軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五話 泣き顔のクライ

俺は目を動かし、向かってくる四体の岩塊の魔物達の動きを視界に捉えた。

「俺が引き付ける。ルーチェは敵の動きに慣れつつ、泣き顔の奴を狙ってくれ」

「は、はいっ! やってみせます!」

統率を行っているクライさえ倒せば、残りのスマイル達の動きは一気に崩れる。

ルーチェの素早さであれば、俺がスマイル達を引き付けている間に、リーダー格であるクライを狙うことは難しくないはずだ。

「奴らの身体が光ったら〈加速〉の前動作だ! 厄介なスキルではあるが、発動後は直進しかできない! まずは避けるのに専念して、タイミングを覚えたら躱しつつ、一撃を入れてやれ!」

元々道化師は、相手の大きな動作を避けて攻撃を叩き込むのが得意だ。

〈曲芸歩術〉で瞬間速度を引き上げられる上に、自由に壁も歩き回れるため、逃げ場を潰されて追い込まれることもない。

俺が前に飛び込んだとき、岩塊共の身体が光った。

俺はまず、二体の〈加速〉の軌道から離れた。

一体の飛び込みを〈パリィ〉によって剣で弾き、四体目……連中のリーダーであるクライの〈体当たり〉を盾で受け止めた。

「ルーチェ、上へ頼む!」

そのまま俺は、背後へ跳んで衝撃を逃がしつつ、クライを掬い上げるように宙へと跳ね上げた。

「〈シールドバッシュ〉!」

クライが垂直に真上へと飛び、天井へと岩の身体を打ち付ける。

上手く行った!

滑り台のように盾の表面を走らせ、奴の〈加速〉の勢いを天井へと向けることができた。

手足のない岩塊の魔物だ。

スキルも少なく、知性もさして高くはない。

空中に跳ね上げられれば、何もできはしない。

そしてクライの跳ね上げられた天井では、ルーチェがナイフを構えて待ち構えていた。

〈曲芸歩術〉で天井にぴったり足を付け、逆さの姿勢で〈黒鋼のナイフ〉の刺突を放つ。

「〈ダイススラスト〉!」

六の数字が宙に刻まれる。

黒い刃がクライの岩肌を貫通した。

全身に罅が入り、次の瞬間には砕け散っていた。

【経験値を772取得しました。】

【レベルが43から45へと上がりました。】

【スキルポイントを2取得しました。】

よし、いきなりリーダー格のクライを仕留めた!

ルーチェの素早さと移動範囲の広さ、そしてクリティカルの一撃の重さは強力だ。

黒鋼装備で攻撃力が一気に上がったこともあり、見事にクライを一刃の許に仕留めた。

後のスマイル三体は烏合の衆に等しい。

一気に攻略が楽になった。

二体のスマイルが、俺へと〈加速〉を用いて突進してくる。

「あ、危ない、エルマさん! あのスマイル達、綺麗に逃げ場を潰して……!」

天井で得意げな笑みを浮かべていたルーチェが、スマイルの動きを見てさっと蒼褪めた。

「なんでお前らスマイルが、指揮系統のクライがいなかったら群れないのか教えてやろう」

俺は言いながら盾を構える。

右側のスマイルは剣で軽く弾いて〈パリィ〉を、そして左側のスマイルは盾の表面を軽く滑らせて軌道を逸らす。

そうして俺は跳びながら身体を捻り、最小限の動きで挟撃を回避した。

俺が地面に着地したとき、二体のスマイルが大きな音を立てて衝突した。

両者の身体に罅が入り、力なく地面の上を転がる。

二体共にスタンが入ってくれたようだ。

「無暗に戦地を駆け回ると、ちょっと軌道を逸らされただけでピンボールになるからだよ」

「ていああああっ!」

天井を蹴って降りてきたルーチェが、〈黒鋼のナイフ〉を振るう。

スタンしていたスマイルの片割れが砕け散る。

【経験値を459取得しました。】

俺も素早く、スタンしたもう片割れへと斬り掛かる。

「〈当て身斬り〉!」

【経験値を689取得しました。】

【レベルが45から46へと上がりました。】

【スキルポイントを1取得しました。】

よし……さすがは〈初級剣術〉で最初に覚えられるスキルにして、重騎士のメインウェポンだけはある。

重騎士の低い攻撃力を、まあまあ、かついい感じに安定して補ってくれる、頼れるスキルである。

「そして、最後の一体になったわけだが」

俺は最後のスマイルへと、剣を構えてゆっくりと向かう。

スマイルは笑顔を浮かべたまま、戸惑ったように頭部を左右に振って周囲を確認する。

その後、ぐるりと一回転して俺達に背を向けた。

スマイルの身体を〈加速〉の光が覆う。

「逃がすわけないだろっ!」

俺は素早くスマイルの影を踏み、移動範囲を縛った。

反対側へ勢いよく駆け出したスマイルだったが、すぐ影に引き戻されるように動きが止まった。

動けないスマイルの背へと、大きく宙へ飛んだルーチェが斬り掛かっていく。

「黒鋼いただきますっ!」

ルーチェがスマイルの周囲を飛び回り、素早く斬撃を叩き込む。

スマイルは慌てて反撃に出るが、〈影踏み〉のせいで大きくは動けないため、範囲外に逃れたルーチェまで攻撃が届かない。

一方的にルーチェの刃を受け、あっという間に動かなくなった。

【経験値を613取得しました。】

最後の一体も特に苦戦することなく、綺麗に仕留めることができた。

「はぁ、はぁ……一時はどうなるかと思いましたけれど、無事に凌げてよかったです……。アタシ、結構疲れました。ちょっとお休みしましょう……」

リーダー格のクライを一気に倒せたのと、上手くピンボールが決まったのが大きかった。

あれがなければ、負けはしなかっただろうが、結構な長期戦になっていたはずだ。

俺は〈魔法袋〉から水入れの袋を取り出し、ルーチェへと手渡す。

「上手くやってくれた、ルーチェ。ここで〈死線の暴竜〉を使うことになるかと思ってたんだが、結構余力を残せたな」

これはまだまだ〈百足坑道〉の探索が捗りそうだ。

成金ラーナ狩りを行った、前回の〈天使の玩具箱〉の成果を上回れるかもしれない。

「エルマさんが頼もしすぎる……! ア、アタシも頑張らないと……!」

俺はスマイル達の残骸を振り返る。

岩塊がマナへと戻って霧散し始めていく中に、連中の大粒の魔石と、そして黒鋼の鈍い輝きがあった。

そして特に泣き顔の岩塊……クライの中に、一層と眩い光を放つ、綺麗な球体のアイテムがあった。

俺は自身の口許が綻ぶのを感じていた。

どうやら無事に、あのレアアイテムもドロップしていたようだ。