軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

057 【霊薬の庭園】

剣技や熟練度にある程度の見通しがついた翌日。

俺はレベルアップのため、さっそくダンジョン攻略に向かうことにした。

とはいえ、入れるダンジョンには制限がある。

ダンジョン実習を終えて幾つかのダンジョンは解放されたものの、一年生は総じて冒険者でいうところのEランク扱いであり、そのランクまでしか挑戦を許可されていないからだ。

ちなみに次の中間試験で好成績を残せば、それに応じた難易度が解禁されたりもする。

そして、現在の俺のレベルは30。

『不死人形』特訓によるパラメータ上昇を含めて考えれば、既にDランクを超えてCランクの域に到達しており、Eランク相手に経験値を稼ぐことは難しい。

では、そんな俺が攻略すべきダンジョンはないのか――と聞かれれば、決してそういうことではなかった。

表向きは低ランクダンジョンであっても、ギミックをクリアすれば高難易度の隠しエリアに到達できる場所は幾つも存在する。

先日の【 新星(しんせい) の迷宮】がいい例だろう。

そして今日、俺がやってきたのはそんなダンジョンの一つ。

――Eランクダンジョン【 霊薬(れいやく) の 庭園(ていえん) 】だった。

「そういや、ダンジョンに入るのはダンジョン実習以来か。魔力枯渇寸前からの休養や交流戦なんかがあったから仕方ないにしろ、かなり久々な気がするな」

それはさておき、俺は入口に設置されたセンサーに魔導学生証をかざす。

すると、その直後。

『魔導学生証を確認しました。アレン・クロードの入場を許可します』

そんなシステム音が鳴り響き、入り口に設置されたゲートがガチャリと開く。

それを見て俺は、ふぅと小さく深呼吸した。

「よし、行くか」

そうして中に一歩足を踏み入れた瞬間、俺は思わず息を呑んだ。

【駆け出しの迷宮】や【新星の迷宮】のような無機質な洞窟型ダンジョンとは打って変わり、そこには美しい草花が咲き乱れる庭園が広がっていた。

壁を覆い尽くすツタの緑に、所々で咲く色鮮やかな花々。

まるで自然の中にいるような錯覚に陥るほどの光景に、つい見とれてしまう。

(とはいえ、これ以上感傷に浸っている暇はないな)

俺はさっそく、ゲーム時代の知識を頼りに進んでいった。

「――はあッ!」

「キィィ!?」

「バルゥゥ!?」

途中、幾度となく魔物との遭遇があった。

巨大な甲虫の魔物・ホーンビートルや、有毒の粘液を吐き出す植物系魔物・バブルフラワーなど、虫系や植物系の敵が主体だ。

とはいえどれもレベルは10~15程度。

今の俺からすれば、正面から戦う価値もないような相手ばかりだった。

一蹴できるものは倒し、そうでないものは無視して駆け抜け、俺はすぐに目的地へとたどり着いた。

「……ここだな」

そ(・) こ(・) に一歩足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。

これまでの美しい庭園とは打って変わり、そこは殺風景な正方形の空間。

中央には怪しげな台座が鎮座し、四面の壁の中心はそれぞれ、赤、黄、紫、青色の不気味な輝きを放っていた。

あまりの異質さに、普通なら即座に引き返したくなるような光景だ。

(でも、ここが目的地だからな)

俺は足を緩めることなく、さらに前へと進む。

「それじゃ、とっととギミックを解除するとするか」

知識さえあれば、対処は簡単。

まず、各壁はそれぞれに対応する状態異常――火傷、麻痺、毒、睡眠を誘発するオーラを放っている。

そしてその壁の前に立つと、自動的に該当する状態異常にかかってしまうのだ。

等級は低いため、すぐにどうこうなるものではないが、放置すれば確実にジリ貧となる仕組みである。

最初に俺は紫の壁に向かい、その前に立つ。

すると予想通り、軽い毒状態となった。

「ここで普通なら、ディスペルで自分の状態異常を解除したいところなんだけど……それじゃダメなんだよな」

異空庫の指輪から、事前に購入しておいた解毒ポーションを取り出す。

そして俺は、それを飲むのではなく壁に向かって振りかけた。

すると――

ゴゥッという轟音と共に、その部分のオーラが消滅。

同時に、自分の状態異常も回復される。

「よし、この調子だ。進めていくぞ」

その後も赤、黄、青の順番に回っていき、火傷用ポーション、麻痺用ポーション、睡眠用ポーションを順に使用。

そして最後の壁にポーションを使った、その直後。

ゴゴゴゴゴ

中央の台座が大きく軋みながらズレ、地下へと続く隠し通路が姿を現した。

「成功だな」

その通路を見た俺はにっと笑みを浮かべた。

ここから先が、待望の隠しエリア【魔薬師の実験室】である。

難易度はCランク。

とはいえ、この隠しエリアの特徴と俺のジョブは相性がよく、ソロでも十分に攻略が可能だ。

「さて、ここからが本番だ」

そう呟いて、俺は颯爽と階段を降りていった。