軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十四話 成金ラーナ狩り

「ゲコッ! ゲコッ!」

黄金色のラーナが、びたんびたんと通路を歩く。

両目は大粒の宝石となっており、エメラルドの輝きを放っていた。

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魔物:成金ラーナ

Lv :40

HP :2/2

MP :36/36

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俺はごくりと唾を呑んだ。

間違いなく成金ラーナだ。

奴の討伐にさえ成功すれば、一気にレベルを上げられる上に、〈燻り狂う牙〉の購入にも近づく。

奴のHPはたったの【2】……。

されど、あの一桁台のHPを削り切れずに泣きを見た冒険者は、数知れずだろう。

「でっ! でで、出ましたっ! 出ましたよ! どど、どうするんです? どうするんです!?」

ルーチェが俺の腕をぐいぐいと引く。

声は成金ラーナを逃がさないように小さく抑えているが、興奮が滲んでいた。

「息を深く吸え、ルーチェ。まず落ち着こう。アレを狩れるかどうかは、どれだけ冷静に立ち回れるかが重要になってくる」

「は、はいっ!」

ルーチェが大きく、息をスーハーとする。

その様子だけでテンパっているのが伝わってくる。

しかし、その気持ちもわかる。

実際目にすると興奮が凄い。

ゲームのときとは段違いの存在感を放ち、生きる宝箱が歩いているのだ。

「レベルアップ分のスキルポイントは〈愚者の曲芸〉に入れて、【10】まで持って行っていたな?」

「は、はい! エルマさんの言っていたスキルが無事に取得できました」

ルーチェがこくこくと頷く。

「よし、手筈通りに頼む。俺はここで成金ラーナを待ち構えるから、ルーチェは奴をこっちへ追い込んでくれ」

「任せてください! 大丈夫、ルーチェ。アタシならやれる、アタシならやれる……!」

ルーチェは必死に自分へとそう言い聞かせてから、また大きく息を吸って吐き出してを繰り返す。

「……その、別に失敗してもいいんだからな?」

呼吸を整えてから、ルーチェは成金ラーナ目掛けて走っていった。

成金ラーナは冒険者が周囲四メートルの距離まで近づかなければ逃走を始めない。

そして〈天使の玩具箱〉の通路は、幅が四メートルなのだ。

成金ラーナが通路の端側にいたとしても、ギリギリ横を抜けて回り込めない仕様になっている。

だが、それは床を歩いていれば、の話である。

通路の幅は四メートルだが、高さは六メートルある。

そして、その斜辺は七メートルを超える。

〈愚者の曲芸〉の【5】では〈曲芸歩術〉を取得できる。

これは歩行速度を引き上げると同時に、スキル発動間は壁や天井を歩くことができるようになるのだ。

もっとも持続時間はほんの二秒程度であり、再発動には三十秒のインターバルが必要となるが。

つまり〈曲芸歩術〉を用いれば、成金ラーナを反応させずに横を抜けて裏を取ることができるのだ。

「〈曲芸歩術〉!」

ルーチェは壁を駆け、天井を蹴って素早く床へと降り立ち、成金ラーナの背後へと立った。

これで俺とルーチェが、成金ラーナを挟み込む形になった。

「ゲゴッ!」

ルーチェに気が付いた成金ラーナだが、俺の方に突っ込んでくることはしなかった。

ルーチェへと向き直り、彼女の横を抜けようと走り始めたのだ。

まず成金ラーナを俺の方に追い込んでもらう必要があるため、あまり喜ばしい状態ではない。

だが、こんな事態は、当然想定済みである。

「〈ドッペルイリュージョン〉!」

ルーチェの姿が、四重の影に分かれた。

〈ドッペルイリュージョン〉は自身の分身の幻影を造り出す、〈愚者の曲芸〉の【10】で習得できるスキルである。

この〈天使の玩具箱〉の通路の幅では、〈ドッペルイリュージョン〉の幻影を避けてルーチェの横を抜けることは不可能だ。

そして臆病な成金ラーナに、幻影へと突っ込むような真似はできない。

これが成金ラーナの耐性の抜け穴の一つである。

成金ラーナは状態異常に完全耐性があるため、【目潰し】や【まぼろし】の状態異常にはならない。

だが、〈ドッペルイリュージョン〉の造り出した幻影を見抜く力は持っていないのだ。

成金ラーナは即座に身を翻し、俺へと突撃してくる。

放たれた矢の如き速度であった。

【素早さ:67】は伊達ではない。

成金ラーナの耐性の抜け穴の二つ目として、奴は俺の習得している〈影踏み〉が効くのだ。

〈影踏み〉はかなり特殊なスキルであるため、この行動制限は状態異常やデバフとは見做されない。

そして当然、属性攻撃でもない。

〈影踏み〉の効果があるのは足で押さえている間だけなので、魔物の体当たりでもまともに受ければ簡単に解除されてしまうのだが……成金ラーナは【攻撃力:9】であり、俺にはどう頑張ってもダメージを与えることはできない。

ただ、問題は俺が〈影踏み〉に成功するかどうか、である。

通路の幅が狭いとはいえ、四メートル。

奴の素早さは俺の三倍以上である。

正直、〈曲芸歩術〉で裏を取って〈ドッペルイリュージョン〉で壁を作るよりも、こっちの方が遥かに難しい。

「言い出しっぺがしくじるわけにはいかないからな……」

俺は〈魔法袋〉から、白い魔石を取り出した。

聖属性の魔石である。

成金ラーナ狩りのために、〈鉄石通し〉と一緒に購入しておいたものだ。

魔石は属性に応じて、マナを流したときに特殊な効果を発揮する。

火属性の魔石であれば炎を放ち、水属性の魔石であれば水を放出する。

だが、魔法スキルと比べてMP消耗に対してあまりに効果が薄いため、通常はほとんど使われることがない。

単にアイテムを造る材料として用いられることが多い。

この聖属性の魔石も大した効果はない。

治癒の光を放つが、〈ヒールポーション〉の方が遥かに効率がいい。

だが、この光を放ってくれる効果が、俺には必要だった。

「来い、成金ラーナ! ひっ捕えてやる!」

成金ラーナは俺の目前でカクッと曲がり、左へと逃げた。

とてもじゃないが追い付けない。

影の長さもせいぜい五十センチメートル程度、とてもじゃないが狙って踏めるものではない。

俺は左へと、聖属性の魔石を投げた。

成金ラーナの鼻先を掠め、魔石が飛んで行く。

壁にぶつかると同時に、白い癒しの光を放った。

成金ラーナの影が、光によって数倍にも引き延ばされる。

俺は勢いよく足を下ろした。

「捕まえたぞ、成金ラーナ!」

高速で跳ね回っていた成金ラーナの動きが、糸で引っ張られたかのようにその場で静止した。