軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61.タイダルの傭兵達(8)

感動の再会の後、せっかくなので、ヨダとビーツとマーカスを薬草店へと招待して、5人で荷馬車に揺られて店まで帰ってきた。

帰り道にエスカリオットが肉まんを所望する。

「シャイナ、肉まんを買って帰ろう」

「え?肉まんですか?」

「もう昼だ」

「そうですけど、先週も肉まんにしたような、」

及び腰になるシャイナ。

シャイナとて肉まんは好きだが、エスカリオットは6つも食べるので地味に高くつくのだ。

それに今回はヨダ達の分も買わない訳にはいかない。

えーと、一人6つとして、……に、にじゅうよんこ。

プラス自分の分。

それだけのお金を使うなら結構いいランチが食べられると思う。

「…………」

「…………」

エスカリオットの無言の圧。

「……くうっ、分かりましたよ、買って帰りましょう」

美しい黒豹に甘いシャイナだ。

「隊長、シャイナ殿は隊長の主人でしょう?態度が偉そう過ぎませんか?」

ビーツが口を挟む。

ヨダと同じくビーツも完全にシャイナへの態度が変わっている。

背後ではヨダとマーカスが「うん、うん、偉そうだ」と頷く。

「……」

「隊長?聞いてますか?」

「……」

「あーもー、そういう所変わりやがりませんね。すぐ黙る。自分の言いたい事だけ言ってすぐ黙る」

「……」

という訳で、大量の肉まんを買って薬草店へと戻る。

扉を開けると、しょんぼりとカウンターに座る花屋の店主がいた。

「花屋のご主人?!」

「よ、よかったあ、帰ってきた」

驚くシャイナに花屋の店主は丸っこい顔をくしゃりとさせた。

「なぜ、花屋さんがここに?」と困惑していると、「留守を頼まれてねえ」と言い、シャイナが拐われたのを知らせてくれた経緯と、エスカリオットに留守を頼まれたことが説明される。

「ご主人の花屋は?」

「あはは、放ったらかしなんだ」

「えええ!」

シャイナは平謝りして、エスカリオットとヨダ達から肉まんを一つずつ供出させて花屋の店主へと包んだ。

今度、たくさん花を買いに行くと約束して花屋を送り出す。

それから薬草店を閉店にしてしまい、5人で2階のダイニングにて肉まんパーティーをした。

肉まんを食べるためにシャイナは人型へと戻る。

肉まんの為だと言うと、エスカリオットはあっさり狼のシャイナを離してくれた。

これからは、どうしても人型に戻りたい時は肉まんを使おう。

肉まんをはふはふ食べながら、思い出話や近況を語り合う。シャイナがエスカリオットを買った経緯や里帰りしてヘイブンに会った話もした。

ビーツがエスカリオットの義手をカッコいいと褒めたので、黒龍の骨で出来た義手についても、シャイナは鼻高々でその性能を自慢した。

「ところで、マーカスさんの義足はどういうものですか?」

義手の話が出たのでマーカスの義足について聞いてみるシャイナ。

マーカスの右足は膝から下が義足だ。ズボンの裾からは擦りきれた木片が覗いているだけで、おそらく長さを合わせただけの木の義足を支えとしてくっ付けているのだろうと予想された。

「これは、隊長のみたいにいいもんではないよ」

マーカスが苦笑いで予想通りにただの木片だと言うので、シャイナはエスカリオットのように魔石対応のものにして随意に動かせるようにしましょうか、と提案してみた。

先ほどエスカリオットの義手を購入して、結合した事を話した所だ。

黒龍の義手ほどの奮発は出来ないが、最低限の魔石対応の義足くらいなら無理なく買ってあげられると思う。義足の結合はシャイナがやればいいし、義足本体の代金は出世払いでいいですよ、と伝える。

マーカスは一瞬、とても嬉しそうになったが黙りこんだ。ヨダとビーツと小声で相談した後、「せめて義足の代金は稼ぐから、それからにしてくれ」と返された。

「義足本体の金くらいなら、3人で何とかなると思う。結合の処置だけ甘えてもよいだろうか」

マーカスが遠慮がちに言う。

体と結合して動かせるような義足は、本体も高値だが、それを実際に結合させる処置もかなり高くつく。

特に結合の処置は、行える魔法使いが少なく法外な値段を取られる事が多いのだ。

マーカスも一度は魔石対応の動かせる義足について考えたが、処置にかなりの金額をふっかけられて諦めたらしい。

「もちろん、いいですよ」

シャイナが二つ返事で了承すると顔を輝かせた。

ヨダとビーツとマーカスはこれからの予定を話し合い、ハン国でしばらく暮らすと言いだした。

「隊長が闘技場から売られたと聞いて、その解放だけしか考えてなかったからなあ」

「そうっすね。上手く行けば、ヘイブンとこでも行こうかって言ってたんですよねえ」

「だから当分は借りた洋館で暮らして、義足代を稼ぐよ」

「あてはあるんですか?」

「俺とビーツはそれなりに腕も立つから、ギルドで仕事を探すよ。マーカスは足がこれだから難しいが、まあ何くれと見つかるだろう」

「ギルドなら顔が利きます。手伝いますよ」

「傭兵団でよければ口利きしよう、団長の知り合いがいる」

ヨダの答えにシャイナが言い、エスカリオットもかぶせてくる。

「そっか、マックスさんって団長ですよね!」

シャイナは、ぽむ、と手を打つ。

強力なコネではないか。

マックスなら何とかしてくれそうだ。

とりあえず、3人が洋館にて落ち着いたらギルドと傭兵団に掛け合ってみる事になる。

そうして、シャイナとエスカリオットは、また近い内に相談に来る、と言って去って行くヨダとビーツとマーカスの3人を見送った。

朝からバタバタして大変だったが、良い一日になった。

肉まんパーティーの間、エスカリオットはほとんど話さず聞き役だったが、これはいつもの事でその顔はのんびりと穏やかだった。

そしてすぐに薬草店を出ていく訳でもなさそうだ。考えてみれば、エスカリオットがここを去る決断をしたとしても、今日、明日で去ったりはしないだろう。

エスカリオットはシャイナに懐いているらしいし、まずは相談してくれると思う。

雇い主として、いつ相談されてもいいように心の準備をしつつ、相談しやすい空気を作っておけばいい。

よかった、よかった、とシャイナは安心しきって、エスカリオットの向かいで肉まん後のお茶をすする。

シャイナはこの時、町外れの洋館でエスカリオットが自分に対して怒っていた事をすっかり忘れていたのだ。

この後、それを思い知ることになる。