軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十七話 楽しいやり取り

俺の質問にアーメッドさんが答えようとしたとき、スマッシュさんが前へと出てきた。

スマッシュさんの顔は分かりやすくにやけていて、これはゲンコツを受ける発言をするときの顔だと俺は即座に察する。

「ルインが前方に見えたようで、嬉しそうに走って行ったんでさぁ。驚かせてやる!なんて意気込んでな。そしたら……くっ、わっはっは! 逆に驚かせられてちゃあ仕方がないですぜぇ!」

「おいっ! 黙って聞いてりゃ俺を馬鹿にしているのか? いいだろう。その喧嘩買ってやるからこっちにこいっ!スマッシュ!」

「喧嘩なんか売っててねぇですし、鬼の形相でこっちに来いと言われて行くやつぁ、この世にいないですぜ。エリザ」

「てめぇ……また、俺を名前で呼んだな? もう許さねぇ!!」

そこから逃げるスマッシュさんと、追いかけるアーメッドさんの追いかけっこが始まったのだが、ものの数秒で捕まったスマッシュさんは、お決まりのゲンコツを思い切り食らっていた。

市場の中心でハチャメチャなことをやっているが、見ていて本当に楽しい。

最初は威力のおかしいゲンコツに引いていたけど、このゲンコツもスマッシュさんが狙ってやられてると知ってからは、笑って見ることが出来るようになった。

「ルイン君……笑っていますが、そんなに面白いですか?」

「はい、面白いですよ。【青の同盟】さんは皆さん面白いので、一緒にいて楽しいんです」

「なんと言うか……ルイン君は本当に変わっていますね」

「そうですかね? 変わっているという点で言えば、【青の同盟】の皆さんのが変わっていると思いますけど」

「ふふっ、それは確かに否定できませんね。アーメッドさんなんかは、グレゼスタ一の変わり者と評判高いですから」

そのディオンさんの発言に一緒になって笑っていると、スマッシュさんに制裁を加え終えたアーメッドさんがこちらへ戻ってきていた。

「おい、ディオン。誰がグレゼスタ一の変人だって? お前もこっちにこいっ!」

「いや、それはルイン君に言わされたことでしてっ。それと変人と言ったのは、私じゃなくて周りの人達が勝手に言って——笑いながらこっちに来ないでください!」

珍しくアーメッドさんに狙われたディオンさんも、即座に捕まってゲンコツを食らっていた。

そして。倒れているスマッシュさんとディオンさんを放置し、笑顔で俺の方へと向かってきているアーメッドさん。

先ほどまであれだけ楽しい気分だったのに、途端に凶暴な猛獣に狙われた気分になって背筋が寒くなる。

ゆっくりと笑顔で近づいてきているアーメッドさん相手に逃げる気力もなく、ただひたすら近づいてくるのを待っていると、アーメッドさんは俺の目の前で拳を高く振り上げた。

ゲンコツが飛んでくると思い、思い切り目を瞑ったのだが、コツンと拳が頭に優しく当たっただけでいつまで経っても痛みは訪れない。

その瞬間、アーメッドさんがケタケタと笑っている声が聞こえ、ゆっくりと片目を開けると、満面の笑みで嬉しそうに俺を見ているアーメッドさんがそこにいた。

なんと言うか……アーメッドさんはギャップが凄い気がする。

元が狂暴過ぎて、普段はあまり端麗な容姿に目がいかないのだが、こういった無邪気に楽しそうにしているところは、絵になっていて品があるようにすら思えてしまう。

ずっとこうしていれば取っ付き易くなるんだろうなぁと思いつつも、俺はやっぱり乱暴なアーメッドさんの方が面白いから好きなんだよな。

なにをしでかすか分からない、スリルのようなものがあるのだ。

「おい、ルイン。どうした俺の顔をジーっと見て! なにかついてるのか?」

「……あっ、いえ! 殴られると思っていたので驚いていただけです」

「かっかっか! ルインは殴るよりも驚かした方が反応が面白れぇからな! 目を瞑ってビビってた姿は最高だったぜ!」

「アーメッドさんが拳を振りかぶったら、俺じゃなくても驚きますよ!………じゃなくて、三人は何してたんですか?」

「ん? おぉう? あっそうだ……今クエストから帰ってきたところで、これからクエスト報告しないと行けねぇんだった! わりぃな、ルイン。俺ら行くわ!じゃあな!」

思い出したようにそう言うと、頭を押さえて倒れている二人を無理矢理立たせてから、三人は冒険者ギルドへと行ってしまった。

うーん。それにしても、本当にアーメッドさんは俺に何をしたかったんだ?

……まあ、アーメッドさんの行動理由を考えていても俺には一生分からないだろうし、気持ちを切り替えて食材探しでもしようか。

アーメッドさんと別れてから、俺は一人で市場を回り、良さそうな食材を吟味して買い込んでから、ボロ宿へと戻ってきた。

さっそく魔力草と買い込んだ食材を近くに置いて……よしっ、準備万端。

これからこの大量の魔力草を食べるという、地獄の作業へと入るぞ。

……ポーションの製法でも知っていれば、大分楽にはなると思うんだけどな。

無いものねだりをしてもしょうがない。

気合いを入れて、採取した魔力草を食べ尽くしていこうか。