軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

147 両親の帰宅後

「あら真昼ちゃん顔真っ赤だけどどうしたの」

「な、何でもないです……」

職種も仕事場も違うというのに揃って仕事から帰ってきた両親が、真昼を見て不思議そうに首を傾げる。

真昼はリビングのソファに座って顔を赤らめていた。理由は、周が真昼にふとした時にキスしたり手を握ったりしていたからだろう。

「周、もしかして」

「誓って手出しはしてない」

ただ抱き締めたり軽い触れ合いをした程度だ。真昼のキャパシティがオーバーしたのは、真昼が結局のところ初心だからに過ぎない。

周も人の事は言えないが、立ち直るのだけは早いので今はもう平静に戻っている。

「手出し『は』ね。いちゃつくって言ってたものねえ」

「健全にいちゃついてた、これで問題ないだろ」

「すっかり開き直っちゃって」

「うるさい」

「周ばっかりずるいわ。私も真昼ちゃんといちゃいちゃしたいのに」

「真昼は俺のだからやだ」

「あらまあ」

一度志保子に真昼を渡すと当分の間構われ続けて周ももどかしいし真昼は真昼で喜んでも疲れそうなので、真昼を志保子に独占させるのは喜ばしくない。

真昼は「俺の……」と小さく反芻してまた頬を赤らめていて、そんな様子が志保子のにまにまを強くしていた。

白い頬が染まりっぱなしな真昼を眺めつつ志保子の含んだような笑みをスルーしていると、話を聞いていた修斗もにこやかな笑みを浮かべる。

「じゃあ、家族として仲良くするのはどうだろうか」

「え?」

「ほら、みんなでおでかけしたいって椎名さんが言ったんだろう?」

両親には真昼がみんなでお出かけしたいと言った旨を伝えてはいたが、今持ち出されるとは思っていなかったらしくカラメル色の瞳がぱちぱちと瞬いている。

「次の休みもまだ周と椎名さんは居るんだから、おでかけしようか」

「そうね! 折角だしみんなでおでかけしたいもの! ……嫌かしら?」

「そ、そんな事は!」

「じゃあ決まりね。ふふ、どこに行こうかしら」

語尾を弾ませて修斗と「どこがいいかしら」と仲睦まじげに話している志保子に真昼は恐れ多そうに体を縮めている。

おそらく、自分が願った事とはいえ本当に一緒にお出かけする事に申し訳なさを覚えているのであろう。

(……母さんも父さんも、真昼が好きで出かけようと言ってくれてるんだけどな)

周が進言したところで、彼らは自分が気に入らない相手と過ごすなんて事はしない。

そもそもこの家に入れてもらっている時点で非常に気に入られているという事だし、彼らから出かけたいと言うくらいなのだから不安に思う事は無意味なのだ。

「覚悟しとけよ。母さん達、真昼を連れ回すぞ」

「いえ、ありがたいですし嬉しいです。こういう風にみんなでお出かけする事なかったですし……」

子供の頃を思い出したのか、寂寥をほんのりと滲ませた儚い笑みを控えめに浮かべて瞳を伏せた真昼に、志保子は変わらない笑顔のままソファに座る真昼の隣、つまり周の反対側に腰を下ろした。

そのまま真昼を抱き締めて、頭を撫でる。

「真昼ちゃんは最早うちの家族なんだから好きに甘えてくれていいのよ?」

「寧ろ息子より可愛がってるからな」

「あら妬いてるのかしら」

「いーや。真昼が喜ぶんだから別に」

志保子にぎゅっと抱き締められて可愛がられている真昼は、恥ずかしそうにしつつも先程の雰囲気を消して恥ずかしそうに瞳を伏せている。

こういうところは素直でない真昼が喜んでいる事の証左である。

真昼が喜んでいるし、将来的には真昼も藤宮を名乗ってもらいたいと思っている身としては、寧ろ両親に気に入られるのは大歓迎だ。多少スキンシップが激しいのは、複雑であるが。

「大人になったわねえ」

「馬鹿にしてるのか」

「いえそんな事ないのよ? 好きな人の幸せを願える男に育ってよかったなと思ってるだけだわ」

「何当たり前の事を……」

「ふふ、そういう人間は少ないものよ。さすが私達の子供ねえ」

「はいはい」

誰だって好ましい人間が幸せになる事が嫌なんて人は居ないだろう。屈託なく笑ってくれるのが一番だ。

願うなら、その幸せになる、を幸せにするのは自分でありたい、というくらいだ。

志保子に撫でられながら照れ臭そうに身を縮める真昼を眺めて、周は穏やかに口許を緩めた。