軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

62 天使様の自爆

「……つっかれた……」

樹と千歳がお泊まりを終了して、二人でソファに座り込む。

一応三日目の今日で周宅にお泊まりは終了で、あと一日二日は千歳の家に泊まるらしい。数日なら千歳の両親も歓迎するだろう(毎日居てくれてもいいらしいが、流石に遠慮したらしい)。

真昼手製の昼ご飯を食べて「邪魔したな、後はお二人で仲良く」とにこにことした笑顔で言い残して去っていった。都合のいい妄想をされている気がしたが、突っ込むのも面倒なので放置した。

「真昼は疲れてないか?」

「……疲れて、というか大変でした。でも楽しかったですよ」

「そうか」

少なくとも周が知り合ってから今まで真昼が友人を家に招いたような素振りはなかったので、千歳がきっかけになってくれたのはよかったと思う。

千歳とも周が知らないところで会ったり時折遊んでいるようなので、親しい友人が出来たなら良いことだろう。

「……まあ、その、急に写真を撮り出した事にびっくりしましたけど……」

「あ、ああ、あれか」

写真、と聞いて昨日の清楚ながら艶っぽい姿を思い出して、自然と頬が赤くなる。

別に大きな露出があった訳ではないのだが、やはりネグリジェは薄着なので柔らかな起伏の形が浮き彫りになっていたりと非常に目の毒だった。むしろ露出がない方が色っぽさが増していた。

男のサガでうっかり保存してフォルダに入れてしまったものの、めちゃくちゃ罪悪感がある。

「昨日は『かわいー!』と言いながらたくさん撮ってて何を送ったのか知らないんですけど、何を送られたのですか? 押されて許可は出しましたけど、あんまり恥ずかしい画像だと困るのですが……」

千歳は送った写真を見せていないようだ。

恐らくベストショットをこっちに送ったのだろうが、本人はあんな表情をしていた事に、それを撮られた事に気付いているのだろうか。

流石に、本人にあの画像を見せたらどんな反応がくるのか予想出来ない。

決して恥ずかしい格好をしている訳でも服が乱れている訳でもないのだが、なんというかあの画像は破壊力が高すぎる。

「え、ええと、だな、くまを膝に載せた画像だな」

「……く、くまさんをですか……?」

「大切にしてくれてるんだなあ、と」

嘘は言っていない。

ただ、罪悪感がひどいので、フォルダの奥底に封印しようと思う。消さないのは微妙な男心ゆえである。

くま、と聞いた真昼は、何となく思い出したらしく小さく微笑んだ。

「……大切にするって言いましたし、大切なものですから」

慈しむような、懐かしむような、そんな柔らかくて温かな眼差しと微笑みに、息がつまった。

普段の天使の笑みとは違う、あどけなさと包み込むような慈愛が入り交じった微笑みは、思わず見とれてしまうほどに繊細で美しい。

ただ、美しいだけではなく、思わず抱き締めたくなるようないじらしさをふくんでいた。

「……っあー、うん、その、なんだ。結構気に入ってるんだな」

「そりゃあもちろん、周くんが選んでくれたものですから」

若干どもりながらも言葉を紡げば、健気な事を微笑みながら返してくれる。

「心配しなくても、大切にしてますよ。毎日手入れして撫でてますし、抱き締めて一緒に寝て……今のなし、なかった事にしてください」

手入れして撫でて、まではよかったのだ。

ただそこから続いたのは、耳を疑うような可愛らしい行為だった。

抱き締めて一緒に寝る。

あの真昼が、くまのぬいぐるみを抱えて寝る。

真昼の寝顔を見た事があるが、まさに天使のような寝顔だった。

あの寝顔で、ぬいぐるみを愛おしそうに抱き締めて寝ている。美少女が、くまのぬいぐるみと一緒に寝る。

想像すると、ものすごく可愛らしく眺めていたくなるような光景が脳裏に広がって、顔が赤くなる。

真昼は真昼で自分で言った事に赤面しており、涙目でこちらの腕にすがりついてくる。

「わ、忘れてください」

「い、いや、無理だし」

「私が困りますっ」

どうやら知られたのがかなり恥ずかしかったのか、耳まで真っ赤に染めた真昼は涙にほんのり彩られた瞳で周を見上げていた。

その表情の方が破壊力が高いのだが、真昼本人は知るよしもないだろう。

「そ、そんなに恥ずかしいか? 別に困らないだろ」

「……こ、子供みたいじゃないですか、ぬいぐるみと一緒に寝るって」

「い、いや、想像したらすごく可愛かったから全然アリだと思う」

「……想像しないでください」

今度こそ真昼は恥ずかしくて周を直視出来なくなったらしく、お気に入りのクッションに顔を埋めて黙り込んでしまった。

その姿すら可愛いと思ってしまう自分が色々と不味いとは分かっていたが、つい、愛でたくなった。

手を伸ばして頭を撫でられたならよかったのだが、流石に今は逆効果だろうし本人も許さないだろう。

疼いた手を抑えつつ真昼を眺めていれば、しばらくしてクッションからちらりと瞳を覗かせる。

散々恥じらったせいでかなりの涙目に真っ赤な顔だったが、元気なのかほんのりと恨みがましげな眼差しを投げられた。

「……周くんも恥ずかしい事を暴露すべきです。私ばかり不公平です」

「ええ……?」

自爆しただけのように思えるが、確かに周にも責任がない、とは言えない。

ただ、恥ずかしい事を暴露しろといっても、大して思い当たる事がなかった。

「教えてくれないなら赤澤さんにメッセージ送って聞きます」

「いつの間に樹と連絡先の交換を……」

「実は千歳さんから教えてもらってやりとりしました。昨日だってしゃし、……やっぱり何でもないです……もういいです……」

途中で言葉を切って、またクッションに顔を埋めていた。

よく分からないが自爆したらしい真昼に、周は困惑するしかなかった。