軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七十二話 女の子の服装

おばあさんと別れ『エルフの涙』を後にし、外へと出ると既に日が落ちかけており、辺りは暗くなり始めていた。

おばあさんと、随分と長話してしまったからな。

ただ、『ビーハウス』に行くのには丁度いい時間な気がする。

ライラは夜に来てと言っていたしね。

頭の中は治療師ギルドのことでいっぱいで、正直気になって仕方がないのだが……気を取り直し、一度ボロ宿に香辛料を取りに戻ってから『ビーハウス』へ向かおう。

その間に頭も整理して落ち着かせようか。

香辛料を取ってから、俺は『ビーハウス』へとやってきた。

商業街の近くにある宿屋『ビーハウス』。

外観は俺の寝泊りしているボロ宿よりかは、大分綺麗だが……看板に書いてある宿泊料金はかなり安い。

【鉄の歯車】さん達もやはり節約しているんだなぁと、『ビーハウス』の宿泊料金でよく分かった。

さて、受付でライラの名前を出せば大丈夫なのかな?

呼び出す方法を詳しく聞いておけば良かったと、軽く後悔しつつも俺はとりあえず『ビーハウス』の中へ入る。

建物を入って目の前に受付のような場所があり、受付の奥の部屋でくるくる髪のおばさんがなにかを読んでいるのが見えた。

「すいません! ちょっといいですか?」

受付から少し大きめの声でおばさんを呼ぶと、こちらに気づいたようで、すぐに出てきてくれた。

「お客さんかい? 悪いんだけど、今は満室でね……。また違う日に泊まる予定があったら来とくれ」

「いえっ! 宿泊目的じゃなくて、ここの宿に泊まっている……ライラって言う人に用事があって来たのですが!」

「うん? ライラ……? あー! 確かに誰か来るかもしれないから、部屋番号教えてあげてって言われていたわ! ふふーん……男ねぇ。あの子も男っ気がない割りにやることはやってるのね」

なにやら盛大な勘違いをされているように感じるが……ライラが俺が来ることをこの人に伝えてくれていたのは助かったな。

俺は受付のおばさんからライラの部屋番号を聞き出し、すぐに部屋へと向かった。

ここ『ビーハウス』はかなり歪な構造となっていて、受付で場所を確認したのにも関わらず、部屋を見つけるのに大分掛かってしまった。

教えて貰った部屋番号と、辿り着いた部屋の番号が合っているか、再確認してから扉をノックする。

ノックしたと同時くらいに、部屋の中からライラの返事が聞こえた。

ドタドタとこちらに駆けてくる音が聞こえ、扉の前で音が止まったと思ったら、勢いよく扉が開いた。

「ルイン!今日来たんだね! ちょっと待ってて。今さっき依頼から戻ってきたばかりだから、準備終わってないんだよ!」

「大丈夫だよ。部屋の外で待ってるからゆっくり準備して!」

「ごめんね! すぐに準備するからっ!」

ライラはそう言うと、また凄い勢いで部屋の中へと戻って行った。

相変わらず元気だなぁと思いつつも、俺は別のところが気になっている。

……ライラの服装が冒険用の服じゃなかったのだ。

オシャレなノースリーブのトップスに、動きやすそうなショートパンツ。

髪型もポニーテールなのだが、なんかふわっとしていた気がする。

護衛して貰っていた時とは、まるで別人のようで少し緊張してしまった。

少しどぎまぎしながらライラの準備が終わるのを待っていると、部屋の中からライラとニーナが出てきた。

ニーナもこの間会った時とは服装が違い、ゆったりとした白い可愛らしいワンピースで、髪の毛はあみあみに結ばれていて、どこかのお嬢様のような佇まい。

ライラは先ほどの服装にマリンキャップを被っていて、ライラの明るい印象を前面に押し出した服装。

一緒にコルネロ山に行っていたときは感じなかったが、こうしてお洒落をしているところを見ると……二人共、やはり女の子だなと感じるな。

アーメッドさんは良くも悪くも依頼外でも同じだったから、変な緊張はしなかったんだけど……。

「――ねぇルインッ! 聞いてるの!?」

ぼけーっと二人の恰好に見入っていると、ライラが大声を出した。

どうやら俺に話しかけていたようだったのだが、完全にライラの言葉が頭に入ってきていなかったな。

「ごめん。ちょっとぼけっとしてた」

「ルイン、大丈夫? ちょっと疲労が残ってるんじゃないの?」

「いや、二人の服装がいつもと違うから驚いてただけだよ」

俺がそう伝えると、お互いに服装を見合って首を傾げた。

俺の言った言葉の意味が、いまいち伝わっていなさそうだ。

「いつもと違う……? あー! 冒険者としているときと違うってこと? そりゃ当たり前……だと思ったんだけど、ルインは同じ服装だね」

「うん。俺はあんまり服を持っていないからさ」

「そうなんだ! それじゃ今日は服も見に行く? 私が見繕ってあげるよ!」

「……ライラさん。もう夜なのでそんなに時間はないと思いますよ」

「そっかぁ……。じゃあルインの服を探すのは次だね!」

なんか変な気を遣わせてしまったみたいで申し訳ないな。

服なんてなんでもいいと思っていたんだけど……この反応を見ると、やっぱり買った方がいいのかな。

ディオンさんに教えてもらった服屋に、今度行ってみてもいいかもしれない。

俺はそんなことを考えながら、二人について、香辛料のお店へと歩いていった。