軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

01

本の中では欲しがりの姉や妹が主人公のものを欲しがって、主人公は冷遇されながらも精神的な問題が強い姉妹を撃退する物語がある。そういう悪を倒す的なものだ。

それは自分だって読むくらい好き。シリーズものだったら、買うし続刊も買う。買う……のだが。

「お母様!やめてくださいと何度言えばいいの?勝手に取っていかないでって言いましたよね?」

怒鳴るのはこの家の長女ラディシャ。怒鳴っている相手は母親のはずの女性。マーインは何食わぬ顔で、ちっとも悪く思ってない様子を見せる。

「ちょっと借りただけじゃない。ケチくさいことを言わないで。それに買えばいいのよ」

「は?買ったのに、二冊目を、ですか?いちいちあなたが借りたかどうか確認して、買いに行かないといけないなんて、理不尽ではないですか!いい加減にしてほしいですっ」

「うるさいわね。貴族の子女が叫ばないで。品がないのよ。親に向かって子どもが反抗するなんて、悪い人と関わってるのではなくて?」

「く……!」

母はいつもそうだ。正論を言おうと内容を全く関係ないところへ押しやってズラす。そうして、ずっとずっとラディシャのものを勝手にとっては勝手に自分のものにする悪質な悪癖があった。

家の中に裁けない盗人がいるようなものである。

「返してくださいね。ちゃんと借りたことはしっかりメモしてありますので!返した、借りた覚えはない、紛失したとなどと言う理由は受け付けませんので」

母はその言葉でさえも歪に笑い「子どものくせに親に借りたものをネチネチ言うなんて。産んでもらったのに親不孝ものよ。きっと婚約者もできないわね」と言い返してくる。

ほら、やっぱり関係ない。

「返してくださいね。もし紛失したら弁償してもらいますから」

悔しくて言い逃げした。聞いていたら再び関係ないことを言い出すから。

「子どもだから、親だから。もう、うんざり!」

婚約者が見つからない理由を知るので、余計に憎くなる。

「いつになったら、この地獄から逃げられるの?」

母の悪癖はものだけでは済まなかった。小さな頃からそれは発揮されており、家族旅行に行った時に買ったお土産を勝手に一人だけが全て食べたりなんて、まだマシな方。

友達ができたら親の家に行き、人の友達を自分の友達にしようとするのだ。わざわざラディシャの名前を出すので相手も子どもの友達の母親だからと無碍にできない。そのまま家に上がると自分の話だけを、し始める。

好き勝手に、それはもうそれはもう。話に順番もなく、相手の話は聞かずに。相手が話しても同調せずに私はね、という。

それで小さい頃から今に至るまで友達を無くし続けた結果、今は内緒の友達を残して全員と絶縁された。

出会って話しかけたらなぜか避けられて、真実を知って友達が避ける理由を知ったのは数年前。誰も母が訪問することを教えてくれず自然消滅していたから気付くのが遅れた。

『ごめんなさい。あなたの母親がくるの。うちの母親に付き合うのをやめろと言われてもう話しができそうにないわ』

確かに他の人たちから顔を見られてヒソヒソされたり、ニヤニヤされたりすることはあったがハッキリ言われたことがなかったので裏でなにが行われていたのか本当に知らなかった。

ここでさらに最悪なのは母は一人で家に向かっていたので誰も把握してなかったのだ。

貴族の親が一人で行動できたのは貸し馬車の存在があり、誰でも利用できるものがあったから。だからこそ、一人で他の家に行けたのだ。本当に全く知らずに周りからおかしな親がいる娘として嘲笑われていた。

初めて実体を知ったときはショックで友達を作ることはやめた。作っても壊されるものならば作る意味はない。

友達ができたら誰にも言わないことを決めて、友達はできた?と猫撫で声で聞いてくる母親の包囲網を潜り抜ける。

けれど貴族らしくお金を使い探偵や調査を頼んだのか、いつのまにか把握するのだ。恐ろしさに何度も挫けそうになる。

父はどうしているか?仕事で兄二人とと忙しそうに、領地経営をしている。なので、あちこち動き回り全く会ってすらいない。

「僕が思うに、君の母は友達を作るのが下手なんだと思う」

「下手?あんな壊滅的なコミュニケーションを下手で済ませされても」

腕を組んで辟易となる。異世界人がたまに落ちてきたり、転生者と名乗るものが時たま現れることがあって言葉もそれに合わせて、うまく取り入られてきた世界の小国の一角。

カフェの一つでお互い向かい合わせに座る男女が、いつもの話をする。

「でも、下手と言ってひとまとめにすると、今までの行動は説明がつく」

「私の友達で友達を作ろうとして自爆してるってことでしょ。私もろとも」

「うん。自力じゃ無理だからやりやすい方法で、自分の友達を作ろうとしたんだ」

彼の説明は納得いくものの、されている側としては許すことができない。おかげで友達がなかなかできない。なんてレべルではないのだ。この歳まで婚約者一人、恋人一人出来ていない。

「貴族として壊滅的なんです」

とはいえ、貴族だからこそ生きていけているとも言える。これが平民ならば生きていけなかった。平民はコミュニティ、語彙力、発言力、会話。そういうのがよくないとうまく生きるのが難しいらしい。

結婚できたのだって結構いい爵位だから、父とお見合いをして結婚に至ったとかなんとか。興味がなくてあんまり聞いたことはない。けれど、これだけはわかる。