軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

81 天使様と例の男スタイル

「おはようございます、周くん」

普通人とのお出掛けというのは待ち合わせから始まるものだが、真昼との場合は彼女がうちにやってくる事から始まった。

隣に住んでいるし一々待ち合わせなんてしなくてもいいだろう、という合理的判断の下真昼が家にやって来た。

今日の真昼は、いつもの真昼とはやはり違った。

「おはよう。……今日は髪上げてるんだな」

「猫ちゃんと遊ぶのであれば邪魔になりますからね。変ですか?」

普段下ろして後ろに流している髪は編み込まれてお団子にまとめられている。料理の時にするようなものとは一線を画する手の込み具合が見てとれた。

「いや、似合ってるよ」

「それならよいのですけど……そ、その、……笑うなら笑ってくださいね」

「なんで急に」

「……浮かれてるって思ったでしょう」

きゅっと胸元を押さえている真昼は、いつもよりもほんのりと肌が見えている格好だ。

こう言うと露出しているかのように思えるが、襟ぐりが広めのシフォンブラウスなので、真っ白なデコルテが覗いているので露出があるように見えるだけなのだが。

袖部分は長いランタン袖で、側面にスリットがありレースで隠しつつほんのりと二の腕を透けて見えさせているのが妙に色っぽい。

もちろんインナーは着ているので危うく上から色々見える、という事はないのだが、何となくフェミニンさの中にも清楚な色気を感じてしまう。

ボトムの方は猫と遊ぶ事を考えたのかスキニーをはいているが、体型にぴったりと合ったものなので細いおみ足のラインが露になっていた。

手首には、周がプレゼントした花を模したブレスレットがつけられている。

大切につけると言っていたのを思い出して、自然と胸が熱くなった。

「思ってないよ。いつもより可愛いとは思ったけど」

「……そういう事をさらっと言えるのはご両親の教育の賜物なんでしょうね」

「まあ父さんには女性はおしゃれしていたら褒めるものだって言われてるし。……もちろんお世辞じゃないから安心しろ」

「……信じておきます」

ほんのりと顔を赤らめてバッグを抱き締める真昼に、周は苦笑して頭を撫でようとしてやめた。

流石に、苦労して仕上げていそうな髪を初っぱなから崩すのはいただけない。

真昼は頭を撫でられそうで撫でられなかった事に瞳をぱちくりとしていたが、髪を気遣ったのだと理解したらしくこちらも苦笑している。

ちょっぴり、周の右手を名残惜しそうに見ていたが。

「……周くん、最近私の頭撫でるのはまってませんか」

「んー、撫でやすいというか触ってて気持ちいいというか。嫌ならやめるけど」

「い、いやな訳ではないです。……その、わ、私も好きな時にもふもふしたいです」

「別にいいけど今は駄目だぞ。ワックスついてるから」

流石に真昼と出掛けるので、例の男フォームになっている。

といっても真昼ほど手間がかかっている訳ではなく、きっちり髪を整えているだけなのだが。

服装もデニムジャケットに白のVネック、黒のスリムパンツといったカジュアルな服装なので、極端におしゃれをしている訳ではない。

真昼の隣に並んだ時に見劣りしそうな気がしているのだが、こればかりは顔の問題もあるので仕方ないだろう。

「……していいのですか?」

「別に嫌がる事でもないし。今日は猫をもふもふで我慢しろ」

「い、今したい訳ではないので大丈夫です。……そっか、していいんだ……」

「俺がしてるんだからやり返されても当然っちゃ当然だし」

真昼に髪を触られるのは別に嫌いではない……というかむしろ心地いいので、拒む事はない。

そんな事で真昼が満足するなら是非して欲しいところである。

あっさり頷いた周に真昼は最初おろおろとしたものの、やがて嬉しそうに笑みを浮かべた。

「……じゃあ、今度もふもふするので、今日は猫ちゃんをたくさんもふもふしましょう」

「おう」

「行きましょっか」

「ん」

二人で同じ場所から出掛けるのも何だかくすぐったいな、と思いつつ、真昼を伴って家を出る。

彼女に合わせてゆったりと歩き出しつつ、そうだと思い出して彼女に手を差しのべる。

「お手をどうぞ」

茶化すようにそう口にすれば、真昼は淡く頬を色づかせつつ微笑んで周の手を握った。