだが……。

「ご、ごめ――」

「良識を持っているフリだけなら簡単だよね。本気で止めるなら、もっと早く、もっと強く動くべきだったと思うよ。ああ、これは説教じゃないさ。ただ私の考えを述べてるだけね。あんまし気にしなくても良いよ」

アイカの唇が震える。

私はほんの一拍だけ待った。彼女の中にあった中途半端な良心が、どういう言葉になるのか少しだけ興味があったからだ。

出てきたのは、謝罪にも弁解にもなりきらない湿った息だった。

銀牙で喉を切る。

首を落とすほど深くは入れない。だが、命を絶つには十分だったようだ。開いた喉から血が溢れ、彼女の声が泡に変わる。目が大きく見開かれ、涙と血が同時に顎を伝った。

大斧が敷石へ落ちる。

重い刃が石を叩き、鈍い音を残した。

三人目は緑髪の槍盾兵。

彼は怒りと恐怖が混ざった顔でこちらを睨んでいた。革鎧の胸元が激しく上下し、左手の盾越しに短槍の穂先が半端な角度で固まっている。

「くそっ! 何なんだよお前! こんなのチートだろ! 運営に通報してやるからな!」

「いいね」

私は彼の前で立ち止まる。

「ぜひ書いてくれ。無断鑑定をしたら、邪神の眷属っぽい機械種に首を落とされました、と。掲示板が少し賑やかになる」

「ふざけんな!」

「ふざけているのは君たちだろう」

私は彼へ視線を向けた。

「簡易鑑定」

「や、やめろ、気持ち悪――」

ガッツの顔が露骨に歪んだ。装甲の隙間を撫でられるような不快感は、生身でも同じらしい。彼は盾を構えたまま身を引こうとしたが、拘束された腕も脚も動かず、喉の奥から潰れた息だけが漏れた。

「ガッツ。盾を持っているのに、中衛で人の悪口に乗る方が得意だったわけだ」

「黙れ!」

「君たちの中では、鑑定は軽い行為だったんだろう? そんなに嫌そうな顔をされると、少し傷つくな」

銀牙の切っ先を、ガッツの腹へ当てる。革鎧越しに刃先がわずかに沈んだ瞬間、彼の呼吸が止まった。目だけが大きく動き、私の顔と刃とを往復する。

「この世界をゲームだと軽く扱うのは構わない。私もそう思っている部分があるしね。だが、君たちの軽挙妄動で私は少しだけ嫌な思いをしたからさ。ごめんね?」

突き入れる。

刃が腹を裂き、内側の温度が外へ漏れた。ガッツの顔が歪み、口から短い悲鳴が漏れる。私はそのまま刃を斜め上へ引き上げ、胸の辺りまで裂いた。血が外装に飛ぶ。白い装甲に赤が散る。

悪くない色だ。

四人目は桃髪の短杖使い。

彼女はほとんど過呼吸のようになっていた。杖先の火の粉は消え、涙で顔がぐしゃぐしゃになっている。桃色の髪が頬に張りつき、杖を握る指は白く固まっていた。

「いや、やだ、死にたくない、ログアウト、ログアウトできない、何で……!」

「戦闘中だからじゃないか?」

私は淡々と答えた。

ログアウトできないとなると、かなり重要なイベント中か、あるいは戦闘中か。

もちろんドリーム・スケイルにログアウトを強く制限するような機能は皆無だ。デスゲームなんてどうやっても起こせないようになっている。

しかし、例えば戦闘中や重要なイベント中にユーザーの勝手でログアウトをすることは、基本的には推奨されていない上、メーカーもその点にだけは軽めの制限を設けている場合がある。

戦闘やイベントといっても基本的には数分から数十分で終わるので、あまりキツイ縛りでもないのだが、もちろん機器側が危険な場合だと判断した場合には問答無用でディスコネクトされるので、彼女の場合はそうではないのだ。

「うーん、私としては便利なんだよね、これ。君たちみたいな奴らに逃げられないからさ」

「お願い、見逃して。何もしてない、私、攻撃してない!」

「杖を向けた」

「でも撃ってない!」

「まあ、そう言うだろうと思ったさ」

彼女の肩が震えた。

「簡易鑑定」

桃髪の少女の顔が、さらに歪んだ。短杖を抱えたまま首を振り、見えない手を振り払おうとするように肩を震わせる。ロヨンの拘束は揺らがない。私の視界には、彼女の名称が静かに浮かび上がった。

「ハナミズキ」

「や、やめて、見ないで……!」

「不思議だな。君たちはこちらを見たがったのに、見られるのは嫌なのか」

「私、私は、鑑定してない……!」

「都合の良い言い訳だ」

ハナミズキの顔が絶望に染まる。

「マリー」

《はい》

「彼女たちは、私の経験値になる?」

《旅人であっても、敵対状態で撃破した場合は経験値獲得対象となる可能性が高いです。先ほど一名目の撃破時点で、微量のログ変動を確認しています》

「何となく知っていたけど、一応の確認ね」

私は銀牙を振り下ろした。

首の骨を断つ手応えがあり、ハナミズキは糸が切れたように崩れた。火の粉の消えた杖が、敷石の上を転がる。

最後に残った青髪の青年は、もう喋らなかった。

彼は歯を食いしばり、こちらを睨んでいる。背中から抜きかけていた大剣は、薄い白の筋を残したまま半端な角度で固定されていた。先ほどまでの軽い笑みは消えている。だが、他の四人ほど取り乱してはいなかった。

少しは場慣れしているのかもしれない。

「何か言うことは?」

私が尋ねると、青髪の青年は喉を鳴らした。

「……お前、絶対に晒してやるからな」

「それは困ったな」

私はわざとらしく考える。

「名前は見られていないと思うけれど、見た目は目立つ。機械種、片腕、白い外装、ガスマスクの男。情報としては十分か」

「分かってるなら――」

「簡易鑑定」

青年の言葉が止まる。

アッガスは他の四人よりも顔色を崩さなかった。ただ、奥歯を噛む音だけが小さく聞こえた。こちらの視線が自分の内側へ差し込んだことを理解しているのだろう。怒りを押し殺した目が、私の顔を射抜くように睨む。

「アッガス。君は止められたはずだ。ブラッドが無断鑑定をした時も、ガッツが邪神の眷属と呼んだ時も、ハナミズキが聞きかじりを口にした時も。アイカより、君の方が強く止める立場に見えた」

周囲に落ちた血の匂いが、湿った空気と混ざっていた。彼の目は私を睨んでいるが、その奥ではもう負けを理解している。理解した上で、最後に残った脅しが掲示板への晒しというのは、いかにもそれらしいプレイヤーの行動じゃないか。

「君たちは私を邪神の眷属と呼んだ。いいじゃないか。その通りに振る舞ってあげよう。掲示板で騒げばいい。サンクティン方面の街道に、無断鑑定をした旅人を皆殺しにする機械種がいた、と」

私は銀牙をアッガスの首筋へ当てる。

「それを読んだ誰かが怯える。誰かが怒る。誰かが討伐に来る。誰かが好奇心で近づく。どれも楽しそうだ」

「お前、狂ってるよ……」

「知っているさ」

刃を引く。

アッガスの首が裂け、血が吹き出した。彼は最後までこちらを睨んでいたが、やがて瞳の焦点が外れ、身体が崩れた。大剣の柄を握っていた指が緩み、重い刃が背中から滑り落ちる。

静寂が戻る。

五つの死体。首を落とされたブラッド。喉を裂かれたアイカ。腹から胸まで開かれたガッツ。首を断たれたハナミズキ。最後に血を流して倒れたアッガス。

つい先ほどまで賑やかに笑っていた五人は、あっけなく動かなくなった。

私は銀牙についた血を払い、刃を眺める。

戦闘と呼ぶには一方的すぎたか。ロヨンが拘束し、私は順に処理しただけ。だが、だからこそ結果が分かりやすい。

というか、これロヨンのアシストがあっての狩りだったのだが、彼に経験値は入ったのだろうか。彼を見ると、ただ頷くのみだ。まあ後で聞けば良いか。

視界の端に、淡いログが浮かぶ。

《戦闘終了時ログを確認。ルイス様のレベル上昇を確認しました》

「表示してくれ」

《了解。最小限の情報を表示します》

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

▼戦闘記録▼

♦討伐:旅人×5

▼レベル上昇▼

♦レベルが8から10に上昇しました。

♦レベルの上昇に伴い、全ステータスが40から50へ上昇しました。

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

「……二つ上がった」

体の奥で熱が走る。レベル十。

数字だけなら、ようやく序盤の一つの区切りに届いたのかもしれない。だが、今の私にとって重要なのはそこではない。

「ひと狩りで二レベルか。効率、良すぎないか?」

《対象が旅人であり、一定以上の成長要素を保持していた可能性があります。また、五名連続撃破による経験値量が大きかったものと推定されます》

「なるほど。旅人狩り、かなり美味しいな」

《警告。旅人を継続的に狩る行為は、他旅人からの敵対、掲示板上での情報拡散、住人勢力からの危険視を招く可能性があります》

「分かっているよ」

私は笑った。

「でも、リスクに見合うだけの味はあるという知見を得られたのは大きいね」

ロヨンがゆっくりと五人の死体へ近づいた。

彼は杖を掲げ、短く何かを呟く。祈りのようにも聞こえたが、内容までは分からない。母なる大地へ向けたものか、サクスザントへ向けたものか、あるいはただ死者へ向けたものか。

ガスマスクの丸いレンズには、倒れた旅人たちの姿が小さく映っている。そこに憐れみがあるのか、軽蔑があるのかは読み取れない。ただ、彼がこの場を軽く流そうとしていないことだけは分かった。

「旅人様方は、死しても戻るのですかな」

「たぶんね。少なくとも、旅人としてはそういう仕様のはずだ」

「であれば、彼らはこの出来事を覚えたまま戻ると」

「可能性は高い」

「ふむ。住人であれば、ここで終わりです。死者は語らず、血は大地へ還り、残るのは見つけた者が解釈する痕跡だけ。ですが旅人様は、死してなお言葉を持ち帰る。これは祝福であると同時に、些か厄介ですな」

「まあ、面白いところでもあるけれども。それに良かったじゃないか、私も何度でも甦れるのだからさ。今度こそ目的を果たすまで止まらないよ」

「ふむ、その通りですな。救世主様に旅人の魂が宿っていることに驚きを隠せませぬが、今回ばかりは都合が宜しい」

私はブラッドの頭部を足先で軽く転がした。

少年の顔は、まだ驚いたような表情をしていた。

「絶望と混沌を齎すという目的を考えるなら、彼らはなかなか便利な媒体だ」

ロヨンはしばらく黙り、それから深く頷いた。

「なるほど。恐怖を運ぶ使者として利用するわけですな」

「向こうが勝手にそうなるだけだよ。私は軽く斬っただけだ」

「少し、というには首がよく飛んでおりますが」

「くく、運が良かった」

私のわけの分からない返事に、ロヨンが喉の奥で笑った。

「やはり救世主様は、時に大変恐ろしい」

「それ、褒めているのかい?」

「もちろんですとも」

《対象の所持品は一定時間後に消失する可能性があります。回収する場合は速やかな確認を推奨します》

「ああ、旅人の装備か」

私は五人の武器へ目を向けた。

安物に見えるものばかりだが、使えるものがないとは限らない。 吸収同化(アシミレーター) の素材として見れば、金属片や革紐、留め具だけでも価値はある。右腕の欠損を補うためにも、素材はいくらあっても足りない。

「回収できるものは回収しよう。時間はかけすぎない」

《了解》

このゲームでは、プレイヤーは倒されてからリスポーンするまでに幾許かの猶予がある。だいたい二分ほどだろうか。ゾンビアタックを抑制するのと同時に、戦闘による興奮を抑制することを目的としている。

その間、プレイヤーの死体はそのまま残る仕様だ。さすがにインベントリの中までは確認できないが、身につけている装備のいくつかを回収することくらいはできる。

当然だが、プレイヤーの裸を目的に装備を剥ぎ取ることは不可能で、回収できて一部の装備とアクセサリ類、それから現出しているアイテム類のみだ。ポーションとかね。

それから、レアリティが高い物も回収不可だ。逆に言えば、そこそこのものまでなら可能であるということだ。一千三百万人ものプレイヤーが入れば、当然PKという行為も横行する。

これはそれを可能な限り制限するための方策のように見える。

ブラッドの片手剣は、刃に青い光がまとわりついていた痕跡こそあるが、物自体は量産品に近い。柄の装飾は安く、手入れも雑だ。それでも鋼材としては使える。鞘も革と金具の組み合わせなので、分解すれば何かしらの足しになる。

アイカの大斧は、重量の割に刃の仕上げが甘い。扱い切れていたとは思えないが、鉄量だけはあった。ガッツの短槍は穂先の固定が甘く、盾は革と薄い金属板の貼り合わせ。

ハナミズキの短杖には、小さな魔石らしきものが嵌め込まれている。アッガスの大剣は、五人の中では一番まともだった。刃の通りも、重心の置き方も、他の武器より少しだけ丁寧だ。

ふむ。こんなものかな。

使えそうな金具や魔石をインベントリへ放り込み、死体そのものは放置だ。やがて消えるならそれでいいだろう、わざわざ埋めてやる義理もない。

作業を終える頃、ブラッドの胴体が淡い光に包まれ始めた。

血の色が薄れ、輪郭がほどける。首も同じように光となり、敷石の上から消えていく。続いてアイカ、ガッツ、ハナミズキ、アッガスも、順に光の粒子へ変わり始めた。

ただ、血痕だけが、しばらく古い道の上に赤黒く残った。

「面白い演出だね」

私は消えていく美しい光の粒を眺めた。