軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百九話 実力試し

初めて剣を構えてスマッシュさんと対峙する。

おちゃらけたいつもの姿しか知らないため、真剣な表情をしているスマッシュさんは少し新鮮な感じ。

「ルイン、準備はいいですかい?」

「いつでも大丈夫です! スマッシュさん、よろしくお願いします!」

「それでは私が審判を務めさせてもらいます。数字を数えた後に手を鳴らしますので、それが試合開始の合図です」

俺もスマッシュさんも、ディオンさんの言葉に頷いてから剣を構えた。

スマッシュさんは意外にもオーソドックスな構え方。

もっと奇抜な構え方を予想していたのだけど、思い返せば戦闘はこの構えだった。

俺も上段、下段と構えがある中、実力試しということもあり、キルティさんに最初に教わった基礎の型で構える。

「三……二……一……」

数字が数えられた後、一つ大きく手が鳴らされた。

開始と同時に飛び出してくるかと思ったけど、両者互いに一歩も動かずに静観。

絶妙な間合いがハラハラ感を演出し、久しぶりのこの空気感に心臓の鼓動が速くなる。

じりじりと互いに距離を詰めていく中、スマッシュさんの目が先に打ってこいと言っているように感じた。

……そういうことであれば、遠慮なく俺からいかせてもらおう。

最初は軽めの小手を狙い、次に少し強めの胴、最後に強めの面を放つ、基礎中の基礎のコンビネーションから。

距離を測ってからタイミングを見計らい――小手。

綺麗に狙い通りの位置に剣を振ることができたのだが、力をほとんど入れていなかったこともあり、簡単に打ち落とされてしまった。

ならば、次は少し強めに――胴。

皮の鎧の皮が一番しっかりしている場所狙い、少し強めに胴の部分を強打。

ただ、これも剣で完璧に受けられてしまった。

打ち合って分かったが、最初に自信満々だっただけあってガードが本当に上手い。

無駄なく攻撃を見切って、しっかりとガードに図る。

その一連の動作が見惚れるほどに綺麗なのだ。

ならば――最後は強めに上段から振り下ろす。

一歩距離を取ってから振り抜こうとしたのだが……なんかスマッシュさんの様子が変だ。

剣先がぷるぷると震え始め、顔がどんどんと真っ青に変わっていく。

意味が全く分からず、俺は振り上げた剣を一度下ろしてから、試合の中断をディオンさんに呼びかけた。

「ディオンさん! スマッシュさんの様子がおかしいです!」

「……? まだ何もしていませんよね?」

「そうなんですが、本当に何か変なんです!」

ディオンさんが試合中断の合図を出したのを見てから、俺とディオンさんは慌ててスマッシュさんへと駆け寄った。

「スマッシュさん。大丈夫ですか? どうしたんですか急に」

「体調不良……とかですかね?」

近くで見ると明らかに様子がおかしく、言葉が発せられないのか、身振りで合図出しているが体が震えているせいで全く分からない。

「な、な、な」

「……ん? どうしたんですか、スマ――」

「かん、かんぞ――ヴぉえッ!」

まさかのこの一週間で二度目の吐瀉。

何がなんだかさっぱり分からないが、とりあえず危険な状態であることは分かるため、俺とディオンさんは慌ててスマッシュさんの介抱を行った。

青ざめて嘔吐してしまったスマッシュさんを、横に寝かせて介抱すること約一時間。

ようやく喋れるくらいに体調が回復したのか、ゆっくりと体を上へと起こした。

「いきなりどうしたんですか? 昨日食べたお肉が当たりましたか?」

「違いやすぜ! ルインの一撃が肝臓部分に決まっちやしたんでさぁ!!」

「俺の一撃が……ですか?」

試合を思い返しても、何一つとして心辺りがない。

小手を狙った攻撃も綺麗に打ち落されたし、二撃目の胴を狙った攻撃も完璧にガードされた。

蹴りで意表を突くみたいなこともしていないし、どのタイミングのどの攻撃が効いたのか本当に分からない。

「私も審判として見てましたけど、ルイン君の攻撃は当たっていませんでしたよ。多分、お腹を下していただけなんじゃないですか?」

「違いやすぜ! 本当にルインの一撃で動けなくなっちまったんでさぁ!」

訴えかけるようにそう言うと、スマッシュさんは鎧を脱ぎ捨てて、お腹を俺とディオンさんに見せてきた。

……うわっ。本当に剣の跡がくっきりと残っている。

刃の部分がぶつかったであろう黒く腫れた後が残っていて、見ているだけで顔を伏せたくなるような傷になっていた。

それじゃ、あの胴への一撃はガードされておらず、スマッシュさんに当たっていたってことなのか?

「確かにこれは酷い傷ですね。完璧に打ち込まれてるじゃないですか」

「いやいや! ルインにはやられやしたけど、打ち込まれてはいないですぜ。あっしは完璧にガードしたんでさぁ!」

「……ん? じゃあ、その傷はなんなんですか?」

「ガードしたあっしの剣が当たった傷ですぜ。ガード越しでそれも鎧の上から! ディオン、言っている意味が分かりやすかい?」

俺の振った剣の威力がガードしたスマッシュさんの剣に乗り、更に鎧越しにこの怪我を負わせたってことか……?

やったのは俺なんだろうけど、自分でもちょっと理解に苦しむ。

「例えるなら……そうですね。ドラゴンの攻撃を剣でガードしたけど、剣も鎧も貫通してダメージを受けた――みたいなことでしょうか?」

「そうそう、それですぜ! 体が吹っ飛ぶとかありやせんでしたが、体の芯にダメージが残り続けるみたいな感覚でさぁ! なんとか効いてないフリをしてたんでやすが、もうそこから一歩も動くことができやせんでしたね」

「……それ本当ですか?」

「嘘なんか吐く訳ないですぜ!」

自分としては威力も抑えていたし、手ごたえも全然なかった。

スマッシュさんの剣捌きで威力を吸収された感覚もあったし、この話を聞いてもまだ実感がない。

「……ルイン君。啖呵を切ったものの、どうやら私達では役に立てそうにありません。本当に申し訳ございません」

「いやいや、俺の方こそすいません。無茶言って相手を務めさせてしまって」

「え……? ディオンはやらないんですかい!? またなんであっしだけゲロ吐かされなきゃいけないんでさぁ! ディオンもルインと戦ってくだせぇ!」

「俺が無理ですよ! スマッシュさんみたく、怪我させたら大変ですから!」

「うぐぐ……。こんなことになるなら、ディオンの後に戦えば良かったですぜ」

スマッシュさんがそんな悲痛な叫び声を上げ、俺とディオンさんはその様子を見て思わず笑ってしまう。

スマッシュさんには申し訳ないことをしてしまったが、これで俺に想定以上の力がついていることを実感できた。

まだ半分の力も入れていなくてあの威力。

あとは魔物で試すとして、本気で斬った時にどうなるのか……。

楽しみ半分、恐ろしさ半分な――なんとも言い表せない気持ちだ。