軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百四十三話 バーンの見舞い

アーメッドさんとは、強くなって恩を返すこと。

キルティさんとは、キルティさんよりも強くなること。

そしておばあさんとは、全世界の人々を救えるようになること。

交わした約束が、段々とグレードアップしていってしまっているな。

おばあさんとの約束は、半ばノリのような形で約束してしまったが、果たして達成できるのだろうか。

もちろん俺も全世界の人々を救えればいいとは思っているが、何をすればいいのかすら俺は分かっていない。

……とりあえずはアーメッドさんに恩を返して、キルティさんよりも強くなることを目標にして進んでいけば、いつかは世界の人を救えるようなビジョンも見えてくるはず。

「それで、ルインはいつグレゼスタを発つんだい?」

俺がおばあさんとの壮大な約束に頭を悩ませていると、そんなおばあさんから質問がきた。

いつグレゼスタを発つ……か。

グレゼスタを発つことを正式に決めたのもついさっきだし、正直な所まだ何も決めていないんだよな。

できれば早い方がいいんだと思うけど……俺は何も知らなすぎる。

とりあえずは、【青の同盟】さん探しから始まると思うけど、俺はグレゼスタ近郊以外の知識が全くなく、本当に右も左も分からない。

「まだ決めていないですが、なるべく早めに出立しようとは考えています」

「出発の日はまだ決まっていないんだね。グレゼスタを出てからの行先は決まっているのかい?」

「……いえ。実はまだどこに行こうかすらも——決めていないんです」

「くっくっく。何処に行くのかすらも決めていないのに、ワタシに報告しに来たのかい!」

「グレゼスタを発つことを決めたのが今日の朝でして、そのままの足で報告に来たので。一応、行きたい場所はあるので、出発はそこの場所が分かり次第って感じです」

「なるほどね。それじゃ、本当にすぐの出発ではあるんだね」

ここで初めて悲しそうな表情をしたおばあさん。

そんなおばあさんの表情を見て、俺も悲しくなってくる。

やはり別れというものは……寂しいな。

「そうですね。寂しいですが、無駄にグレゼスタに残ったとしても、寂しさが余計に増すだけだと思うので」

「……それもそうだね。ルイン、正式に出立の日が決まったら教えにくるんだよ。見送りに行くからね」

「はい。それは必ず伝えさせて頂きます」

最後は少ししんみりとした感じのまま、俺はおばあさんと別れ、【エルフの涙】を後にした。

おばあさんには、キルティさん以上にお世話になったからな。

初対面の時から優しくしてもらったし、色々と思うところが大きい。

後ろ髪ひかれる気持ちがあるが、バーンの様子も見に行きたいため、俺は【ビーハウス】に向かう。

おばあさんの話では命に別状はないと言っていたから、多分大丈夫だとは思うけど……心配なものは心配だ。

早くバーンの元気な顔を見たい。

【ビーハウス】に着き、俺は早速受付へと向かう。

受付にはこの間もいた、大家さんらしきおばさんがいて、俺のことに気が付くと部屋の奥から出てきてくれた。

「あれあれ。誰かと思ったら、ライラの彼氏さんだったよね? 今日はどうしたんだい?」

なにやら盛大な勘違いをしているようだが、訂正も面倒くさいためそのまま無視して話を進める。

「あの、ライラさんって部屋にいますか?」

「おっ、なんだい! ライラに会いに来たのかい? 流石、若いねぇ!」

茶化しが面倒くさく表情を歪めてしまうが、絶対にツッコまずにガン無視を決めて情報を聞き出す。

訂正を入れたら、これ以上に面倒くさいことになりそうだからな。

「あの……それで、ライラさんはいますでしょうか?」

「ここにはいるけど……寝泊りしている部屋にはいないだろうね。実は、ライラのパーティメンバーのバーンって奴が怪我をしちゃってさ。そのバーンって奴の介護にあたってるから、今はバーンの部屋にいると思うよ」

「そのバーンさんの部屋も、【ビーハウス】内にあるんですか?」

「ああ、もちろん。部屋番号教えてあげるから自分で行ってみてくれ」

そう言った受付のおばさんから、俺はバーンの部屋の部屋番号を教えてもらった。

情報がザルすぎるなぁ……なんて思いながらも、こうして教えてくれるのは助かる。

よし、おばさんに教えてもらった部屋番号の部屋に向かってみようか。

バーンの部屋は、ライラ達が寝泊りしている部屋の真反対に位置する場所にあった。

【ビーハウス】はかなり入り組んだ構造をしているため、同じ建物内なのにかなり遠く感じたな。

部屋番号をしっかりと確認してから、俺は扉をノックする。

しばらく待っていると、中からライラの声が返ってきた。

「はーい! 今開けるのでちょっと待ってくださいね! ……お待たせ——ってルインッ!? 来てくれたんだ!!」

扉を開けて、俺を見るなり驚いた声を上げたライラ。

そして、ライラが俺の名前を呼んだことでポルタとニーナも部屋の奥から顔を覗かせた。

「うん。俺の方はすっかり良くなったから、お見舞いに来たんだ。……バーンはいる?」

「もちろん!奥で寝っ転がってるよ! バーンの方も、既に傷口も塞がって一人で歩けるくらいには回復してる! とりあえず上がって、上がって!」

俺はライラの言葉に甘え、部屋の中へと入れてもらうことにした。