軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

episode7

朝になった。心地よい陽が窓から差し込み、その陽気さから目が覚め、部屋を見渡してみても、やはり陛下が来た形跡はなかった。

悲しんでも意味が無いのですぐに着替えを始める。クローゼットの中には公爵家から持ってきた衣類しか無い。

皇妃になった今、皇族用の金庫からお金を取り出し使えることには使えるが、そんなことをするつもりがなかった。

どうせそんなに買っても着られないのだし、公爵家から持ってきた服で十分だと元々考えていたのだ。

そしてふと思う。

公爵家でも付けられなかったが、皇妃にも専属侍女はいないのだろうか? と。

リーティアの疑問は正しかった。普通皇妃には侍女が付けられ、身の周りの世話をする。

皇妃が嫁ぐ前に側近達は陛下に提言したが、

「はっ、あいつは公爵家でも専属は付いていなかったからいらないだろう」

と 一蹴(いっしゅう) したのだ。

側近達は困惑した。流石にこれはまずいのでは無いかと。しかし彼らはこの件に対して皇妃殿下が何か言ってきたら、その時考えようと頭から消し去ったのだ。

彼らはリーティアが絶対に何か言ってくると思っていた。しかし彼らは知らなかったのだ。

リーティアは侍女が居ないのが当たり前だと思い、疑問を持ちながらも、その事について口を開くことは一切無いのを。

そんなことでリーティアはまたしても専属侍女無しで生活することとなる。

例え付いていたとしても、侍女たちの間で敵認定されているリーティアを排除しようと、侍女たちは様々な嫌がらせを施すことになるのだから付かなくて逆によかったとも言える。

着替えを終わらせた私はお腹が空いてることに気づくが、朝食が運び込まれる様子はない。

仕方が無いのでたまたま廊下を通り掛かった侍女に朝食が欲しいと告げる。

一瞬彼女は怪訝な顔をしたが、流石皇宮に仕えてる者だけあって、すぐに表情を消し去りお持ちしますと言った。

しかし、運ばれてきたのは白いパンだけだった。

「これだけ……?」

公爵家でもこんなに質素な食事は出てこなかった。しかもここは皇宮だ。食材に困っているはずがない。

いつもなら聞き返さないが、驚きすぎて言葉が出てしまった。

侍女は告げる。

「ええ。皇妃殿下には大変申し訳ございませんが、既に今日の分の朝食に使う材料は全て使われておりまして、これしか残っていませんでした」

全く心のこもってない謝罪。

嘘だ。絶対食材は余っている。ただ単に私のことが嫌いだからこんな嫌がらせをしているのだ。

陛下に進言したらいいのだろうか……と考えたところで否定する。

あの陛下が私のことを信じてくれるはずがない。どうせまた冷たい声色で嘘つき呼ばわりされるだけだ。

悲しいことに彼女が考えている事は当たっている。

彼は全くリーティアの言ったことを信じない。皇宮で仕えてる人間とリーティアだったら前者を信じるだろう。

「そうなのね、ありがとう。これだけ頂くわ」

私は反論するのを諦めた。

そして庭園でお茶していいか尋ねるつもりだったのを思い出し、出ていこうとする侍女を慌てて引き止める。

「待って、 貴方に尋ねたいことがあるの。庭園でお茶するのはダメかしら?」

侍女は気だるげに振り返り、返答した。

「お茶でございますか? 茶菓子、紅茶はこちらでご用意出来ませんがそれでもいいなら大丈夫ですよ」

「あら、大丈夫よ。茶菓子は私が用意するから」

「そうですか。それではどうぞご自由に」

却下されると思っていたがお茶は大丈夫なようだ。

だが、茶菓子、紅茶を用意できないと真っ向から言われるくらい嫌われているのだと思うと悲しい。

それらは少しずつ心に棘が刺さっていく。ズキンズキンと心が痛かった。

そしてそれは消えることはなく、心を重くしていきしまいには彼女を追い詰めることとなるのだ。

◇◇◇

庭園を散策する。

色とりどりの花々がとても美しい。すぐに自分の中でお気に入りの場所となった。

そして一つの場所で足が止まる。場所は薔薇園。

公爵家では咲いてなかった、白、黄、青の薔薇。近くに腰掛ける場所があったのでそこに座り、自室から持ってきた茶器を隣に置く。

紅茶をティーカップに注ぎ、薔薇を鑑賞しながら飲んだ。

そうしていると少しだけリラックスできた。やはり皇宮内で生活することに少なからず緊張していたようだ。

一息吐きながら独り言が溢れ出す。

「やっぱりここでも皆から嫌われているのね。何を私がしたのかしら……何もしていないのに。それに明日からは忙しくなって……ちゃんと私は執務を全てこなせるかしら? それにリーナ様と陛下の睦まじい姿も近くで見ないといけない。耐えられるかしら……」

呟いているうちにだんだん俯いていたようだ。視界には落ちた薔薇の花弁と地面が広がっていた。

「何回も何回も同じこと言って悲しんで、不安がって、私はめんどくさい人ね」

歪んだ笑顔を浮かべながら自嘲めく。そうして地面を見つめているとポタッと水滴が落ちてきた。

慌てて空を見上げると、雲ひとつない快晴だ。

だけど地面は濡れている。

そこで気づいた。自分は泣いているのだと。

気づいてしまったら止まらない。溢れ出てくる涙が地面を濡らしていく。

人が通らなかったことが幸いだった。私は夜の帳が降りるまでそこで涙を零していたのだ。