軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第126話

「ちょっと異常だね……経験値獲得量」

世間が浮かれ気味な聖夜でさえも、テンジは自室の勉強机に置かれた閻魔の書を分析していた。

本は暖色のライトで照らされており、その隣にはホットミルクが湯気を立てている。

ちょうど飲み頃まで温度が下がったことを唇で確認し、ずずずっとホットミルクを飲む。ホッと温かな息を吐きながら、ぱらりとページを捲っていく。

テンジが見ていたページはステータスのページだった。

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【名 前】 天城典二

【年 齢】 16

【レベル】 5/100

【経験値】 481,059/3,125,000

【H P】 5036(5020+16)

【M P】 5016(5000+16)

【攻撃力】 10,146(10,130+16)

【防御力】 10,155(10,139+16)

【速 さ】 5028(5012+16)

【知 力】 5063(5047+16)

【幸 運】 5045(5029+16)

【固 有】 小物浮遊(Lv.8/10)

【経験値】 13/182

【天 職】 獄獣召喚(Lv.5/100)

【スキル】 閻魔の書、獄命召喚

【経験値】 481,059/3,125,000

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つい昨日のお昼ごろまでは「1,011/3,125,000」だった表示が、たったの一日半で「481,059/3,125,000」へと変化していたのだ。その差は『480,048』である。

24時間ずっと観察していたわけではないが、ときどきテンジは閻魔の書の最後のページにどんどん追加されていく討伐ログを確認し、記録としてスマホに残していた。

(ざっとした数だけど……24時間で三等級2200体、二等級100体くらいってところかな。単純に考えても、約40秒に一体は倒してる計算になるのか)

この一日での変化量が凄すぎて、頭の整理が追い付いていなかった。

ほぼ探索師の立ち入らないフィールド故に、手つかずのモンスターが跋扈している。

地獄獣の全数は215、うち、分隊を20も築いている。

そして地獄獣が寝ることはなく、24時間ずっと戦い続けている。

この三要素が合わさったからこそこれほどの数字を叩きだしているのだが、これまでの経験値獲得の苦労を考えると、テンジはいまだに驚き慣れてはいなかった。

「この計算だと……あと五日と半日で次のレベルに上がりそうだな」

テンジの心の中には「嬉しい」と「怖い」という二面性が渦巻いていた。

嬉しいと思うのは当たり前だろう。

マジョルカに来て三か月経って、ようやくレベル1からレベル5になったばかりだ。

それをたったの一週間で上書きしようとするのだから、楽しみなのは仕方ない。

だけど、テンジは怖いとも思っていた。

一体、自分はどこに向かっているのだろうか。

それがずっと怖かった。ただ自分は妹のためにお金を稼いで、美味しいご飯を食べられればそれでいいと考えてきた。

ただ、現実はずっと複雑に絡み合っていて、もっと違う未来が訪れるのではないかという漠然とした不安を抱えていたのだ。

それもリィメイ学長の言った『九王』という言葉を聞いたからなのだろう。

「まぁ……でも、嬉しさの方がずっと大きいんだろうけどね」

テンジは部屋の窓から見える綺麗な夏の夜月を見上げながら、これからの将来像を思い浮かべる。

一体、自分はどんな探索師になるのだろうか、と。

チャリオットギルドのように、世界を守るために全力で力を振るうのもカッコいい。

リオンのように、自分の意志を貫く姿もカッコいい。

今までお世話になってきた先生方のように実績を残して、先生になるのもまたカッコいい。

ムシュタさんのように、貧民に希望を与える仕事をするのも憧れる。

ただひたすらにモンスターと戦い続ける、ダンジョンに住まう真の探索師も凄く憧れる。

探索師と一言で言っても目的や行動指針は様々で、一体自分はどんな探索師として学校を卒業したら活動するのだろうか。

未だにテンジの中で明確な答えは見つかっていない。

ただ一つ――。

テンジの中でほとんど確定している未来があった。

「……『九王が現れるとき、何かが世界中で起こる』か」

現在、テンジが知っている『九王』に最も近い存在は、《幻獣王》黒鵜冬喜。

そして――。

「地獄の王、まさに僕のことだ」

いつの日か自分は本当に王になってしまうのだろう。

そんな漠然とした未来を、テンジはその瞳でしっかりと捉えていた。