軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百七十一話 深手と判断

俺も幼少期はよくやっていた、腕をただ回転させるというぐるぐる攻撃を行ってきた訳なのだが、鋭く伸びた爪と視認するのもギリギリな速度で振り回しているため、動きも予測し辛く意外にもかなりの脅威を感じる。

ただアルナさんの一射目を避けられなかったこと、そしてこのぐるぐる攻撃。

砂漠エリアで大きいサイズの魔物はデザートビッグモールしかおらず、魔物同士の争い相手がいないということが関係しているのか分からないが、最弱とされているゴブリンと同等レベルの戦闘センスしかないように思えた。

それでも砂中での動きだけは危険を感じているため、なるべく地上で戦うようにするべく砂の中には潜らせないように立ち回っていきたいところ。

「あの攻撃は俺が止めにかかります。動きが止まったらロザリーさんが攻撃を、少しでも砂に潜ろうとした動作を見せたらアルナさんが弓で阻止して下さい」

「分かりました。合わせます!」

「了解」

後ろに控えている二人に指示を出してから、俺は前へと出て近づいていく。

振り回す腕の風圧によって地面の砂が弧を描くように舞っており、一見馬鹿らしくもみえるその攻撃の威力が伺い知れた。

そんな攻撃に対して正面から打ち合っても吹っ飛ばされるだけなので、俺は上手く躱しつつ攻撃を合わせることだけに注力する。

こっちは大した力を入れなくとも、デザートビッグモールの力を利用できれば大ダメージを与えれるはず。

凄い勢いで向かってくるデザートビッグモールの正面に立ち、俺は高速で回転する腕の動きを見極めて潜り込んで、振られる腕に沿うように剣を振った。

威力を上手く逃がしただけでなく、回転に合わせて剣を振ることが出来たため、右腕の肘の辺りから手首までを斬り落としたのではと思うほどザックリと裂くことができ、デザートビッグモールの鮮血が勢いよく吹き出る。

手ごたえも抜群で周囲に飛び散る血も視認。

この一撃で動きは止まると思って一息ついたのだが、デザートビッグモールは動きを止めるどころか、なりふり構わずに腕を振り回したことで両断しかかっている右腕が脇腹に直撃。

俺も即座の返しで再び右腕を裂いたが向こうの攻撃の方が威力が高く、叩きつけられるように俺の体は数回地面を跳ね、更にそこに合わせて振り下ろされた左腕の爪が俺の体を切り裂いた。

なんとか体を捻らせたことにより致命傷は避けることが出来たが、左肩からお腹の辺りまで深く裂かれてしまい、体を強く打ち付けられたせいで数箇所骨が折れたのが分かる。

「か、カバーお願いします」

全身の酷い鈍痛に耐えながら声を絞り出して二人にカバーをお願いし、俺はホルダーから中級回復薬を取り出して全身に振りかける。

対するデザートビッグモールはというと、すぐさま倒れている俺を襲うために追い打ちをかけに動いていたが、俺との間にロザリーさんが割って入り、更にアルナさんの矢による連続射撃によって追撃は失敗に終わっていた。

その間に俺は中級回復薬を一本飲み干し、裂かれた箇所と折れた箇所に薬草団子を塗りたくったことでなんとか動かせるぐらいまでには回復。

体を引きずらせながら、後衛のアルナさんの位置まで必死に戻った。

「あやうく死んでたところだったね。あまりにもあっさりやられたからカバーが間に合わなかった」

「……すいません。かなりの手ごたえがあったので油断してしまいました」

「まぁ確かに一撃は完璧だったけど。右腕も完全に機能してないみたいだしね。【ブレイクショット】」

アルナさんの放った矢の先を見てみると、右腕をだらりと垂らしたデザートビッグモールの姿があった。

俺の放った一撃が深かったようで右腕は一切動かせていないようだが、左腕と頭から生えた一本角だけでロザリーさんと対峙している。

アルナさんの矢もほぼ全て当たっているということもあって、腕だけでなく全身が血に染まっているのだが……。

それでもデザートビッグモールは諦める様子を一切見せず、機能していない右腕すらも鞭のように使い始めてロザリーさんに襲い掛かっていた。

「右腕が機能していないから、もう地中に潜ることは出来ないんですかね?」

「だと思う。ルインとロザリーがスイッチしたタイミングも大きな隙があったし、今も前衛はロザリー一人で、私も攻撃に参加しているから地中に潜るタイミングは何度かあるはずだけど潜ってない」

「攻撃が直撃した時はやらかしたと青ざめたんですけど、深手を負わせることは出来ていたみたいで少しホッとしました」

「まだ終わってないから安心するのは早計。【ブラストアロー】。ロザリーもギリギリ防げてはいるけど普通に押されてる」

確かに二対一の状況だから押してはいるけど、デザートビッグモール対ロザリーさんの一対一で見ると押されている。

痛みに躊躇がないのか、隙を見てはズタズタの右腕も攻撃にしようしているし、矢でハリネズミのようになっているのに止まる気配もない。

戦闘センスのなさを身体能力だけでどうにかしている戦い方も厄介だし、ロザリーさんも簡単に手出し出来ない様子。

ダメージ関係なしで動いてくるのはエレメンタルゴーレム戦で慣れてはいるが、このデザートビッグモールに関しては無感情ではなく、コルネロ山で遭遇したアングリーウルフと同様の執念のようなものを感じる。

「ん? そんなにポーション飲み始めてどうするの?」

「んぐっ、んぐっ。――もう一度前線に戻ります」

「勿体ないからやめた方がいい。無理をしなくてももう少しで倒せる」

「いえ。なんとなく嫌な予感がするんです。三人で一気に倒しましょう」

デザートビッグモールに対し、これまでのダンジョン産の魔物とは違った印象を持った俺は、アルナさんの言葉を無視して更にポーションを二つ飲み干した。

能力アップのためにポーションの大量早飲みに関しては自信があったため、少しも詰まることなく追加のポーションを飲み干し、武器を手に取り前線へと走る。

まだ裂かれた傷口も、骨が折れているであろう箇所も痛いが、奥歯を噛みしめて我慢をし、ロザリーさんの横に並び立つ。

「すいません。一人で前線を任せてしまって」

「私は大丈夫ですが、ルインさんは大丈夫なんですか? 攻撃をもろに……っと、危なっ!」

「俺は大丈夫です。一気にカタをつけましょう」

ギリギリで攻撃を防いでいるロザリーさんとの会話をほどほどに、動きに合わせて俺も剣を振っていく。

ロザリーさんが攻撃を防ぎ、その隙を見て俺が攻撃し、そしてアルナさんが追撃。

息の合ったコンビネーションでデザートビッグモールに一切の余裕を与えさせないまま、アルナさんの放った【ブレイクショット】によって、デザートビッグモールの討伐に成功。

戦況は一方的だったものの、俺が再び攻撃参加してから倒すまでの所要時間は約二十分。

俺もロザリーさんも息を乱れさせて汗を噴き出しており、簡単には倒れないと感じた俺の勘は正しかったと、あそこで静観せずにポーションを過剰使用してでも攻撃参加して良かったと思えたのだった。