軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

78 天使様の料理教室

「第一回まひるんによるお料理教室ー!」

数分間で出来上がる料理の番組のようなBGMでも流していそうなリズムと勢いで宣言した千歳に、周は面倒そうなのも隠そうとせず彼女をみやった。

無事ゴールデンウィークに突入して初日に真昼の料理教室が開催される事となったのだ。会場は周の家である。

理由は単純で真昼と千歳が集まりやすく周が入れる場所だからだ。

千歳宅は千歳の家族が居るので騒いだりは出来ないし、真昼の家は周が入るのを渋るため、周の家に落ち着いたのだ。

エプロンを身に着けた千歳が「いえー!」と一人で盛り上がっている。真昼は同じくエプロンを装着して千歳の隣で苦笑を浮かべていた。

「講師には椎名真昼さんをお招きしておりまーす!」

「招いてるんじゃなくてお前がこの家に招かれてるんだよ」

「そして毒味……ゲストには味には人一倍うるさい藤宮周さんをお招きしておりまーす」

「やかましいわ。あとここは俺の家だから」

「ノリ悪いなーもう」

朝っぱらから千歳のテンションに付いていけていないだけである。

現在の時刻は午前九時過ぎ。

昼食に合わせての料理教室という事でこんな時間帯に集合する事になったのだ。

別にいいのだが、割と寝起きなので千歳のテンションが辛い。

「……すみません、朝から……」

「いやいいよ。昼食作ってもらえるんだし。まあそれはそれとして千歳が変なもの入れないか見張っておいてくれ」

「信用ないなあ」

「お前バレンタインの前科忘れんなよ……?」

彼女が悪戯で仕込んだチョコの味は忘れない。

何も入っていないものはもちろん美味しかったのだが、はずれの飛び抜けた味は今でも思い出せるくらいには衝撃的だった。

それを普通に食べられると言った千歳だ、あまり味覚は信用出来ない。

「あはは、流石にあれはいたずらだから。普通に作れば大丈夫だよ。多分」

「その多分が心配なんだよ馬鹿。……頼むから俺が食べられるものにしてくれ」

「分かってるよう」

任せとけー、と腕まくりをして自信満々に言ってのけた千歳に一抹の不安を感じたが、真昼がなんとかしてくれるだろうと信じて周は見守る事にした。

真昼は人に食べさせるものなら妥協はしないし、教室という事できっちりとした料理を作る気満々だから大丈夫だろう。

千歳を伴って勝手知ったる我が家のキッチンに向かって本日のメニューと思わしき料理名を話している。

ちなみに今日はお昼にキッシュにサラダ、海老のビスク、余った身でソテーを作るそうだ。海老が食べたいという周の要望に応えてくれたらしい。

まあこれなら失敗する事はあまりない、はずなのだが、千歳がキッシュに変な具材を入れないか心配である。

「……なんかあらぬ疑いかけられてる気がする……」

疑念を視線に向けて飛ばしたのに気付いたのか不服げな表情を浮かべる千歳から目をそらしつつ、ソファにどっかりと座る。

正直、毒味役という事で呼ばれた……というか居る周なので、やる事がない。

真昼の手伝いくらいなら出来なくもないがそれは千歳の役目だし、そもそも周は座っていてくれという真昼の指示があるので、動けない。

なので、とても暇だった。

キッチンを見れば、エプロン姿の女子二人が仲良さそうに話しながら調理を開始していた。

二人ともベクトルは違えど美少女で、そんな二人がエプロンを着けて自分の家で料理しているなんて男からすれば垂涎なんだろうなあ、と他人事のように思いながらぼんやりと眺める。

あの悪戯猫は何かしないかな、と再度不安を抱きつつ、周は暇をもて余してゆっくりと目を閉じた。

どうせ数時間かかるので多少寝ていても構わないだろう。どうせ我が家だから咎める者は……真昼くらいしか居ない。

くぁ、と小さくあくびをして、周はソファーに体を預けた。