軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

70 大切にしたいという想い

真昼と一緒のクラスになったところで、周の生活に変わりはなかった。

学生らしく真面目に授業を受けて、樹と学食で食事を摂り、放課後は部活もないので帰る。真昼と関わる事はまずなかった。当然と言えば当然なのだが。

「お前、あれでいいのか?」

一年生の間と変わらず食堂で昼食をとっていると、前に座った樹が思い出したようにそう口にする。

ちなみに千歳もこの場に混じる事はあるが、今日は真昼と一緒に食べるらしい。すっかり真昼と公にも仲良くなったようで少し微笑ましさを覚えた。

「何がだよ」

「あの人とこのままで」

「別に学校でわざわざ話す必要ないだろ」

というか話すと間違いなく周りから「何だコイツ」のような視線を向けられるだろう。

野暮ったく大人しい分類に入る周が真昼と表だって関わるなんて、自殺行為だ。

「いや向こう話したそうにうずうずしてる気がするんだよなあ」

「……まあ、それは認める」

なるべく真昼は真昼で周を視界から外しているらしいが、時折こっちを見ては心なしかしょんぼりしていたりする。

人の視線がない時に限ってなのでまだいいのだが、千歳が代わりにこっちを見て「このヘタレ」といった旨の視線を寄越してくるので何故か居たたまれない。

「もうあの姿になるしか」

「やだよめんどくさいし。大してかっこよくなる訳でもないし」

それに、そもそも今は噂が収まったとはいえ、例の男スタイルは真昼と一緒に居る姿が目撃されているのだ。周=例の男と繋げられると、周の今後の学生生活に支障が出そうなくらいに騒がしくなるだろう。

「お前はどうしてそう……少なくともモテそうなんだけどな」

「どこが」

自分が多少髪型変えたところで急にモテるとは全く思えないが、樹は何故か確信があるようだった。

「お前性格は女の子が彼氏にしたい性格だぞ。口はちょっと悪くても割と素直だし、女の子は大切にするタイプ」

「……普通じゃねえか?」

「その普通が出来ない男子が多いというか、大切にしてほしい女の子の気持ちを汲んで大切に出来るタイプだろ。独りよがりじゃなくて、ちゃんと見て行動に移してそう」

「……なんでそこまで断言出来るんだ」

「じゃなきゃ、表面は愛想いいけど警戒心滅茶苦茶高そうなあの人がなつく訳がないだろ」

それを言われると否定出来ない。

ぐ、と唇を噛むと、ほれみた事かと樹が笑う。

「……つーか、ひとついいか?」

「何だよ」

「好きでもなければあんなにも大切にしないよなあ、と」

「うるせえ。悪いか」

もう態度で分かりきっているだろうし隠せないだろう。

ふて腐れ気味に返して頼んだラーメンをすすった。

樹はからかうというよりはやっぱりなあと納得したように頷いていて、感心した様子だった。

「俺としてはむしろ嬉しいというか。大切にしたい人が出来るっていい事だぞ」

「そうかよ」

「成就するといいなあ」

「……別に、俺としては、叶わなくてもいいよ。あいつが幸せになる相手なら、俺でなくても構わないし」

勿論その相手が自分であれと思うが、真昼が誰か知らない男を選んで幸せになるというのなら、それは祝福するべきだろう。

自分が幸せにしたいと思う反面、真昼が幸せになるのなら自分が気持ちを飲み込む事は厭わない。真昼は、幸せになるべきだ。恵まれなかった分、沢山の幸せを受けないと今までの努力に釣り合わないだろう。

「……へたれめ」

「やかましい。……そりゃ、俺だって、というか俺が幸せにしたいけどさあ」

「じゃあそれを本人に伝えればいいだろ」

「言えるか馬鹿」

まだ異性として好かれているのか確定していないのに告白するほど浅慮ではない。

そもそも真昼は交際にはかなり慎重派であるし、まずお試しやお遊びで付き合ったり生半可な思いで交際する事はないだろう。

真昼の両親の話を聞いた限りでは、確実に真昼は簡単に頷く訳がない。互いに身を固める覚悟と想いがないとお付き合いには発展しないと思うので、容易に思いなんて伝えられる筈がないのだ。

「……ほんっと、奥手というか」

「うるさい。いいんだよ、俺は俺であいつに好きになってもらえるようにするから」

「……こう、第三者から全部言えたらいいんだけどさあ」

「なんだよ」

「別に。……まあ、頑張れ。俺は応援してる」

何故か呆れたような声で応援されたので、周は眉をひそめつつもありがたく受け取っておいた。