軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十二話 黄金の鉄壁

ラーナ……俺がこの世界で重騎士のクラスを得てから最初に倒した、カエルの魔物である。

〈マジックワールド〉の代表的な、愛され枠のザコモンスターだ。

ラーナには多くの種類がおり、その内の一体……成金ラーナが、今回の俺達のターゲットである。

俺の現状とルーチェのステータスを考慮して、俺達の次の狩場は〈天使の玩具箱〉以外に有り得ないと判断した。

成金ラーナは金ぴかのラーナであり、本体の出現率が低い代わりに、倒せば高確率で超高価なアイテムをドロップしてくれるのだ。

おまけにレベルが高いのに、攻撃力と魔法力が低く、攻撃のためのスキルも有していない。

つまり戦闘能力が低く、経験値が美味しく、高価なアイテムまで落としてくれる、いいこと尽くめの魔物なのだ。

成金ラーナを筆頭にこうしたボーナスキャラ的な立ち位置のラーナは複数種存在し、〈マジックワールド〉では金蝦蟇と総称されて親しまれていた。

金蝦蟇狩りを行っているときが一番楽しいと口にするプレイヤーも多かった。

一つの〈 夢の穴(ダンジョン) 〉から出てくる金蝦蟇の数には上限があるのだが、都市ロンダルムで情報収集を行った限り、この〈天使の玩具箱〉の金蝦蟇が狩り尽くされている心配はしなくてよさそうだった。

「成金ラーナは〈天使の玩具箱〉の中盤で出没率が高い。発見しやすいルート選択……存在している確率が高い生成ルート、セットで出やすい魔物、逆に絶対にセットでは出てこない魔物は、全て俺が把握している」

そして金蝦蟇の出現率は幸運力で変動する。

ここまでやれば、後はルーチェの幸運力で成金ラーナを引き寄せればいいだけである。

「……あのぅ、あのあの、成金ラーナは、アタシも聞いたことがあります」

ルーチェが不安げに口にする。

「知っているなら話は早いな」

「一体倒せば数年遊んで暮らせるだとか、酒場で語っていた人がいるのを聞いたことがあります。でも、D級冒険者どころか、C級冒険者の方でも取り逃がすって聞きますよ? 成金ラーナは、恐ろしく逃げ足が速いって……」

そう、成金ラーナは攻撃方面の能力はないが、とにかく逃げ足が速いのだ。

しかし、C級冒険者なら……【Lv:60】くらいか。

そこまであったらさすがに成金ラーナくらいは安定して狩って欲しいが、まあ、この世界は〈マジックワールド〉と同じようで異なる世界だ。

何せ死ねばそれっきりである。

自然とキャラビルドは強さやクラス性能を限界まで引き出す方向より、死なないことに特化したものになりがちなように思う。

クラスやスキルツリー、魔物の情報も充分に出回っていない上に、狙った自分の欲しいクラスを出すこともできない。

パーティー編成も、望んだ人材を集めるのは困難を極める。

こんな状態で成金ラーナを狩るのは、確かに難しいかもしれない。

「そもそも速すぎてまともに追い付けない上に、たまに攻撃が当たってもまるでダメージが通った感覚がない……と。追い掛けていたら深追いしすぎて、魔物に囲まれて窮地に陥った人も少なくないんだとか。……うう、もしかしたら、成金ラーナのせいで亡くなった冒険者の方もいるかもしれませんねぇ」

ルーチェがぶるりと身体を震わせる。

「成金ラーナは素早さと防御力が桁外れに高く、強力な耐性まで持っているからな」

成金ラーナの耐性は各属性攻撃、状態異常、デバフを完全に無効化する。

成金ラーナを倒すためには、あの素早い動きを捉え、かつ黄金の体表を貫く高い攻撃力が重要となってくる。

仮にステータス的には充分討伐できる域にあったとしても、無理に成金ラーナの素早さに対応しようと動きが崩れれば、しっかりと攻撃力が乗らずにダメージが与えられない。

だからC級冒険者でも狩れずに逃げられているのだ。

「あのぅ……アタシ達じゃ、どうしようもなくないですかぁ? 確かにこのエルマさんにいただいたナイフ……〈鉄石通し〉は、防御力が高い相手程有効ではありますけれど、さすがに成金ラーナにダメージを与えられるとはとても……。そもそもアタシの足で、追い付けるとも思えませんし」

「まあ、そうだな。〈天使の玩具箱〉に出没する成金ラーナは【素早さ:67】……【防御力:200】を誇る。あの黄金の鉄壁の前では、〈鉄石通し〉の防御力【15%】貫通効果だって、あってないようなもんだ」

この素早さは、足の速い道化師クラスであるルーチェの二倍以上である。

そして鈍足な重騎士クラスである俺の三倍の値だ。

追いかけっこになった時点で追い付けるわけがない。

そして【防御力:200】……この値は、俺の〈城壁返し〉が完璧に決まっても一ダメージも通らない数値である。

元より、臆病な成金ラーナが攻撃してくることはないのだが。

俺の〈当て身斬り〉にも防御力【15%】分の貫通効果があるが、成金ラーナにダメージを与えるには遠く及ばない。

「……あのう、もしかして、無理じゃないですか? 仮に百回接触できたとしても、一度も狩れる気がしないのですが」

「大丈夫だ。勿論、成金ラーナを狩れる算段があるからここを狩場に選んだんだ」

成金ラーナは属性技や状態異常、デバフの一切を受け付けない。

だが、それはスキルの特殊効果に一切左右されない、ということではないのだ。

奴の耐性は一見完全に見えて抜け穴がある。

俺の計算では、ギリギリで成金ラーナの防御力を貫くことができる。

「エルマさん、成金ラーナにダメージを与えられるスキルを持っているんですか? 重騎士にそんなスキルがあるだなんて、聞いたことがありませんけど……」

「いや、成金ラーナを逃がさないように追い詰めるのも、奴の防御力を貫いてダメージを与えるのも、両方ルーチェにやってもらうことになる」

俺はルーチェを指差してそう口にした。

「ア、アタシですかぁ!? あのっ、あのあの! 期待してもらえるのは嬉しいんですけれど! とっても嬉しいんですけど! アタシあの、そんな力ありませんよぅ!?」

「さっきのレベル上げで得たスキルポイントが八あるはずだ。それを全て、〈愚者の曲芸〉に入れてくれ」

これで〈愚者の曲芸〉が【10】になれば、二つ新しいスキルを習得することができる。

それが今回の成金ラーナ狩りの肝になるのだ。