軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百十四話 攻防の難易度

その後、ニーナとバーンは激しい攻防を繰り返し、結果はバーンが有効打二発。

ニーナが有効打三発で、ニーナの勝利で試合は終わった。

最後の攻防は互いに二発当て合ったギリギリの状態で、バーンが連撃で勝負を決めに掛かったところに合わせ、ニーナがなんとかカウンターを当てたと言う……まさにどちらが勝ってもおかしくない試合展開だった。

後半はバーンの方が確実に押していたし、この試合はバーンに取っては悔しい負けだったと思う。

「はい、ニーナの勝ちっ! いやぁ、本当に良い試合だったね!」

「くっそぉ……。あと一歩だったんだけどな」

「……本当にいい試合でしたね。バーンさん、対戦ありがとうございました」

二人ががっしりと握手を交わしたところで、すぐに次の試合へと移ることとなった。

……今の試合を見る限りニーナには勝てる気がしないが、やれることはやろう。

「じゃあ二回戦はニーナとルインがじゃんけんをして、勝った方が決勝戦進出で、負けた方が私と試合でいい?」

「うん。それで大丈夫だよ」

「……ええ。それじゃあ、ルインさんじゃんけんしましょうか」

ニーナとじゃんけんをした結果、俺が負けてしまったため、ニーナが決勝戦進出。

そして、じゃんけんに負けた俺がライラと戦うことが決まった。

初戦の疲労度から考えても、良い結果だったんではないかと思う。

「よしっ! それじゃ二回戦は私とルインっ! ポルタ、審判お願いね!」

「分かりました。ライラさん、あっさり負けないでくださいね」

「ポルタには言われたくないけど……確かに護衛してる側が二連続で負けたら、沽券に関わるもんね。ルインには悪いけど、全力で行かせてもらうよ!」

「ああ、もちろん全力で来てほしい。手加減されたら意味がないからさ」

お互いに木剣を構えて、ライラと向き合う。

俺は先ほどと同じように上段の構えを取り、ライラはと言うと八相の構えを取った。

ライラの利点を生かす動きやすい構えだな。

「それでは第二回戦開始」

淡々としたポルタの合図で試合が始まった。

ライラのことだからいきなり突っ込んでくるかと思ったが……一歩も動かずに俺の動きをジッと見ている。

こっちの様子を伺う動きを取ってくるなら、ポルタの時と同様に初手から斬り下ろしを行ってもいいかもしれない。

先ほどと同じように初手の行動を決めた俺は、動かないライラ相手にゆっくりと近づいて行き、斬り下ろしを行えるタイミングを見計らう。

俺が気をつけなければいけないのは、ライラの動き出し。

瞬発力のあるライラはどんな体勢、そしてどんなタイミングからでもトップスピードで攻撃が出来るから細心の注意が必要だ。

動く気配がないからと言って、油断していると強烈な一撃を浴びせられてしまう。

上段の構えからではガードに移行するのに時間がかかるため、基本的には動き出しに合わせるように斬り下ろしを行い、出鼻を挫くことを頭に入れながら慎重に距離を詰めていく。

あと二歩も近づけば、俺の斬り下ろしの間合いに入ろうかと言う距離でも、不敵に笑っているだけでライラは動く気配がない。

警戒と集中のし過ぎで全身から汗が大量に流れているが、全集中をライラに向けたまま、俺は上段斬りまでが届く距離を心の中で測る。

ここまで来たのならポルタの時と同じように、上段からの斬り下ろしを完璧に決めてライラの度肝を抜こう。

間合いに踏み込んだ瞬間に、俺は上段からの斬り下ろしを全力で放つ。

さっきの脳天の感触がチラッと脳裏を過ぎったが、【ヒール】を掛けてくれるであろうニーナを信じて全力で振り下ろした。

そんな俺の渾身の一撃を前に、ライラは木剣を頭の前に突き出して、ガードを図ってきた。

木剣と木剣がぶつかった瞬間。

昨日の最後の一撃のように、金属音に近い音がコルネロ山に響き渡る。

俺の一撃を受け止めたライラはガードは行えたものの、威力を殺しきれずに少しだけ後ろへと吹っ飛んだ。

「――いったーい……。いや、ちょっと! 威力がおかしいって!」

「だから言ったじゃないですか! アンクルベアの一撃よりも速かったって!」

背後に転がったライラに追撃をかけようとしたのだが、ライラとポルタが会話を始めてしまったため、追撃をかけることを躊躇ってしまう。

その間に、ライラに体勢を立て直されてしまい、折角のチャンスがふいになってしまった。

「ルイン、試合止めちゃってごめん! 意図してなかったんだけど、驚きで声が出ちゃった」

「全然大丈夫。それよりも続きやろうよ」

「そうだね! 次は私から行くからねっ!」

その掛け声と共に、物凄い速度で距離を詰めてきたライラ。

動き出しが速い。即座に俺も対応しようと動くが、そんな俺をお構いなしに攻撃を仕掛けてくる。

構えた状態から、右からの斬り払い——っとこれはフェイクか!

で、本命は右上からの袈裟斬り――って……これもフェイク!?

一瞬の間に二回もフェイントを混ぜてきたライラの攻撃に惑わされ、一歩下がりながらの、手首を返した左からの小手が直撃した。

……いや、これは無理だ!

そのまま、一切攻撃の手を緩める気のないライラの連撃に俺もなんとか反応したものの、経験の差が如実に表れ、あっという間に有効打三発を浴びせられてしまった。

くっそ……。初手の上段からの斬り下ろしは完璧だったんだけどな。

狙い通りにライラの度肝を抜くことに成功したし、体勢も崩せたからチャンスが生まれていた。

たらればだけど、あそこで追撃を掛けれていれば、僅かながらに勝機はあったかもしれない。

……いいや。いやどちらにせよ、流石に実力差が開きすぎていたか。

ライラのフェイントには全く対応出来ていなかったし、攻防が繰り広げられるスピード感にも慣れていなさすぎた。

攻撃だけを考えていればいいのと、防御も考えなくていけないのとでは、単純な難易度が違う。

俺が今の試合を振り返り悔しがっていると、木剣を下ろしたライラが近づいてきた。

「ルイン、いい試合だったね! 最初の一撃は本気で驚いたよ!」

「いや、裏を返せば最初の一撃以降は、なにもさせて貰えなかったからさ。……でも、良い経験をさせてもらった! 本気で戦ってくれてありがとう!」

「いやいや、こんなことにお礼なんていらないって! それにしてもルインはまだまだ成長しそうだね! ……それでさ、今後もこの模擬戦試合やっていかない?」

「えっ……。今後もやってくれるなら俺としたらありがたい! みんなが迷惑じゃないならだけど」

「全然、迷惑じゃないよ! それじゃ決まりだね!」

俺のその言葉にポルタだけが嫌そうな表情を見せたが、三人は即了承してくれた。

よしっ。これでまた植物採取に行くメリットが増えたな。

ライラとのこの一戦だけでも俺の課題は明確に見えたし、その課題をグレゼスタに戻ったらキルティさんと一緒に克服。

そして、また一ヵ月後の模擬戦大会で試す。

これを繰り返して行けば、更に早い速度で成長していける。

俺は確信を持ってそう思うことが出来た。