軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

040 皇女と再会

ダンジョン内実習にて、俺がワーライガーを討伐してから一週間後。

彼(・) 女(・) は、突如として教室に現れた。

輝くような銀髪を後ろで結い、鋭い蒼色の瞳を持ち、雪のように白い肌を持つ美しい少女。

――リリアナ・フォン・アイスフェルト。

アイスフェルト皇国の第二皇女であり、『ダンジョン・アカデミア』に登場するメインヒロインの一人だ。

彼女は物語開始前に昏睡状態となり、目覚めるまでに一年を要する。

その結果、二年次編から登場する――それが 原作(ゲーム) の流れだった。

しかし今はまだ一年編の前期と、序盤も序盤。

こんな早くにリリアナが登場したのは、彼女が昏睡するはずだった バフォール戦(イベント) を、たまたま居合わせた俺が破壊してしまったからだろう。

にしたって、他にも疑問点は幾つかあるが……

そう考えていると、教室中がざわざわと騒ぎ出す。

「お、おい、今、アイスフェルト皇国の第二皇女って言ったよな?」

「そういや噂で聞いたことがある。本当なら隣国の貴人が首席で入学する予定だったが、諸事情で中断になったって」

「それで改めて留学しに来たってわけか……あれ? だったら何で、AクラスじゃなくてEクラスなんだ?」

クラスメイト達の疑問はもっとも。

というか俺も、全く同じことを考えていた。

本来であれば、首席でAクラスに入学するはずだったリリアナが、なぜ落ちこぼれクラスであるEクラスに来たのか。

一応、『ダンアカ』でも彼女はEクラスに所属することになるのだが、それは一年間の昏睡状態により出遅れ気味だったことと、既に幾つもの成果を残し周囲から注目を集めていたグレイに近付くためという大きな理由があった。

まあ、他にも細々とした理由はあったのだが……それは置いておくとして、ここはゲームではなく現実。

リリアナのレベルは最低でも40以上であり、一年編の前期においては次席のユーリ・シュテルクストをも凌ぐトップクラスの実力者。

(なのに、どうして……)

俺を含めて困惑するクラスの中、肩甲骨まで伸びる白髪と、闇夜のように深い黒瞳が特徴的な女性――Eクラス担任のリオンが口を開く。

「大雑把な事情を知っている者もいるようだが、改めて説明する。リリアナは本来であれば主席合格を果たしAクラスに所属する予定だが、訳あってそれを延期。その後、アイスフェルト皇帝陛下や学園長などとの協議の元、AクラスではなくEクラスに所属する運びとなった。以上」

答えになっていない説明だが、それでも教室中が再び騒がしくなる。

皇帝陛下や学園長が協議を行い、かつその上で伏せなければならないだけの理由があるだけで、ことの重大さがよく分かったのだろう。

少なくとも自分たちが踏み込んでいい領域ではない、と。

生徒たちの反応を一通り見た後、リオンは続けていく。

「あわせて、彼女についても説明しておこう。ローズ」

「はい」

リオンから名前を呼ばれると、先ほどからリリアナの横に控えていたメイド服の少女、ローズが前に出る。

……あの日、リリアナと共に俺が救った相手だ。

「彼女はローズ・ユライミ、リリアナの専属従者だ。これまでこのクラスとは縁がなかったため知らない者もいるかもしれないが、このアカデミーでは一部の貴族に従者をつけることが許されている。その制度を利用しているほとんどがAクラスだがな。彼女は授業に直接参加する訳ではないが、同じ教室で生活することになるから把握しておけ」

「ローズ・ユライミと申します。リリアナ殿下の専属従者を務めさせていただいております。以後、お見知りおきを」

そう言ってローズは一礼した後――

「……(にこり)」

「っ」

先ほどのリリアナと同様、俺に視線を向けてにこりと微笑んだ。

それを受け、俺はまたぎこちない笑みを浮かべるしかできなかった。

その後、リリアナとローズは最後列に並ぶ形で席に着く。

クラス中の興味がそちらに向くも、リオンは説明すべきことは全て終えたと言わんばかりに授業を進めていった。

昼休みになった。

すると、教室中に妙な雰囲気が流れ始める。

(これは……様子を窺ってるのか)

突然クラスメイトになった隣国のお姫様(それもとびきり美少女)に話しかけたいが、失礼があってはいけない。

一応、アカデミーでは貴族も平民も平等というのが校訓だが、それを文字通りに受け取れる者はそういない。

どう対処するのが最善なのか、全員が推し量っているような形だ。

カタッ。

するとその直後、リリアナが優雅な動きと共に立ち上がる。

全員の注目を集める中、彼女はゆったりとした動きで歩き……

ピタリと、俺の前で止まった。

「お、おい、アレンの前で止まったぞ?」

「どういうことだ?」

「アイツ、何か失礼を働いたんじゃ……!」

そんな風に周囲が困惑する中、リリアナは気にする素振りも見せず、柔らかい笑みを浮かべて桜色の唇を開き――

「お久しぶりです、アレン様。お話ししたいことがたくさんありまして……もしよろしければ少々、お時間をいただけないでしょうか?」

――クラス中の面前でそう告げた。

直後、教室中から困惑の声が上がる。

俺とリリアナが一体どういう関係なのか分からず、多くの言葉が飛び交っている様子だった。

前の席に座るユイナが、心配そうな表情でこちらを見つめている。

ルクシア? 寝坊してるからいないよ。

とまあ周囲の反応はさておき、注目の的になってしまった張本人である俺はというと、

(……はあ。やっぱり、 こ(・) う(・) な(・) る(・) よな)

自分が蒔いてしまった種とはいえ……これまで慎重に注目を集めず、なんとか正常に進めてきたゲームシナリオが根底から破綻する予感に、思わず内心でため息を零すのだった。