軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八十九話 一ヵ月が経過し……

ダンベル草を用いての本格的なトレーニングを開始してから、約一ヵ月が経過した。

ここ一ヵ月間、毎朝ダンベル草カレーを食べ、ひたすらにトレーニングに励む日々を過ごしていたため、外出も殆どしていない。

……外に出たと言えば、【断鉄】にアングリーウルフのナイフを取りに行ったことと、一週間に一度、貯めたグルタミン草を売るためにクライブさんのお店へ行き、カレー用の香辛料と食材を買ったぐらいだったな。

そんな切り詰めたトレーニング生活を送っていたお陰もあって、体にも若干ながら変化が訪れていた。

一ヵ月前までは枝のようにほっそほそだった体が、今では一目見て分かるくらいの筋肉がついている。

ダンベル草のお陰なのか、それとも特訓で鍛え上げたからなのかは分からないけど、どちらにせよ、こうして目に見える成果が出たのは本当に嬉しい。

それに、剣の振りも自分目線だから定かではないんだけど、日々速くなっている気がする。

こちらに関しては本当に、気がする……程度だけど、剣の扱いには大分慣れてきたのは事実だし、二週間ほど前から鋼の剣でもしっかりと振れるようになった。

治療師ギルドでは、自分が成長しているのかどうかも分からず、ただ生きるためだけに日々を過ごしてきたのもあって、今の生活は確かに大変ではあるのだけど……こうして毎日、自分の成長が実感できる生活が楽しくて仕方がない。

もっと長期間に渡り、籠って鍛え続けたい欲が出てきているのだが、そろそろ植物採取にも行きたい。

誰とも会話せずにひたすら籠り続けるのは、精神状態になにかしらの影響も出てきそうだから、心身のリフレッシュも兼ねて一ヵ月に一回の植物採取は行うべきだな。

単純に【鉄の歯車】の面々にも会いたいしね。

そう決めた俺は朝の特訓を終えてから、ダンベル草カレーを食べたあと、【鉄の歯車】さん達に会いに行くため、【ビーハウス】へと向かった。

直接、冒険者ギルドから依頼を出しても良かったのだが、予定や他の依頼が入っていて、【鉄の歯車】さん達が採取依頼を受けれなかったら嫌だからな。

まずは採取クエストに行けるかの確認を取ってから、冒険者ギルドで依頼を出した方がいいだろう。

俺はそんな考えの元【ビーハウス】に来たのだが……丁度良いタイミングで【ビーハウス】から出て行った四人の姿が見えた。

【鉄の歯車】さん達と会うのは約一ヵ月ぶりなのだが、日々のトレーニングが忙しくて時の流れが早く感じたため、意外にも久しぶりと言う感覚が一切ない。

四人は俺に気が付いていないようなので、俺の方から声を掛けた。

「ちょっと待ってください。【鉄の歯車】さん!」

俺が後ろからそう声を掛けると、四人は一斉に振り返り、声を掛けてきた人物が俺だと分かると表情を明るくさせてくれた。

いの一番に、ライラがこっちに走ってくると笑顔で声を掛けてくる。

「ルインだ! 本当に久しぶりだね!! 全然姿を見ないから心配してたんだよ!? 元気にしてたの!? 怪我とか病気とかだった訳じゃないよね!?」

「うん、大丈夫! 元気にはやってたからさ! ライラ、心配してくれてありがとね」

会って早々、まくし立てるように俺の心配をしてくれたライラ。

心配してくれると言うだけで本当に嬉しいな。

俺が笑顔でライラを見ていると、なにか疑問に思ったのか急に首を傾げた。

「…………? ねぇ、いきなり話変わるけどさ……なんか体つき変わった? この間会った時はもっと華奢で、女の子みたいな体型だったと思うんだけど……」

軽い挨拶を済ませると、俺の変化に気づいてくれたライラがそう聞いてきた。

体つきの変化に気づいてくれたのが嬉しく、俺は更に表情が緩んでしまう。

「多分、変わったと思う……! 実はこの一ヵ月間、ずっと筋トレと剣の素振りをしてたんだよね」

「やっぱりそうだよね!? —―ねぇ、みんな見てっ! ルインが男の子っぽくなってるよ!」

駆けてきたライラの後ろから、歩いてこっちに向かってきている三人に、ライラは嬉しそうにそう告げた。

俺の下に辿り着いた三人は、まじまじと俺のことを見ると、少し驚いた表情で言葉を漏らす。

「本当だ。ルインがルインじゃなくなってるな」

「……えっ。この一ヵ月間でここまで変わるんですね」

バーンとニーナの二人は、素直に関心した様子で声を掛けてくれた中、ポルタだけが口をあんぐりと開けて固まっている。

ポルタにしてはあまりにもおかしな表情をしているため、気になり俺から声を掛けようと思った瞬間、ライラを押しのけて俺のすぐ近くまで駆け寄ってきたポルタ。

すると、いきなり俺の体をベタベタと触り始めた。

「うそっ! この筋肉、偽物じゃないぞ……。この間まで僕より細かったのに……。これは一体どういう原理でしょうか? よろしければ、どうやって鍛えたのかを僕に教えてはくれませんか!?」

いつにもなく、鬼気迫る表情でそう詰めてきたポルタ。

どうやって鍛えたのかって言われてもな……。

先ほどライラに言った通り、本当に引きこもって筋トレと素振りをしていただけだ。

もし、ダンベル草で変化があったのだとしたら、教えてどうにかなる訳でもないし……これは返答に困ったぞ。

「ポルタ! ルインが困ってるから、一旦離れなさいっ!」

ポルタの質問に俺がたじろいでいると、ライラがポルタを俺から引きはがしてくれた。

残念そうにしているが、こればかりは答えようがないからなぁ。

後で一応、どんなトレーニングをしていたのか、内容だけ教えてあげようか。

「それでルイン! 私たちになにか用事があったの? それともたまたま通りがかっただけ?」

「用事があって来たんだよ。実は指名依頼を出したくて、いつ引き受けられるのかの確認に来たんだ!」

「えっ、本当に!? あの契約依頼してくれるんだ! バーン、明日からは特に予定ないよね!?」

「ああ。今日の依頼でこの間引き受けた依頼は最後だから、大丈夫なはずだぞ」

「だってさ! こっちは明日にでも引き受けられるよ!!」

おっ、これは色々とタイミングが良かったみたいだな!

それなら早速、明日から採取の護衛依頼をお願いしようか。

「それじゃ、早速明日から採取護衛してもらってもいい? 冒険者ギルドには今日、これから依頼を出しておくから」

「もちろん! ……前回は失敗しちゃったからね! 今回は絶対に成功させるから!」

「勝手にだが、リベンジマッチだな。そう言うことだから、依頼の方はよろしく頼んだ。こっちも今日の依頼が終わったら、その時に引き受けておくから」

「分かった。それじゃ依頼は出しておくから。仕事前に引き止めちゃってごめん。四人とも頑張ってね!」

「ありがとっ! よーしっ!楽しみも出来たし、張り切って依頼をこなしちゃおう! えいえいおー!!」

一人で掛け声をしているライラを俺は笑顔で見ながら、街の外へと向かう【鉄の歯車】さん達を見送った。

ポルタだけは最後まで俺と話したそうにしていたが、バーンに無理やり連れていかれていた。

明日から採取に行くのだし、その時にポルタには教えてあげよう。

それにしても……やっぱり、【鉄の歯車】さんたちも良い人達だなぁ。

会話をしたことで、元気を分けて貰えた気がする!

よしっ! このまま依頼を出しに行ったら、帰ってトレーニングを頑張ろうかな!

今日は完全休養日にしようと思っていたのだけど、予想外の元気を貰えたため、俺はトレーニングの決行を決めた。

……なにより、ここ一ヵ月の成果に気づいて貰えたのが嬉しかったな。