軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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勢いのまま飛び出してきてしまったが、よく考えると、身元も不確かな男と二人旅など、何かされても文句は言えないのではと、頭が冷えて冷静になってから気づいた。

だけどあの町に戻る選択肢は私にはない。たとえなにかあっても女一人旅よりはましだろうと腹をくくった。

だが、ジローさんとの旅は思いのほか快適だった。

地理に詳しいのか、できるだけ宿があるような町や村を経由してくれたので、かなりの距離を移動したが、野宿する機会はほとんどなかった。

やむを得ず野宿した時も、安全そうな場所を見つけて、夜はほとんど見張りをしてくれたし、野営になれているのか、森から食材を調達してきて調理してくれたりして、無計画に飛び出してきてしまったというのに、ちゃんと食事をとらせてくれた。

元傭兵というのは伊達ではなかったらしい。

そして、もし道中気に入った土地があればそこに決めてもいいし、その場合はそこで仕事と住む場所がみつかるまで付き合うと言ってくれた。

私はラウの店で仕事をしていたので、たまに町の外にでるときのために身分を示す札を持っていた。

他の町へ入る時も、場所によっては店の証明書以外に個人の身分証を求められる場合がある。町からあまり出ることの無い人は必要としないものだし、鋳物で作るこの札を発行するのに、保証金含め結構な支払いが必要になるので、商人以外はあまり取得していない。だが、私は仕事のためにラウのおかあさんに作ってもらっていた。

町をでるなら必要になるかもしれないと、念の為持ってきただけだったが、ジローさんと移動を続けるなかで、この札は非常に重要なものだったと知った。

「ディアさん身分証の札を持ってんだ~これあるなら、村でなくとも大きい町でも住民になれるけど、どうする?てっきり身分証もなく出奔してくるんだと思ってたから、住めるのは村しかないと思って、俺の知ってる村に連れて行く予定だったんだけどなー」

「ごめんなさい、どういう意味ですか?札があると無いとでなにが変わるんですか?」

「あーそりゃ知らないか。国の法で『町』の基準があるんだよね。あのねえ、余所者が『町』の住民になるのは意外と難しいんだよ。結婚とか養子とか以外で住民登録をするには、その町で五年以上働かないと申請書も出せないし、もしくは保証金として大金を納めるかしないとできないんだ。

『町』は仕事も多いぶん、人も多くて犯罪も増えるから、審査が厳しいんだよね。でも、その札があれば、元居た町で身分が保証されているから、すぐに住民申請ができるんだよ。だから、わざわざ村にすまなくても、ディアさんは気に入った町を選べるよ」

「そうなんですか。知らなかった……あの、『町』と『村』では違うんですか?」

「うん、村は別に誰でも住めるよ。町には壁があって、入るときに門番のところで申請が必要だろ?でも村では門番なんていないし、出入り自由だからね。『村』だと国に納める税も安いけど、その代わり国の助けはほとんどない。『町』になると、国から軍事憲兵と裁判官が派遣されて、軍警察署と裁判所が設置されるんだ。だから治安も維持されているし、町に住むメリットは多いよ。

ディアさんどうする?町の方が仕事も娯楽も多いし、若い男も多いから、新しい出会いがあるかもしれないよ?いくつか町を巡ってみて、いいとこがあったらそこに決める?」

ジローさんは村出身で、元傭兵という身分を使ってこれまであちこちの土地を転々としていたらしい。

定住したことがないから札を持っていないそうだ。うちの町でも、うちの馬丁として働いていたが、余所者枠なので余計に給金も低かったらしい。

私は話を聞いて、自分が本当に考え無しで飛び出してきてしまったんだなと、恥ずかしく思いつつ、自分がどうしたいのか、黙ったままじっくりと考えた。

「……私、これからの人生は心穏やかに過ごしたいんです。人が多いところには住みたくありません。誰かと深くかかわることに疲れたんです。ただ、静かに暮らしたい」

できることなら人がほとんどいない田舎に引きこもりたい、と私が言うと、ジローさんはゲラゲラと笑った。

「田舎に引きこもりたいの?田舎なんてジジイババアばっかで出会いなんかないよ?店もないし可愛い服も買えないし想像以上に不便だよ?ホントにいいの~?」

「治安のいい安全な土地ならどれだけ田舎でも構わないです。どこか知っているところで紹介してもらえませんか?」

「そーゆーことなら、とっておきのド田舎を紹介しようかな。限界集落の名に恥じない、超絶寂れた村にお連れするよ~後悔しないでね!」

北のほうにある田舎の村に連れて行く、とジローさんは言った。

予定よりも旅が長くなって、ジローさんと一緒に過ごす時間も増えた。

宿が空いておらず同じ部屋になったこともあったが、『夫婦って設定萌えるよね』などと軽口をきくものの、着替えの時は部屋を出てくれるし、寝る時もベッドがひとつなら床でいいといって決して一緒に寝たりしなかった。

彼が本当に用心棒としての役目を果たそうとしてくれているのだと気付いた私は、宿代など、旅にかかる費用は男の分も払わせてほしいと申し出た。だが、『目的地についてからでいい』といって受け取ってくれなかった。