軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百七十一話 ライフの生成

魔王の領土を無事に抜け、天爛山を下りて皇国の都で休憩。

そして、そこからはほぼ休みなく歩き続けて、王国へと戻ってきた俺達はランダウストへと即座に帰還した。

皇国から王国に入ってからは、三人ともほぼ無言でひたすら歩を進め、今までで一番の早歩きで帰ってきたと思う。

「ランダウストが見えてきましたね。行きはもっと長かったイメージがありましたが、戻ってくるのはあっという間だった気がします」

「実際にめちゃくちゃ早歩きだったでさぁ! あっという間の感覚は間違ってないと思いやすぜ!」

「早く治療師ギルドに行って、ライフを試してみましょう! 二人が先導してください!」

「それよりも……ライフが生成できるかの確認の方が先ではないでしょうか? ルイン君、試してみてください」

ディオンさんにそう言われ、まだライフを生成していないことを思い出す。

魔王の領土から帰還してからは、とにかく早く帰ることだけを優先していたからな。

「そ、そうですね。これでライフが生成できなければ、仕切り直しになってしまいますよね」

焦り過ぎているのが自分でも分かるため、大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

それからランダウストの路地裏へと入り、誰にも見られない場所で【プラントマスター】のスキルを発動させた。

もちろん生成する植物はライフ。

これで生成できなければ一度し切り直すことになるため、絶対に成功させたいところ。

ゴリゴリと魔力が吸い取られていく感覚があり、気を抜くと意識を失いそうになる。

時間にして一分ほどだろうけど、体感は五分ぐらいにも思え――その間も減り続ける魔力に“失敗”の二文字が頭を過ったのだけど……。

俺の手のひらには、『トレブフォレスト』で採取した時とほぼ同じ植物が生成されていた。

多分だけど、限界ギリギリの状態。

頭もぽわぽわするし、思考も上手くまとまっていない状況だけど――俺は静かにガッツポーズを行った。

あとはこの植物をアーメッドさんに使うだけ。

どのようにして使うかは分からないけれど、煎じて飲ませれば多分大丈夫なはずだ。

「ル、ルイン! 生成の方はどうでやしたか?」

「無事に成功しました! 早くアーメッドさんの下へ行きましょう!」

「ルイン君、本当によくやってくれました。スマッシュさん、先に行って棺を出してもらってきてください!」

「分かりやした! ディオンはルインに肩を貸して、ゆっくりと来てくだせぇ! 準備は整えておきやすぜ!」

そういうと、全速力でランダウストの街を駆けて行ったスマッシュさん。

そんなスマッシュさんの後を、俺はディオンさんと一緒にゆっくりと追う。

ディオンさんに肩を借りながらも、なんとか治療師ギルドの特別霊安室に辿り着いた。

この部屋の中に入ると、あの時の衝撃を今でも鮮明に思い出す。

乗り越えたはずだけど、やっぱりライフで生き返ることがなかった時を想像すると……震えるほどに怖い。

部屋の中の寒さも相まって、ガタガタと震える俺の背中をそっと擦ってくれたディオンさん。

「大丈夫ですよ。もし仮に駄目だったとしても……他の道を探せばいいだけです。私とスマッシュさんは、ルイン君についていきますから」

優しい声音で掛けてくれた言葉で、震えるほど怖かった気持ちがグッと楽になった。

もしディオンさんやスマッシュさんがおらず、俺一人で全てを抱え込んでいたら確実に潰れていた――そう断言できるほど、今もそうだけどずっと支え続けてもらっていたな。

「そうですね! まだ一つ目ですし、この世界のどこかにはまだまだ生き返らせる方法があると信じます!」

「ええ、その意気です。ライフを煎じて飲ませてあげましょう」

鞄からすり鉢とすりこぎを取り出し、『エルフの涙』のおばあさんに教わった方法でライフを擦っていく。

そして完成した飲み薬を持って、俺はスマッシュさんが立っているアーメッドさんの棺桶の前へと向かった。

「ルインの手に持っているのがライフですかい?」

「はい、そうです! 口の中に流し入れますので、開けてもらっていいですか?」

「体が物凄く冷たいでやすが、このまま使っていいんですかい?」

「……何か着せてからにしましょうか」

アーメッドさんの体に俺達三人の衣類を着込ませてから、体が温まるのを少し待つ。

体を冷やしたり温めたりを何度も行うことがよくないというのは分かるため、本当にライフが本物の蘇生植物であってほしい。

「それでは私が口を開けさせますので、ルイン君が流し込んでください」

「分かりました。お願いします」

ディオンさんがアーメッドさんの口を無理やり開かせ、俺はそこに煎じたライフを流し込んで行く。

煎じた全てを流し込み、しばらくの沈黙のまま様子を見守ったのだが……特に変化はおきない。

心臓が痛いほど速く動いており、魔力がギリギリなこともあって倒れそうになるが、アーメッドさんの容体が変わるまでは倒れられない。

拳を強く握り絞め、必死に祈っていると――微かにアーメッドさんの胸の辺りが動いた気がした。

「ディオンさん、スマッシュさん! 今、動きませんでしたか!?」

「えっ、あっしはちょっと分かりやせんでした! ……ちょっと治療師を呼んできやす!」

「私も動いたように見えたのですが、こんなに早く効果が現れるものなんですか?」

「分かりませんが、確実に動いた気がします!」

そこからはスマッシュさんが治療師さんを呼んでくるまでの間、俺は必死にアーメッドさんに呼びかけた。

……ただ、それ以降は一切動くことはなかった。

「ルイン、連れてきやした! エリザはどうですかい?」

「あれ以降は一切動いていません! 治療師さん、よろしくお願いします」

「生き返るなんて聞いたことがないので、どうなるか分かりませんが……回復魔法をかけさせて頂きますね」

三人で祈るように手を組み、治療師さんが回復魔法を行ってくれているのただひたすらに見守った。

そして――アーメッドさんは胸に詰まっていた何かを吐き出すように大きく一つ咳込んだ後、そこからはゆっくり浅くではあるが呼吸をし始めたのだった。