軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百五十五話 鬼の指導

戦闘時間は僅か15秒足らず。

エドワードさんの動きだけを見るとあまりにも簡単に倒したように見え、ランペイジボアが弱かっただけのように見えてしまう。

ただ、俺は戦ったから分かるが、決して弱い魔物ではない。

鋼の剣で完璧な一撃を浴びせたのに絶命には至らず、トドメを刺したことでようやく倒せることが出来た。

エドワードさんのあの細い棒で、一撃で倒せている理由が全く分からない。

そこまで強い一撃を加えている様子も見受けられなかったし、何か特別なことでもしたのだろうか。

……とにかく気になる。

「どうじゃ? ちゃんと見ておったかのう」

「見ていましたが、一体どんな技を使ったのか全く分かりませんでした」

満足気に俺の下へと戻ってきたエドワードさんに、俺はそう言葉を返す。

スキルや魔法の類が濃厚だと思うのだが……傍から見ていただけでは、本当に分からない。

「そんな大層なものは使っておらんよ。ちょいと力を入れて……そう。技術を使って頭を小突いてやっただけじゃ」

「いや……自分も戦いましたが、頭を小突くだけじゃ絶対に倒せないですって! 見てください。あれだけ深く斬った上にトドメを刺して、ようやく絶命させることが出来たんですよ?」

「ふぉっふぉっふぉ。それはルインに技術と知識が伴ってないからじゃな。……もちろん才能がある者は何も考えずに剣を振り回していれば良い。ただ、才能が無い者は工夫が必要なんじゃよ。‟技術”というものは力のない者が、力ある者に勝つために生まれたもの。ルインには全てを言わずとも分かるじゃろ?」

エドワードさんのそんな言葉が響く。

グレゼスタ出立の時、キルティさんから才能がないとはっきり言われた。

それを聞いてのこの言葉なのだろう。

「……そうですね。その技術を是非ご教授してください」

「もちろんじゃ。そのために今やってのけたのじゃからな。儂が周りの才ある者に負けぬために培った技術を、旅の間に少しでもルインが身につけられるよう儂も尽力しよう」

「ありがとうございます!」

そこからは先ほどのエドワードさんの戦いを振り返りながら、どのようにランペイジボアを倒したのかを解説してくれた。

様々な人を育成しているというだけあって、エドワードさんの説明は非常に分かりやすく、頭の良くない俺の頭にもスッと入ってきた。

「……っと、簡単に説明するとこんなところかのう。どうじゃ? ルインでもできそうじゃろう」

「そうですね。エドワードさんの話を聞く限りは出来そうだな……と思ってしまいますが、そんな簡単な話ではないですよね?」

「まあ、そうじゃな。ただ、儂が教えたことを意識して行っていれば、自然とできるようになるはずじゃ。これからは儂が一振りごとに修正点を挙げていくから、体で覚えるんじゃぞ」

「はい! 分かりました!」

それから道なき山道を進みながら、襲ってきた魔物を俺が倒しつつ、言葉通りに一振りごとにエドワードさんから修正点を教えて貰った。

進行速度に関しては、魔物もあっさりと倒していることからかなり順調なのだが……一つだけ懸念点がある。

それは——。

「ルインッ!駄目じゃ駄目じゃ!! 刃の触れる面積を小さくせぇと言ったじゃろうが!! 力の分散を無くす。それが非力な者が強力な一撃を行える方法じゃあ!!!」

「はいっ! すいません、すぐに修正します!」

最初は優しく駄目だった部分を教えてくれていたエドワードさんの口調が、激しく怒鳴るような声へと変わったこと。

指導に熱が入ってしまうタイプなのか、それとも単純に俺が出来損ない故なのかは分からないが……普段が温厚なだけに怖すぎる。

意識する部分として指示をされているのは、力は一瞬に込めること。

その力を分散させないこと。

動きは小さく速くを意識すること。

そして、狙った部分に正確に打ち込むこと。

指示を受けたのはこの四つだけだし、簡単に行えると思っていたのだが、とにかく難しい。

‟力を一瞬で込めること”。

この部分に関しては、指導を受ける前から自主的に行っていたため出来ているのだが、‟動きを小さく速く”。‟力を分散させない”。‟狙った部分に正確に打ち込む”。

この三つの動作を同時に行わなくてはいけないとなると、難易度が格段に跳ね上がるのだ。

一瞬に力を込めるのと、動きを小さくすることの両立がまず難しく、三回に一回は動きが大きくなったり、力を上手く入れられなくなってしまう。

更に動きを小さく速くを意識すると、狙った箇所に打ち込むのが困難となり、自分の狙った部分に打ち込めないと力が分散してしまうのだ。

止まっている相手にならまだしも、魔物だって生きているため、攻撃もしてくるし俺の攻撃を躱す動きも取ってくる。

正直、後ろからいくら怒鳴られようが、完璧に修正できる気がしない。

「うぉい!!突きの動きが大きいぞい! 魔物が弱いから通用しているが、ルインが戦ったヴェノムトロールにその攻撃は通用せん!! それはルインが一番分かっているじゃろうが!!」

ブラックエイプを突きで殺した瞬間、またしてもエドワードさんの怒声が飛んできた。

その怒声に体がビクッと跳ねるが……言っていることは理解できる。

自分でも突きの動作が大きくなったと思ったし、恐らくヴェノムトロールにこんな悠長な攻撃をしたら、カウンターを食らうハメになるだろう。

「はいっ! すいませんでした!」

「謝罪はいらん!! 修正せえ!!」

こうして戦闘を行っている時は怒声を浴びせられ、戦闘外では冷静な言葉で駄目だった点を教えられながら、一日かけて山を越えることが出来た。

今日の目的の村に着いた時は、心身共に疲弊し切っていて……エドワードさんに指導をお願いしたことをほんの少しだが悔やんだのだった。

なんとなく嫌な予感はしたのだが、俺の第六感が内なるエドワードさんを察知していたのだと今となっては分かる。