軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

永遠を誓って

ファロン王国からリーヴィス帝国へ帰宅した後、私たちは三日間の休みをもらった。

そんな私は今、王城内の庭園のベンチに座り、のんびりと美しい花々を眺めている。

「本当に全てが終わったなんて、なんだか現実味がないわ」

「そうだね」

隣に座るフェリクスも同じ気持ちらしく、静かに頷く。

五ヶ所の「呪い」を解き、全ての始まりであった魔物を倒したことで、私やフェリクス、そしてこの国に本当の平穏が訪れていた。

「これから先、何をしようかしら」

もちろん皇妃として、聖女として成すべきことはまだたくさんある。それでも必死に走り続けてきたこれまでとは違い、心の余裕も時間の余裕も増えるはず。

「それだって、ゆっくり考えればいいよ。俺はただその全てを必ず叶えてみせるから」

「……ありがとう」

フェリクスは本当に言葉通り、全て叶えてくれるのだろう。

「私ね、たくさんのものに触れて色々な人に会って話をして、もっと外の世界を見てみたい」

これは前世の記憶を取り戻す前に、私が心から願ったことだった。フェリクスは繋いでいた私の手に指先を絡めると、柔らかく微笑む。

「あなたが望む限り、いくらでも。まずは復興も兼ねて国内を見て回って、それからは国外を二人で訪問して回るのもいいかもしれない」

「ええ、すごく素敵だわ」

フェリクスとなら、どんな場所でも楽しくて素敵なものになるという確信がある。

これから先の日々に胸を弾ませられることが、何よりも幸せだと思えた。

「ティアナ様、馬車の準備ができました」

やがてマリエルがそう声をかけてくれて、私は立ち上がるとフェリクスの腕を引いた。

「ティアナ?」

「この二日間ずっと王城内でこもってばかりだったから、気分転換をしたくて準備をしてもらったの。よかったらあなたもついてきてくれる?」

「ああ、喜んで」

快諾してくれたフェリクスと共に乗り込むと、馬車は事前に告げておいた行き先に向かって走り出す。フェリクスはどこへ行くのかも尋ねず、私に全て任せてくれる。

「……ここは」

やがて着いたのは、ダリナ塔だった。

結婚式の後にも訪れたこの場所は、初代皇帝が皇妃のために建てたものだ。驚いた様子のフェリクスの手を引いて、長い階段を登っていく。

そうして辿り着いた最上階には、真っ白な石碑があった。

「…………っ」

隣に立つフェリクスも、私がこの場所へ来た理由を理解しているのだろう。

二人で誓いを立てて石碑に魔力を注げば、強い効力を持つ誓約魔法により二度と他の相手と結ばれることはなくなる。

『何もしなくていいよ。ここで誓いを立ててしまえば、ティアナは俺以外と二度と結婚できなくなるから』

『いずれ全ての呪いを解き国が安定した後も、俺と一緒にいたいと思ってくれた時にはまたこの場所へティアナと共に来られたら嬉しい』

だからこそあの日、フェリクスは私にそう言ってくれた。

(私の心はもう、決まっているもの)

フェリクスに向き直ると、私は両手で繋いでいた彼の手を握り締め、見上げた。

「大好きよ、フェリクス。今も昔もずっと、私のことを好きでいてくれてありがとう」

「…………」

「私はこれから先もずっと、あなたの側で生きていきたい」

昔から変わらない透き通った瞳が、静かに揺れる。

「愛してるわ」

そして生まれて初めての「愛してる」を伝えた瞬間、私は彼に抱き寄せられていた。

その腕は少しだけ震えていて、胸が締め付けられる。

「……ありがとう。俺を選んでくれて、本当に嬉しい」

「ええ」

「俺もティアナを愛してる」

この先もずっと側にいると言ってくれた彼に、胸がいっぱいになって視界がぼやけていく。

フェリクスにもう一度出会えて、彼がずっと側にいてくれたから、今の私がある。

「一生、大切にすると誓う」

「……うん」

大きなフェリクスの背中に腕を回し、大好きな温もりと香りに包まれながら、二人でもう一度この場所に来られたことに、心から感謝した。

それからは二人で石碑に手をついて、一生共にあるという誓いを立てながら魔力を流した。

「すごく綺麗ね」

「ああ」

石碑は優しい金色の光を放ち、心臓の辺りにまで温かな魔力が流れてくる。やがて光が消えると、私たちは再び手を繋ぎ、ゆっくりと振り返った。

そこからは以前と変わらない夕日と帝国の領土が一望でき、その美しさに目を奪われる。

──呪いを受けたリーヴィス帝国が失ったものは多く、まだ成すべきことも尽きない。

けれどフェリクスとなら、必ず元のあるべき姿──それ以上により良い国を作っていけると信じている。

右隣を見上げると、自然と大好きな彼と視線が絡む。

「愛してる、ティアナ」

「私もよ」

やがて幸せそうに微笑んだフェリクスの顔が近づいてきて、そっと目を閉じる。

重なった唇から、全身に幸せが広がっていくのを感じた。

──何の力もなくいつだって孤独で、空っぽ聖女と呼ばれていた私はもういない。

大切な人たちを守る力も、愛する人々も、私を愛してくれる人だって今は側にある。

そしてこれから先も、そんな大切なもので溢れていくという確信がこの胸にはあった。

【空っぽ聖女として捨てられたはずが、嫁ぎ先の皇帝陛下に溺愛されています】 完