軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

02

母は絶対に、結婚できるタイプではなかったと。会話を成立させられないのに結婚なんてできるわけもなし。子供を産めたことすら奇跡的。と、言わざるを得ない。

「取られたくないので隠すしかありません」

「だから、僕とはこっそり?」

「はい。友達か友達かなんてどうでもいいんですよ。前に友達でもない子の家に押しかけて、友達じゃないのにまた悪質な噂が増えて遠巻きにされました。このままでは婚姻は絶望的です。父は兄たちがいればよさそうなので、私のことは殆ど考えてません」

厄介な身内。隠して過ごすのが賢い綱渡り。綱渡りなところがポイントね。

「じゃあ、内緒にし続けよう」

「はい」

「ふふ。楽しみだ。母親に内緒の関係ってドキドキするね?」

「え?ああ、ええ、はい、まあ?」

彼が楽しそうでこちらも楽しいけれど、母に干渉されないのならばどちらでもいい。こうして、バレないように会い続ける。最近、母の機嫌が悪い。

「ねえ」

家にいるときに話しかけられると嫌な予感がする。

「あなた、いつになれば友人を作るの?私の娘なのだからすぐにできるでしょう?」

「あなたのせいで友達なんてできない」

「はあ?私のせいにしないで。あなたが話すのが下手だからでしょ。人のせいにする前に話しかけなさい」

遠回しでもなく、直接的に友達を作れと言い出した。また人の交友関係を辿って自分が話せる人を得ようとしている。

まるで獲物を盗もうとする獣みたいだ。人のものを横取りするだけで向こうは何一つ失わない。

自分のことを棚に上げて会話が下手とか、話しかけられないなどとよくも言えたものだ。ムッと眉をひそめる。

「自分が先に作ればいいんじゃないのでは?」

「私はたくさんいるから必要ないわ」

え?え?本気で言ってる?少し先に暮らしている近所の人たちからも嫌われているのに?

近くにいるからとよく行くけど居留守を使われるくらい嫌がられてるのに?

なのに、友達が沢山?どこに?

もしかしてだけど、嫌われていることに気づいてないから今まで話しかけた人たちを全員、友だちカウントしてたり?

「こ、怖い、どうしよう」

母親が引き止めるのを聞かずに、さっさと自室に戻った。後を追ってきてきてドアを叩いたり名前を呼ばれたりしたが使用人が「奥様、おやめください」と止めた。

「誰に向かって言っているの?私が雇い主なのよ!話しかけないで!」

「そんなんだから、友だちいないのよ!」

「な」

叫んで、母親を追い払う。本当のことを言われて怯んだらしい。扉越しだから言えた。やっと母親の友達作れコールから逃れられたのでホッとする。

使用人に八つ当たりして肩書きを威張る女が実の母親なんて嫌で嫌で仕方ない。貴族夫人だからなんだと言うのだろうか。

なにか仕事をしているとかならばまだしも、なにもしてないのだ。ラディシャでさえ社交界で情報を得て父と兄の手紙に載せる。けれど、母は会話と話術が苦手を通り越しているゆえに、嫌になったのか全く参加していない。

つまり、なんにも貴族として働いていないのだ。高位貴族なわけではないが情報を得るために参加するのも本来は母の仕事なのだけれど。

行く気配もない。友人から聞くこともできないし、なにもしてないことがもう親としてなんの役目もしてない。奪うだけ。盗賊、泥棒、犯罪者。

平民ならとっくに村八分になってたので、貴族だから自分も毎日ご飯が美味しく食べれるってものだろう。羨ましいほど何にもしない人。それなのに、娘のものをむしり取ることに生きがいを感じるモンスター。恐ろしい。

あと、どれくらいになにを奪われるのかと震えが止まらなくなる。どうして娘だけなのか。息子だっているのに。

目の前にいないから?男だから?長男だから?背が高いから?筋肉質だから?答えが総じて、全てだろうな。乾いた笑いをこぼす。

部屋から見える木々がこの家の醜さを覆い隠しているものの、臭い物に蓋をしている部分もある。こうして日夜親から何もかも奪われても誰も何もしてくれない。

「お父様にもお兄様にも手紙を送っているのに……返事も来ない」

あちこち出かけるにしても、一つ文章を書くくらい、できると思ったんだけど。執事には屋敷の仕事への指示書が届いていることは知っている。

そこにラディシャに配慮する記載も、娘は息災かなどという人間らしい言葉もない。無機質なもの。父の執務室にあったものを読んだことがあるから、知っている。

ということは、父は娘に息子にかけるほどの情も心も気持ちも家族愛もないと、ありありとわかるので。むしろこちらも、きっぱり切り替えられるってものだ。

もう待たない。兄も手紙を寄越さないので、妹をいないと扱うみたいだ。こちらも兄なんていない、と思うだけ。

母を止めることもしない父なんていらない。勝手に生きていく。ラディシャが動かないと母は永遠に娘から何もかも奪い続ける。

「お待たせしました」

「いや、こっちも今来たところだ」

「すみません。最近母が友だちを作れとうるさくて。もしかしたら私に誰か付けて、探る可能性がありまして。会うのを控えようと言いに来たんです」

「前例があるんだっけ?」

「はい。雇って報告させて、その家に行くんです」

「行動力すごいね。先ぶれ無しだろう?あり得ないけど許されてきたんだね」

「父は常に外に飛び回っていて、前に言われた時にお前が母親を見ておけ……的な感じですごく遠回しに言われたような、違うような言い方で話したことがあってですね。父にも全く期待できないです」

そうそう、父にもなんとなくそういう貴族的な言い回しで言われたと記憶が蘇る。