軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

建国祭 1

翌朝、フェリクスにより「帝国にかけられた全ての呪いが解けた」と国内外に知らされ、帝国は歓喜に包まれていた。

民達はみな心から安堵し、大いに沸き立っているそうだ。

王城内も喜びに包まれており、顔を合わせる度に誰もが涙ながらに感謝してくれて、つられて私も何度も泣きそうになってしまっていた。

「ほ、本当に、本当にありがとう、ございます……」

中でもバイロンの号泣っぷりは群を抜いていて、フェリクスも困ったように微笑んでいた。

きっとずっと誰よりも側でフェリクスの苦労や努力を見て、支えてきたからこそ、喜びもひとしおなのだろう。

「これほど素晴らしい、偉業を成し遂げてくださった聖女様に私はなんてことを……舌を切り落としてお詫びを……!」

「もう、気にしていないから大丈夫よ」

その上、私が帝国に来たばかりの頃の態度をいたく悔やんでいるらしく、仕方のないことだったと説得するのにかなりの時間を要した。

マリエルやメイド達もみんな心から笑っていて、本当に良かったと私も一日中、幸せな笑みがこぼれ続けていた。

それから数日は私もフェリクスも恐ろしく多忙で、顔を合わせる暇もないほどだった。

バルトルト墳墓の事後処理や再度の埋葬はもちろん、今後はこれまで呪いを受けた地の復興も改めてしっかり進めていくつもりだ。

これまで帝国を見下していた近隣諸国も、揃って手のひらを返して祝意を表する書簡を送ってくるものだから、二人で苦笑いを浮かべながらも対応を続けた。

呪いを受けるまではリーヴィス帝国はこの大陸で最も栄えていたし、フェリクスという優れた皇帝が統治している以上、帝国はより発展していくと誰もが思っているのだろう。

ルフィノも二度と悲劇が起こらないよう、魔法塔を率いて呪いの研究を続けながら、被害を受けた地の復興にも力を入れていくそうだ。

一方、イザベラは「数日ひたすら眠る」という言葉通り、一日中部屋で寝て過ごしては、時折起きて食事をしてまた眠るという生活をしているらしく安心した。

とにかく今はゆっくりと身体を休めて、また元気な明るい笑顔を見せてほしい。

そして今回、大活躍してくれた彼女のことも帝国内だけでなく国外にも広く伝わっていて、心優しく美しい聖女だと評判なんだとか。

『最高の夫を迎えるためにも、評価を上げておかないと!』

以前そう語っていた彼女の素晴らしさについては、私も今後さらに広めていきたいと思う。

◇◇◇

そうして一週間が経った晩、寝る支度を終えた私はフェリクスの部屋を訪れていた。

彼も今日は早めに仕事を終えるから、一緒に過ごそうと誘われていたのだ。

「はあ……疲れた」

ぼふりと柔らかなソファに腰を下ろすと、どっと全身への疲れを感じる。

バルトルト墳墓で限界まで魔力を使った翌日から、ひたすら皇妃としての仕事をしていたのだから、当然だった。

フェリクスはそんな私を労うように、頭を撫でてくれる。

「お疲れ様。ティアナのお蔭でようやく落ち着いたよ」

「私なんてフェリクスの半分も働いていないわ。あなたの体力、どうなっているの?」

大聖女だった頃、書類仕事や外交に関わることも少なくなかった。その時の経験を生かしてなんとかこなしていたけれど、フェリクスの働きとは比べ物にならない。

それでいて一切疲れた様子も見せないのだから、流石としか言いようがなかった。

(本当、どこまで完璧なのかしら)

同じく完璧な顔をじっと見上げていると「そんなにかわいい顔で見つめられると照れるな」なんて言われてしまい、慌てて顔を逸らした。

「そういや、今週末の祭りの準備も順調だよ」

「それなら良かったわ」

無事に全ての呪いが解かれたことで、王都では大規模な祭りが開かれることになった。

今週末の二日間行われるそうで、準備段階でも賑わいが王城まで伝わってくる。

城内に務める者たちも参加できるよう、フェリクスが計らったそうで、みんな浮き足立っているようだった。夕食を終えてフェリクスの部屋に来るまでの間も、すれ違う人々の表情は普段よりも明るく見えて、つられて楽しくなる。

「ふふ、みんな心から楽しみなのね」

「こうして何かを祝うような催しも十五年ぶりだから」

呪いによって大勢の人々が命を落としてからは私達の結婚式以外の祝い事は自粛しており、子どもたちは特に初めてのお祭りに胸を弾ませているそうだ。

(……本当に、本当に良かった)

全ての呪いは解けたものの、まだ被害を受けた土地の回復には時間がかかる。聖女として、皇妃としてできる限りのことをしていきたいと思っている。

そして誰もが未来に希望を持ち、幸せに暮らしていける国にしていきたい。

「そういえば私、実は前世も今世もお祭りって行ったことがないのよね」

元々の私は箱入りの伯爵令嬢であまり外出したことがなく、十二歳で神殿に入ってからはひたすら修行や仕事に明け暮れていた。

年に一回の建国祭は大聖女としてパレードに少し参加するのみで、私が普通に見て回っては大騒ぎになるからと周りから強く止められていたのだ。

「それなら一緒に行こうか」

「えっ?」

何気なく過去を思い出していると、フェリクスはなんてことないようにそう言ってのけた。