軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35話 きっとくるよ。

レイナルトによる、まさかの自分もやる宣言。

「おいおい、レイナルト。なに言ってんだ? こんなのダメだろ、普通に」

これには、アシュレイがすぐにこう反論する。

少し新鮮なやりとりだった。

ゲームでは、アシュレイが変なことを言って、レイナルトがそれを止めるというほうが多かったと記憶している。

が、今起きているのは真逆だ。

「いいや、俺も本気だよ」

と、レイナルトは言い切る。

「……この間、リディに集まりに来ないかと誘ったんだけど、断られてね」

そこで出てきたのは、私の知らない話だ。

考えてみれば、彼らは婚約者だから、屋敷の外でも顔を合わせることはある。

どうやらレイナルトはそこで、リディアに声をかけてくれていたらしい。

ただ取り付く島もなく、そのときは諦めたとのことだった。

「リディは自分の噂を気にしてるし、俺も彼女がそうしたいと言うなら、それでいいと思ってた」

でも、と彼は言葉を継ぐ。

「アイが望むなら、話は別だ。それでも来て欲しいって、改めて思った」

「……だからって、こんなことしたらリディア様、ブチ切れるんじゃね?」

「そのときは、素直に謝る。アイがここまでやるんだ。俺がそれを手伝えなかったら嘘だろ。それに、どうせここまでやったら今更やめたって一緒だ」

そこで彼は私の方にを振り見て笑みを見せる。

「アイ。ママを、リディを引っ張り出そう」

その顔は、憑き物が落ちたみたいに、とても晴れ晴れしい。

私はそれに大きく頷く。

そのあとは喜びをこらえきれず、ついレイナルトに抱きついた。

「おっと。どうした、アイ?」

「だって、うれしかったから」

「はは。それはママが来てから言おうね」

私はそれに首を縦に振るが、現段階でも十分、嬉しい。

いつもどこかでは、リディアに遠慮しているところのあったレイナルトだ。彼女が何かを言えば、自分の意見はすぐに曲げる。

それが、今日の彼は違う。

違うものは違うと、真っ向から立ち向かおうとしている。

それだけで十分すぎる進展だ。

「にいちゃん、おれも……」

隣では、ジェフがこう漏らす。

「なんだ? お前も抱っこか?」

「そうじゃない。おれも、とうさんかあさんに、きてもらいたい」

「なっ……」

三歳児によるこのアピールは、アシュレイにも効いたらしい。

彼は分かりやすく驚いたあと、長いため息をつき、レイナルトへと目をやる。

「……もう分かったよ、俺も手伝う。やってやるよ。あとで全部お前のせいにするからな」

そう仕方なさそうに言うが、その目には涙が浮かんでいた。

そういえば、そうだ。

彼はゲームでもとても人間味があるキャラで、涙脆いのだったっけ。

「あぁ、構わないよ。カイル、リディアのところに使者をやってくれ。アイが行方不明だって」

「…………構わないのですか」

「急いでくれ。そうすれば、これからもボーロを食べるくらいは見逃すことにする」

「……かしこまりました」

……どうも、私の脅しもレイナルトは聞いていたみたいだ。

まぁなんにせよ、やれることはすべてできた。

あとは待つだけーーと、そう思っていたのだが、そこから私とジェフは謝罪行脚に出ることとなる。

そのとき屋敷にいた他の子やその親に、次々と頭を下げていく。

「あたしもやる」

途中からはビアンカちゃんもそこに加わって、その場にいた全員に謝り終えた。

ちょうどその折、屋敷にクロウフォード伯爵夫妻が飛び込んできて、ジェフが大きく目を見開く。

「……ほんとにきた」

そして、こんなふうに呟いていた。

夫妻はアシュレイから事情を聞くと、ジェフを抱きしめる。

「すまなかったな、ジェフ」

「ごめんなさいね。もう少し時間を取るべきだったわ」

「…………うん」

親子がその愛を再認識する。

はたから見ていても、なかなか感動的な瞬間だった。

ジェフはその後、伯爵に抱っこをされるなどして、「おろして」と真っ赤な顔で言うなど恥ずかしがる。

が、アシュレイを含めて家族の輪の中にいる彼は、実に幸せそうだ。

いつも彼のそばにいた私だ。

それを少し離れたベンチで微笑ましく見守っていたら、隣のレイナルトが私の頭を優しくなでる。

「大丈夫、リディはきっと来るよ」

私はその言葉に、こくんと首を縦に振った。