軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

130 天使様と水辺の戯れ

溺れる事を不安がっていた真昼だったが、周と一緒だからか水遊び程度なら気にしないでいられるようだった。

近くのセンターから浮き輪をレンタルして真昼に渡すと、真昼は微妙に拗ねた表情で「子供扱いされてる気がします……」とぼやいていたが、それでも安全を取ったのか素直に浮き輪に体を預けている。

体から力を抜いて水にぷかりと浮かぶ真昼は、リラックスした表情で周を見上げていた。

一応周は真昼の様子を見るために側で待機しているのだが、この調子なら遊ぶ事には問題ないだろう。

「気持ちいいですね」

周の横を浮き輪でふよふよとたゆたいながら微笑んだ真昼に、周も縁にもたれつつ「そうだな」と頷く。

周は泳ぐのは好きだが水辺ではしゃぐ行為は別にそこまで好きではないので、こうしてゆったりとした時間を過ごせるのは悪くない。これが千歳や樹と一緒なら、やれビーチボールだウォータースライダーだと言い出すだろう。

それもそれで悪くないが、こうして穏やかな時間を過ごすのが好きだった。

「それなら溺れないだろうし、思う存分水を楽しむといいぞ」

「……非常に恥ずかしいのですけど。この歳で浮き輪ですよ」

「普通に大人の女性でも使ってるから。ほら、あそことか浮き輪に座ってるし」

周が指を差したのは、水着姿の女性が浮き輪の穴に腰を落として浮かんでいる所だ。

大人はそのまま浮き輪を水泳の補助具として使うよりは、ああして寛ぐために使っている人の方が多いだろう。

浮き輪に体を通した真昼は周の示す方向を見て、いそいそと一度陸に上がって浮き輪に腰を落とす。

ぷかりと浮き輪に体ごと支えてもらった真昼は、ぱちりと瞬いてご満悦そうな笑みを浮かべた。どうやら気に入ったらしい。

周のラッシュガードの裾から伸びる乳白色の素足が、ぱしゃりと水を持ち上げるように蹴る。

ほっそりとしつつもほどよく柔らかさを帯びたおみ足で、つい脚線美に見とれてしまえば真昼に水をかけられる。

顎の辺りにかかって真昼を見れば、くすくすと真昼が楽しそうに屈託のない笑顔を浮かべている。

視線の先が分かっていたからなのか、ただかけたかったからなのかは分からないが……とりあえず軽くやり返すように真昼に軽く水をかけてやると、より笑みが深まった。

「やりましたね。えいっ」

もしかしたら、構って欲しかったのかもしれない。

周に水をかけて攻撃してくる真昼に、周も小さく笑ってやり返す。

といっても、真昼は浮き輪に乗って身動きが取れないので困らない程度にかけてやるくらいだが。

ぱしゃり、と掌で軽く真昼のお腹辺りにかけてやると、真昼がまたやり返す。こちらもかなり手加減しているのか、かかるのは大体胸の辺りだ。

水に浸かって慣れてはきたがやはりひんやりとした感覚に目を細め、また真昼にかけ直す。

あまりやり過ぎると真昼がひっくり返りそうなのでかなり手を緩めていたが、真昼はご機嫌にぱしゃぱしゃと脚で水面を撫でるように蹴っている。

そんな事をしていたら、真昼がバランスを崩した。

「お前なあ」

浮き輪ごと転倒させるのはまずいので真昼を支えて寄りかからせると、真昼がぎゅっと周にしがみついてくる。

さすがに水に落ちかけたのは怖かったらしい。

「あんまり暴れると落ちるのは見えてただろ」

「う……すみません」

「俺が居たからいいけどさあ」

「……周くんと一緒じゃなきゃ、あんなにはしゃがないです」

小さく囁かれた言葉に、周はつい真昼を見つめた。

真昼は、周の背中に手を回して胸に顔を埋めたまま続ける。

「……周くんと一緒だから、見えるもの全部キラキラしてますし、周くんと一緒だから楽しいんです。……それに、周くんなら、助けてくれるって思ったから」

「……そういう可愛い事を言われると、こっちも、その、困るというか」

とことん周を好きだというのが伝わってくる囁きに、周の顔が自然と赤くなる。

どうしてこうも一々可愛いのかと唸りたくなった。

(……ほんとに好きなんだよなあ)

もちろん分かりきっていた事ではあるのだが、ここまで好意を向けてもらっていると感じるだけで胸が熱くなるし、愛おしさが溢れてくる。

これが家なら頭を撫で回してずっと離さなかったのだが、流石に公共の場なのでやり過ぎもよくない。

なので、一度抱き締め「……帰ってから可愛がる」と囁いて離せば、真昼は水に浸かっているのに茹でたタコのように顔を赤くした。

「……それは本望ですけど」

ただ、そんな呟きが聞こえて、結局は周が撃沈する羽目になった。