軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百二十八話 連戦に次ぐ連戦

スラストバッファローは倒せたが、まだブルーオーガの姿と上階にゴブリンアーチャーがいる。

スラストバッファローが突如転けたことに驚き、一瞬動きを止めていたロザリーさんだったが、すぐに気を取り直すとブルーオーガに向かっていった。

ブルーオーガは普通のオーガよりも一回り体が大きなオーガで、こちらも渓谷エリアに適応しているのか、崖からの落としを目的とした投げでの攻撃を多用してくる。

ただ、スラストバッファローのように、動きが速い訳でも攻撃がガード不能な訳でもないため、対処はかなり楽な魔物。

まぁその分、単純な力や戦闘能力に関しては高いんだけど……ロザリーさんならば寄せ付けずに勝てるだろう。

それよりも気になってしまうのは、上階のゴブリンアーチャーだ。

単純な弓の腕でいうなら圧倒的にアルナさんが上だろうが、地の利が圧倒的になさすぎる。

今は完全に頭を引っ込めてしまっていて姿を確認できないのだが、さっきは四匹確認することができた。

もし仮に十匹以上が上で待機していて一斉に崖上から攻撃されたら、技量なんか関係なしに蜂の巣にされてしまう。

俺はそう考え、ロザリーさんのカバーに入りつつ上階に注意を割いていると、後ろからアルナさんの指示が飛んできた。

「ルイン、ゴブリンアーチャーは大丈夫。地上戦だけに注視して」

「……分かりました。アルナさんお願いします」

そう返事をしたが、正直不安は拭えない。

ただ、あのアルナさんがそう言うのであれば信じるべきだろう。

俺は上階への意識を完全に遮断し、少し遅れてからブルーオーガとの戦闘に参戦した。

その後次々と新手の魔物が現れ、ブルーオーガにブラッドバット、クリフバイターやゴブリンウォーリアなどの様々な魔物と連続で会敵したが、なんとか凌ぎ切ることが出来た。

一時間以上に及ぶ連戦だったためギリギリの戦いだったが、懸念のあった上階からの攻撃がなかっただけでなく、後ろから矢によるサポートをしてくれたお陰で、俺もロザリーさんも軽傷だけで済んでいる。

「はぁー、はぁー。な、なんとか凌ぎ切りましたね」

「――ふぅー。で、ですね。正直、何度かここでやられるんじゃないかと頭を過ぎりましたよ。ジェイドさんとアルナさんのサポートのお陰で命拾いしました。ありがとうございます」

俺は片膝をついて呼吸を整えているロザリーさんに回復ポーションを手渡してから、絶命し灰となった魔物の跡地に向かい、ドロップ品の回収へと回る。

倒した魔物は、合計三十体ぐらいだろうか。

木々の障害物がないお陰で、視界が開けていて不意を突かれ辛いのは助かると思っていたけど、開けているせいで次から次へと魔物が寄ってきてしまうのだ。

更に、ブラッドバットが周囲の魔物を呼び寄せる音を発し、戦闘音も合わさって正にフロア中の魔物が集まってきたのではないかと思うほど。

「ドロップ品の回収は終わりました。アルナさんと合流して、上階に戻りましょうか」

「そうですね。まだ十七階層を攻略し切れていないですけど、これ以上の攻略は厳しいですもんね」

「ええ。帰りの体力も残さないといけませんから。……ここからまた、鬼荒蜘蛛と戦わないといけないとなると億劫ですね」

「私も、今はまだ鬼荒蜘蛛戦のことは考えたくないです」

二人肩を並べて沈んだ空気感の中、後衛からサポートをしてくれていたアルナさんの下に戻った。

クタクタな俺とロザリーさんとは違い、変わらず飄々とした様子のアルナさんが片手を上げて出迎えてくれた。

「おつかれ。よく動いてたね」

「アルナさんこそお疲れさまでした。言葉通り、上階から矢が一本も降ってきませんでしたね。流石ですよ」

「ん。ゴブリンなんかに負ける訳ない。射る動作を見てから動いても、射終わる前に私の矢の方が届いてる」

腰に両手を当てて、若干のドヤ顔でそう言ったアルナさん。

この様子を見ても、やはり心配は杞憂だったみたいだな。

こうなると、アルナさんの戦闘シーンを見てみたかったが、あの大量の魔物に囲まれてたら見る余裕なんてなかったし仕方ない。

「アルナさんって本当凄いですよね! 矢の威力もさることながら、誤射の少なさに毎度驚かされますもん! 今まで名前すら聞いたことなかったのが、不思議なくらいです!」

「ま、これが初めてのダンジョン攻略だし。ロザリーが知らないのもとーぜん」

確かに、アルナさんに関しては不明な点も多いし俺もかなり気になっているのだが、過去の話をあまり語りたがらないため今でも謎が多く、詳しい素性については知ることが出来ずにいる。

女の子の冒険者だけを探していたところも考えると、何か色々と裏がありそうだが……。

今はアルナさんについて考えるよりも、ダンジョンから無事に出ることを考えようか。

「それでアルナさん。体力的にも時間的にもこれ以上の攻略続行は厳しいと判断してまして、もう帰還に移りたいと考えているんですけど大丈夫ですか?」

「ん。問題ない」

「良かったです。それじゃ帰還を目指しましょうか」

全員の認識を擦り合わせてから、俺たちはダンジョンから脱出するため上階を目指し来た道を戻った。

十六階層は来た時と同じ雰囲気で、十七階層の魔物ラッシュが嘘のように静まり返っている。

アルナさん曰く、さっきと同じように崖際や岩場の裏に身を潜めているようで、決して魔物がいないという訳ではないようだ。

「あ! あれってアルナさんが倒したゴブリンアーチャーですか?」

十六階層を戻る最中、岸際に倒れているゴブリンアーチャーを指差したロザリーさん。

見てみると、確かに眉間の部分に矢が刺さっており、動けずにいる様子。

「ん。仕留め損ない。皮の兜をしているみたいだから、矢がしっかり突き刺さらなかった」

アルナさんはそう言うと矢を取り出し、倒れて動けずにいるゴブリンの心臓目掛けて矢を放った。

他のゴブリンアーチャーは既に灰となっているため確認出来ないが、あの瀕死となっていたゴブリンを見る限り、下階から上階に射ってるのにも関わらず綺麗に眉間にぶち当てていた様子。

俺は味方側なんだけど、アルナさんに狙われたと考えるだけで胃がキュッとなってくるな。

一連の光景を見て、アーメッドさんに続き絶対に怒らせちゃいけない人物だと、俺は強く脳裏に焼き付けたのだった。