軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第九十二話 三度の襲来

それから俺は【鉄の歯車】さん達の護衛もあって、無事に初日、二日目、そして三日目と採取をこなすことができた。

採取量もかなり順調で、三日目終了の現段階で既に、今までで一番多く植物を採取出来ていると思う。

大量の魔力草はもちろん、新種の香辛料であるオレガノの葉、フェンネルの葉、マスタードの種子。

そして新種の効能である、‟甘み”を持つアニスの種子も採取出来た。

‟辛味”や‟香り”、‟旨味”はあったのだが、‟甘み”はアニスの種子が初めてだな。

果物とかだと、たまに‟甘み”を持つものもあるんだけど、香辛料では初めての‟甘み”持ちだ。

アニスの種子には‟甘み”の他に、‟香り”も効能にあるため正直、かなり期待している。

それから高値で売れるグルタミン草も15本収穫でき、俺の一番のおともと言えるダンベル草も3本収穫出来た。

様々な植物が採取でき、改めてコルネロ山は植物採取に向いている場所だなと再確認。

アングリーウルフの気配もないし、他の魔物はバーンとポルタが瞬殺してくれる。

拠点に戻れば、採取した植物や魔物の肉を、ライラとニーナが美味しく調理してくれ、至れり尽くせりな採取生活を送れた。

明日で帰還日だが、惜しいと思ってしまうほどには楽しかったな。

まあ、帰ったら帰ったでトレーニングをしまくる日々に戻るから、それもそれで楽しみなんだけど。

充実しすぎている生活に喜びを噛み締めつつ、俺は今回の採取生活最後の眠りへとついた。

★ ★ ★

最高の気分で心地よく眠っていたのだが、俺は酷く嫌な気配を感じ取って目を覚ました。

全身がガクガクと震えるこの感覚に、俺は既視感を覚える。

—―アングリーウルフだ。

だらだらと汗が滝のように流れ、体の震えが一向に治まらない。

そんな頻繁に襲われないだろうと、自分の感覚を疑いたくなるが……この感じは間違いなくアングリーウルフだ。

……くそっ。

アングリーウルフさえいなければ過去最高に順調な状態で、採取生活を終えることが出来たのに。

心の中でアングリーウルフに悪態を吐くが、そんなことを考えていても事態が好転するわけではない。

俺は前回と同じように、すぐに隣で寝ているポルタを起こし、見張りをしているバーンに注意喚起をしに行こう。

「ポルタッ。起きてくれ。アングリーウルフだ」

体を思い切り、揺すりながら俺が短くそう告げると、体をビクッと反応させたポルタ。

すぐに目を覚ましたため、俺はポルタを置いて外にいるバーンの下に向かう。

テントを出ると、テントの真ん前で見張りをしているバーンがいたのだが、例の如くバーンはアングリーウルフには気づいていなさそうだな。

確かに、俺が感じているのは‟予感”なだけで、今のところ音とかの外的情報は一切ない。

アングリーウルフを前に置き去りにされたせいで、アングリーウルフに関しての微弱な何かに、体が過敏に反応しているのだと思う。

「バーン。アングリーウルフが近くにいる」

「は? いるわけない……いや、そう言えば前回もルインは気配を感じ取って——」

バーンがそこまで言いかけたところで、山の奥の方から遠吠えのようなアングリーウルフの鳴き声が聞こえた。

その鳴き声はバーンも聞こえたようで、俺の方を向き、静かに一つ頷いた。

「ルインには悪いがまた逃げることになるぞ。ライラとニーナを起こしてくるから準備してくれ」

「いや、こればかりは仕方がないからね。バーンが謝らないでも大丈夫だよ。急いで準備をしてくるから、そっちは頼んだ」

申し訳なさそうにしているバーンにそう声を掛け、俺は再びテントの中へと戻る。

テントに戻り、すぐにライトメタルのプレートに鋼の剣を装備。

更に、腰のホルダーにアングリーウルフのナイフと、毒入りスライム瓶に魔力草をセット。

鞄は邪魔になるため置いて行き、これで準備完了だ。

隣で準備をしていたポルタと一緒にテントから出ると、またアングリーウルフの遠吠えが聞こえた。

先ほどよりもかなり近い位置で聞こえたため……これはかなり危険かもしれない。

俺がそう思っていると、先ほどの遠吠えに呼応するように、別の方向からアングリーウルフの遠吠えが聞こえ、更に別の場所からも聞こえた。

「これ……不味くない……ですかね?」

俺と一緒にテントから出たポルタが、青い顔でそう言った。

今、聞こえた遠吠えは三方向からで、俺達を囲むように接近してきているのが、鳴き声から分かる。

しかも、一つの鳴き声の方向は山の下。

……つまりは下山するために通らなければいけない方向から、はっきりと聞こえたのだ。

アングリーウルフが俺達を狙っていなかろうが、どちらにせよこのままでは確実に搗ち合ってしまう。

だからと言って、ここから逃げるとしても既に囲まれているため、アングリーウルフと搗ち合わずに逃げるのは、かなり厳しいと俺も思ってしまった。

……と言うか、このアングリーウルフの動き。

どう考えても、俺達を狙っているようにしか思えない。

俺とポルタが、アングリーウルフの位置を感じ取って青ざめていると、そこでようやくライラとニーナと一緒にバーンが出てきた。

「全員の準備完了だ。さっさと逃げよう」

そう言って動き出そうとする三人に対し、下山する方向から遠吠えを聞いた俺とポルタは動けずにいた。

立ち止まっている俺とポルタに、疑問の表情を浮かべている三人を前に俺は必死に頭を働かせる。

頭を必死に動かし、絞り出した選択肢は三つ。

一つ目は下山する方向に突っ走り、囲まれる前にそのアングリーウルフを素早く処理すること。

懸念点を上げるなら、こっちの方向にアングリーウルフが複数匹いること、もしくは一匹だったとしても、処理に手間取って囲まれたら終わりだと言う点。

山道で戦闘を行う場合は、アングリーウルフ側が絶対に有利だからな。

二つ目はアングリーウルフの遠吠えが聞こえていない方向に逃げること。

この選択肢の懸念点は、遭難の確率が上がることと、‟下山”と言うゴールがないため、いずれ追いつかれる可能性が高いと言う点。

そして最後の選択肢はこの場に留まり、アングリーウルフを迎え打つこと。

懸念点は搗ち合う確率が一番高いと言う点だが……。

どちらにせよ搗ち合ってしまうのなら、見晴らしがよく、連携の取りやすいこの山の中腹で迎え討つのが、俺は一番勝率が高いと思う。

一瞬で思考を整理した俺は、立ち止まっている俺とポルタに疑問の表情を浮かべている三人に、現在の状況と取れる選択肢についてを簡潔に説明したのだった。