軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

240 放課後の別行動

「ん、今日は千歳と寄り道するんだな」

放課後、いつものように真昼と帰ろうとすれば、申し訳なさそうな声で断られたので、周は軽く笑って受け入れる。

そもそも縛るつもりはないし絶対に一緒でなければならない理由はない。むしろ何故こちらを気にしているのか分からない。

「その、帰るのは遅くなるかもしれません。志保子さんは居ますから問題はないと思いますが」

「何で母さん」

まだ両親は地元に帰っていない。明日帰る予定なので今日はこの辺りでウロウロすると聞いていた。

「え、志保子さんが千歳さんとお話したいと……」

「余計な事を吹き込まれる予感しかしない」

「あはは、そんなまさか……」

「ありえるんだよ母さんなら。その時は真昼が止めてくれよ」

といっても真昼も聞きたがって止めない、もしくは志保子の勢いがよすぎて止められない可能性の方が大きいのも理解しているので、あまり期待はしていない。

せめて黒歴史の暴露だけは止めてくれ、という切実な願いを込めて真昼を見つめれば、別に熱っぽく見つめたつもりはなかったが真昼が頬を染めて視線をそらす。

そんな真昼に、帰宅の準備を終えたらしい千歳がからからと笑い声を上げながらひょこひょこ近寄ってきた。

「はいはいなにやってんのそこの夫婦」

「お前が母さんから変な事を吹き込まれないか案じてるんだよ」

「とうとう夫婦を否定しなくなったね……というか見つめ合って何してるかと思えば。そんな心配しなくても」

「母さんは無自覚に笑顔で色々暴露するタイプだぞ」

「ほうほう、つまりすねに傷があると」

「そういうのはないが、子供の頃を持ち出されると嫌だろ。お前だって中学時代の事言われたくないと思うが」

「う、あれはまあ……」

千歳とは高校から交友を持ったが、樹や門脇から聞いたところ千歳は今とは真逆のタイプだったらしい。

それを千歳は黒歴史に近いとあまり言いたがらないので、余計な事を聞き出そうものなら分かってるな、といった眼差しを向ければ肩をすくめて「わかったわかった」と頷いてくれた。

「まあ、それはそれとして志保子さんとはじっくり話したい事があるから、周の事以外で話すね」

「何を話すつもりなんだ」

「それは女のコの秘密ってやつでーす。という訳で奥さん借りますので」

にこにこと笑って真昼の腕に自分の腕を絡ませた千歳に、真昼は恥じらうように瞳を伏せつつも嬉しそうに千歳に寄り添う。

真昼がそれでいいならいいが、一体何の話をするのか微妙に不安が残る。

「あれ、今日はお二人さん一緒に帰らないの?」

出来れば変な事を話さないでくれ、と今はここに居ない母親に念を送りつつ二人が仲睦まじくくっついているのを見ていたら、ひょっこりと顔を覗かせる女子が一人。

「木戸か。二人が寄り道するって」

「そっかそっか。じゃあ椎名さん、旦那さん借りていい?」

「へっ、」

「藤宮くんも予定がないならこの後付き合ってほしいんだけど。あ、そういう付き合いではないから安心してね!」

「そ、そこは心配してませんけど……」

木戸が誘うという事は、恐らくバイト関連の事なのだろう。

仮に急にバイトが決まったとして、契約書云々や保護者の許可などを考えればむしろ親が居る今がいい機会なのかもしれない。

「藤宮くんはどう? 空いてる?」

「まあ、特に予定はないけど」

「よかったー。丁度空いてる日だし、二人っていつも一緒で割り込みにくいからさあ」

「いつも一緒って訳じゃ。家でも常にくっついてはいないよ」

「同じ空間に居るでしょその言い方だと。家に居るのが当たり前、って言い方からしてもういちゃいちゃしてますー」

普通は恋人同士だろうがそこまで一緒に居ない、と言われて、何も反論出来ずに口を噤めば木戸はくすくすと楽しそうに笑みを浮かべている。

「まあ、それだけ仲がいいし大切だからこそ、なんだよね、藤宮くん?」

「……そうだよ悪いか」

「ううん、見ていてあったかくなるからいいと思う。いやー椎名さんも愛されてるねー」

愛されているの言葉にはにかむ真昼に周囲が被弾しているが、真昼には気付いた様子がない。木戸は若干わざとしている気がしなくもないが、彼女には多大な借りを作ってしまうので文句も言えない。

ただ、バイトの理由は言うなよ、という視線を向ければにっこりと親指を立てられたので、周はため息をつくに留めておいた。