軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

97 勉強会と休憩

食後勉強を再開した周達だったが、結局集中力が持たなかったらしい千歳がおやつ時に「疲れたー」とまた転がりだした。

「あまねー、ゲーム遊んでもいい?」

「遊ぶのは勝手だがお前の成績がどうなっても知らんぞ」

「やーん厳しい」

「気晴らしに遊ぶのはいいがお前本格的に遊びだすからな。自分で調整していいと思うなら遊べ」

俺は勉強続けるし、と参考書に載る問題を解きつつ返せば、微妙に頬を膨らませる千歳が視界の隅に映った。

元々勉強嫌いの千歳がそろそろ飽きてくるのは想定していたので、テレビボードに入れてあるゲーム機の側にはソフトやコントローラーを四人分揃えている。

そもそも人間の集中力は持続しないので、息抜き程度に収められるなら遊んでもいいとは思っていた。

周は一時間ごとに小休止を挟んでいるので、長く休憩を取らずとも問題はないし、勉強自体嫌いではないので割と長く続けられる。

「周つめたーい」

「勉強会の名目できたんだろ。まあ、別に遊んでていいから。コントローラーも四人分あるし、休憩がてらすればどうだ」

「じゃあお言葉に甘えるけどー。根詰めすぎても駄目だよ?」

「俺は休憩入れてるし」

「真面目ちゃんか。いや真面目だったけどね周。じゃあ遊ぶー。いっくんも遊ぶ?」

「じゃあ遊ぼうかな。遊び呆けるほどはしないけど」

樹も流石に二、三時間続けて勉強するのは疲れたらしく、ゲームに乗り気になっている。

「優太もやるか?」

「やろうかな。藤宮、いいか?」

「ん」

樹と千歳より真面目な門脇も小休止がてらゲームに興味を示したので、周は好きにしてくれと態度で示して再び参考書に視線を落とす。

ちなみに真昼は隣で静かに問題集を解いている。集中力が切れた気配もない。

「真昼は遊ばないのか」

「私はもう少し勉強しますよ」

「そっか」

周は今回真面目にやると誓っているからこそこんな風に止めないだけだが、真昼は素なので勤勉だなと感心しきりである。

努力を欠かさないから常に首位をキープしているのだろうが、その努力を欠かさないところが真昼のすごさであり偉いところだろう。

三人がいそいそと机を離れテレビの前に陣取り始めたのを見てから、三人を一旦頭から追い出してシャープペンシルを動かす。

紙を芯が引っ掻く音と消しゴムの擦れる音、そして隣の真昼の息づかいがやけにはっきりと聞こえる。

少し離れた位置で盛り上がる彼らの声をなんとなく聞きながら、教諭ごとの出題傾向を思い出しつつ出題されそうなものを重点的に解いていた。

一年時に引き続き受け持っている教諭も居るので、その教諭のテストは案外楽だったりする。性格や授業での取り上げ方でどの辺りから出すのかは去年一年でしっかりと覚えた。

今年から教えてもらっている教諭についてはこのテストや小テストでまた出題傾向を掴んでいくつもりだ。

千歳にも一応この辺りから出るというのは予想を付けて教えている。ヤマを張った形だが、そう外れる事はないので重点的に学習すれば赤点はまず免れるだろう。

「周くん、どうぞ」

黙々と問題を解いていたら、いつの間にか隣に居た筈の真昼が立っていて、周の手元にコーヒーが注がれたカップが置かれた。

小さな角砂糖一つとポーションミルク一つが入っているだろうそれに、頬を緩める。

「いつも通りのでいいですよね?」

「ん。さんきゅ」

半年は側に居るので、互いの食の嗜好は分かりきっている。

丁度飲みたかった時に持ってきてくれた真昼に感謝しつつ取っ手に指をかけたところで、コーヒー以外にも小さな皿が置かれている事に気付いた。

「これは?」

「小さな型で焼いたフィナンシェです。昨日焼いておいたんですよ、勉強には糖分が要るかと思って」

小皿にこんがりきつね色に焼き上がった一口サイズのフィナンシェが載っている。

ご丁寧に、手が汚れないようにピックが刺されていて、勉強の合間に摘まむ前提の大きさと用意なのだろう。

ゲームを楽しんでいる樹達の分もきっちり用意しているらしく、こちらは三人分、多めにトレイの上にある皿に載せられてピックが添えられている。

コーヒーも三人分用意されているが、こちらはお砂糖ミルクご自由にというスタイルでスティックシュガーとポーションミルクがトレイに載せられていた。

「千歳さん達もどうぞ」

微笑みながら彼らにそっと近付いて、向こうにある小さなテーブルにトレイを載せていた。

「わー! ありがと、まひるん!」

「おお、おやつだ。いい時間だったしな。ありがとう、椎名さん」

「いえいえ」

おやつタイムに喜ぶ三人を嬉しそうに眺めながら戻ってくる真昼に、周も自然と口許が緩んだ。

「……なんか、色々と準備させちまったな」

「いえ、私がしたくてした事ですので。勉強の合間にした事ですから、いい息抜きになりましたよ」

「お前って尽くすタイプだよな、ほんと」

「……尽くしたい人に尽くすだけですし」

小さな声で呟かれた言葉に、喉元に熱いものがせりあがってくる気がした。

それが吐き出される前に飲み込もうとコーヒーを流し込んだが、コーヒーが甘く感じて仕方ない。いつも通りの砂糖の量の筈であるが、かなり甘く感じる。

嫌ではない甘さに、そして真昼の言葉にどう反応していいのか分からず、周は自分を誤魔化すように参考書に視線を落とすしかなかった。