軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百六十二話 砂漠エリア

「急に暑くなりましたね。渓谷エリアは寒いぐらいだったんですけど」

「地面が砂で動きにくいし……さっさと抜けたい」

「さっさと抜けられるなら俺も抜けたいところですが、体力を考えつつ慎重に行きましょう。それと……これ、コールドミントの葉です。噛んでてもスースーしますし、すりつぶして肌に塗ってもヒヤッとして気持ちいいので良ければ使ってください」

俺は生成したコールドミント草を、ロザリーさんとアルナさんに手渡す。

二十四階層からは砂漠地帯となりダンジョン内の気温が一気に上昇、更には地面が砂となっているため歩くだけでもかなりの体力が消耗される。

俺はおばあさんから借りている耐熱耐冷装備のお陰でなんとかなっているが、耐熱装備ではない二人のことを考えたら暑さ対策が必要と思い、商人ギルドでコールドミント草を買っておいたのだが正解だったな。

寒い地域でしか育たないコールドミント草だが、【プラントマスター】による生成ならどんな場所でも出来るし、生成コストも高くないためかなり役立ちそうだ。

「……それより、ロザリー大丈夫?」

コールドミント草を首元に当てながら、心配そうに声を掛けたアルナさん。

俺も気になっていたが、二十四階層に入ってからロザリーさんの口数がめっきりと減ってしまった。

この階層でパーティが壊滅し、そのトラウマがあるという話は聞いたが……。

様子を見る限りでは、ちょっと大丈夫ではなさそうな感じがする。

「だ、大丈夫です。ちょっと色々と思い出してしまっただけで……。良いイメージを持ててますし、魔物が出たらちゃんと動けますので」

「無理はしないでくださいね。いつでも引き返せますし、すぐに二十階層に戻っても三回はチャレンジできるだけの食料がありますから」

「ルインさんもありがとうございます。……でも、大丈夫です! き、気合いを入れ直して頑張りましょう!」

頬を叩いた後に元気よくそう言ったロザリーさんは、俺が手渡したコールドミント草を口に入れるとズンズンと先に進んでいった。

本人が大丈夫と言うのならいいのだが、様子は常に見つつ慎重に攻略していこうか。

「前のあれ、魔物。地面に隠れているのもいる」

「パラライズスネークと……地面に隠れているのはマンイートですかね」

「恐らく。マンイートの罠にかからないように気を付けて」

二十四階層に入ってから約三十分が経過したところで、俺達は砂漠エリアで初めての魔物と出くわした。

障害物がなく見渡しがいいのにも関わらず、これが初めての魔物ということは砂漠エリアは魔物自体が少ないのかもしれない。

俺は体を軽くほぐしながら剣を抜き、様子を窺いながらロザリーさんと合図を取り合う。

体調面も考え、今回は俺がメインでロザリーさんがサブということで決まり、俺はパラライズスネークに向かって一気に駆けだす。

前方にいるパラライズスネークは、小さな蛇型の魔物で牙に強力な毒を持っている魔物。

それと体の小ささ故か常に群れているため、見落としにも気を付けないとならない。

マンイートは常に地面に隠れており、頭上を通り過ぎた冒険者を地中へと引きずり込む魔物。

基本的に自らは動かないため、マンイートの頭上を通らなければ危険ではないが、地中に引きずり込まれたら一切の身動きが取れなくなるため、十分な注意を払わないといけない。

魔物の情報を整理しつつ、パラライズスネークとの距離を詰めた俺は攻撃を仕掛ける。

視界に捉えているパラライズスネークの数は八匹。

噛まれないように注意をしながら、一匹ずつ狙いを定めて攻撃を開始。

動きは速いが防御力はないようで、力を入れずとも両断出来るため速度重視で剣を振る。

それでもちょこまかと地面を這っているせいで剣での攻撃を当てるのが難しく、数が減っていくごとに攻撃が当たりづらくなる。

面倒くさいため粉塵爆発で一気に燃やし尽くしたい衝動に駆られるが……パラライズスネーク相手に粉塵爆発を使うのは流石に勿体ない。

衝動を抑えて丁寧に攻撃を繰り返したことで、十数分の戦闘の末ようやく全てのパラライズスネークは倒し終えた。

続いてマンイートをどうするかなのだが、これは二人と相談した方がいいだろうな。

一度戻ろう。そう思って振り返った瞬間――右足に激痛が走る。

「ル、ルインさん! 大丈夫ですか!?」

バランスを崩した俺を見てロザリーさんが近づいてこようとしたが、俺は片手を突き出して制止の合図を送る。

その後、すぐにふくらはぎに噛みついてきたパラライズスネークを斬り落とし周囲を確認すると、後方に更に三匹のパラライズスネークを確認。

俺は即座に粘着爆弾を投げつけてから動きを封じ、距離を取ってから躊躇わずに粉塵爆発を使用した。

地面が砂なためいつも以上に砂埃が舞うのを見ながら、俺は激痛の走る右足を引き攣り全身の痺れを我慢して、アルナさんの位置まで全力で戻る。

「もしかして噛まれた?」

「はい。どうやら集団で固まっていたのとは別で隠れていた奴がいたみたいで、気づかず背後を取られてしまいました」

「背後……。ロザリーは気づかなかったの?」

「す、すいません! わ、私も前しか見ていなくて……」

報告をしつつ、俺は急いでオール草と上薬草の生成をする。

まずはオール草を傷口に塗り込んでから上薬草を塗布。

その後、塗り込んだオール草とは別のオール草を飲み干して処置は完了。

すぐに痺れは取れ、噛まれた箇所の痛みも引いてきた。

やっぱり【プラントマスター】の万能さには感謝しかないな。

「心配お掛けしましたがもう大丈夫です。マンイートはどうしますか?」

「放置でいいでしょ。……それより相手が少数だったから良かったけど、気を抜きすぎ」

「い、今のは私が悪かったです。私がルインさんの後ろにいて、は、背後を取られるなんてあってはならないのに……」

「俺も不用意に前に出過ぎたのが悪かったですから。お互いに気を付けていきましょう」

アルナさんから指摘を受け、ロザリーさんがまた沈み込んでしまったように思える。

それと、今のは不可抗力だったとしてもサポートに回る動きが少し雑になっていて、フォーカスポーションを使用しているのにどもりも出てしまっている。

エレメンタルゴーレム戦までは今までで一番の動きだったこともあり、その違いに少し心配になるな。

先ほどは強がっていたけど、精神的なものは気持ちの持ちようでもどうにもならないのが事実。

焦って攻略する必要はないし、下の階層を見つけたら一度休憩を挟んだ方が良さそうだ。