軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27 クリスマスの過ごし方

「ねえ周、周んちでクリパやっちゃだめ?」

「駄目」

唐突な提案をきっぱりと断れば、分かりやすく千歳の頬が膨らんだ。

すこし先に控えた聖夜……家族と離れている上ぼっちである周には特に縁のないイベントではあるが、どうやら千歳と樹は周と一緒に過ごすつもりらしく、こうして誘いをかけてきたのだろう。

わざわざ昼休みにこうして周と樹の教室に押し掛けて提案してきた千歳は、周の即答に頬を膨らませている。

「いーじゃん周どうせ一人で……あっ、もしかして彼女」

「出来てないし居ない」

「ならいいじゃん。それとも嫌だった?」

「まあ周が嫌ならオレらは別にいいけどさ」

彼らなりに友達を気遣ってくれたのだろう。

あと、のんびりいちゃつく場所を求めていたというのもあるだろうが。

そんな申し訳なさそうな顔をされても悪い気分になるし、嫌という訳ではない。

渋るのは、私的な場で彼らの尋常じゃない激しいスキンシップを見せられるのが恥ずかしいのと、真昼に色々と説明する手間がかかるからだ。

極論言えば、真昼に先んじて彼らが帰るまでこちらにこないように言っておいて、普段真昼が居る痕跡を消しておけばいいのである。

「嫌じゃないけどさ……分かった分かった。二十四日だろ? どうせ夜前には解散だろうしそのあとお前ら二人でいちゃついて熱を抜いてこい。くれぐれもうちで過度にいちゃいちゃすんなよ」

まあそこまで拒む事でもないか、と承諾すると、千歳の顔がにっこりと笑みを浮かべる。

「仕方ないなあ、それで妥協しよう」

「何様だ」

口ではちょっぴり小生意気な事を言ってるので遠慮なく頬をつねると「いひゃーい。いっくーん、あまねがいじめへくるー」と若干呂律が回っていない言葉で助けを求めていた。

「こーら周、ちぃをいじめるなよ? 俺だけが頬をつねっていいんだからな」

「はいはい俺の代わりにしっかりとつねっておいてくれ」

「任された」

「任されたらだめなのにー!」

これもいちゃつく口実になるだろうなあと思いながら樹につねるのを譲れば、案の定二人はうにうにと頬をつねったりしながら戯れている。

つねられている千歳が実に嬉しそうにつねられているので、周はそれを見ながら肩を竦めた。

「……俺帰っていい?」

帰るも何もここが自分の教室なのだが、当てられる前に彼らから少し距離を取りたかった。

「だめー。ちゃんと予定立てなきゃだめでしょ。ケーキとかご飯の手配しなきゃね!」

「俺は作れんぞ」

さすがに周はクリスマス用のご飯なんて作れっこない。

真昼なら恐らく普通に作れるだろうが、彼女の手を借りる訳にはいかないだろう。

ひらりと手を振って無理だと主張した周に、何故か千歳はこちらを凝視していた。

「なんだよ」

「作れないのに、そんなに健康そうになったんだなーって」

「どうでもいいだろ別に」

「まあまあちぃ、周にも事情があるんだろう」

「えー、いっくんも知りたがってたじゃん」

「俺は後で教えてもらうから」

「教えない」

勝手に約束すんな、とジロりと睨めば、それもわざとだったらしく樹が声を上げて笑っている。

しつこくは食い下がらないのが彼のよいところではあるのだが、たまに思い出したようにつついてくるのはいただけないところでもある。

「まったく。……まあ、ご飯は出前とかでいいんじゃないか。ケーキは予約しとかないといけないけどさ」

周への詮索は置いておき、現実的な提案を周からも出す。

当然と言えば当然だが、ケーキを自前で用意するのは無理だし、食事も用意はできない。なら出来合いの物を用意するのが流れだろう。

「あ、じゃあピザがいー! ケーキはいつもの店で予約しとくね、まだ受け付けてたし!」

「そこはチキンじゃないのかー」

「いっくんもピザの方が好きじゃん」

「まあなー。さすがちぃ、分かってる」

「えへへー」

勝手にピザにされているが、周としてもピザは嫌いではないしパーティーらしさが出ていいのではないかと思った。

この調子なら、ご飯は周や樹がよく頼む店の宅配ピザに決定するであろう。

ピザと聞いてふと、真昼を思い出す。

はむはむと小動物のように食べていた真昼。妙に愛らしいと思ってしまったのは、普段お上品に食べているところを見ていたからだろう。

ケーキも真昼に先日食べさせたな、と思い出していると、自然と頬がうっすらと熱を帯びてきた気がする。

(もうあんな事はすまい)

食べさせ合うなんて恥ずかしい事、もう出来ないだろう。樹と千歳のような仲むつまじいカップルでもあるまいし、機会も訪れない筈だ。

「……周、どうしたの?」

「あ、いやなんでもない。じゃあケーキの予約はお前に頼むわ」

一瞬思い出してしまってぼーっとしていた周を訝った千歳が心配そうにこちらを覗きこんでくるので、周は慌てて頭からあの事を追い出して平常通りの顔をする。

「はーい! ピザも予約しとこうねー!」

テンションの上がった千歳の声を聞きながら、周は家に帰ったら真昼にクリスマスの予定について聞く事に決めた。