軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2.お土産交換

フーテンさんが月齢表を超えて、頁が精霊の話に入る。おっ、真剣みが増したぞ。

カララーン、と何処からかウィンドチャイムみたいな音が鳴る。

「あ~エドたちだと思う、猫ちゃんドア開けたげて~」

「猫使いが荒いにゃん~」

猫は本を覗きつつ話してたから、まだ座ってなかったので許します。ドアの方へ行って、そのまま開ければいいのかな?

「おう、来たぞー、て、ラン?」

「一足先にお邪魔してるにゃんよ~」

「おー、ようこそようこそ。俺んちやないけど」

エドさんとヤマビコさんだ。おや、女子二人は別行動?

「リーたちは報告してから来るってよ。フーテンは?」

「本読んでるにゃ」

「破産心配された本か」

「プライバシー!」

「ランがNPCからも金遣いの荒さを心配されてるってフーテンが衝撃を受けてたぞ」

そこは猫も衝撃だ。

たしかに本屋さん、猫の散財に厳しめなんだけど、まさか他の人に相談するほど猫のこと心配してくれてるなんて……。もしかして猫、かなり愛されてるのでは?

しかし破産するほど本に注ぎ込んでないのよ猫だって!? 猫の信用なさすぎでは?

「それにしたってオシャレ本棚まで買ってるフーテンさんには絶対言われたくないにゃん~!」

「せやなあ。あ、そういやラン、また農家に恩を売ったんやって?」

「にゃん??」

農家に恩? どちらの農家さん?

この前の畑レイドの話なら、猫はお世話になった方で、恩なんて覚えがないんだけど。

「ノーカが啓示受けたんやろ? レイド計画盛り上がってるらしいで」

あっ。待って、さっきのは農家だったの、ノーカだったのどっちの発音だったの!?

でもノーカさんの啓示なら話はわかった。

「あれは猫が踏みたいけど踏めなかったところを 丸投げ(おまかせ) したにゃんよ~」

「ほんとあれこれ見つけてくる猫ちゃんやなあ」

「レイド、ヤマビコさんたちも参加するにゃん?」

「豊穣神官専用レイドらしいで。神官オンリーならまだポユズが行けたんやけどな。今度こそオールヒーラー戦になりそうで途方に暮れとるらしいわ」

神官専用ってだけじゃなくて、豊穣神専用か。それはなかなか大変そうだ。

本来なら人数揃えるのもかなり厳しそうだけど、そこは「農家といえば豊穣神」な鉄板型の強み。同時に「正統派ヒーラー」がくっついてくるのは仕方ない。

対害獣ではあるはずなので、バフマシマシ・デバフマシマシの農具戦隊で頑張ってほしい。動画でくれ。

二人もテーブルについたところで、ヤマビコさんがお茶とお菓子をくれた。わーい。今日はミルクティーとクッキー。ほわ…。

「あ、これお土産にゃん~」

まずはポーツクッキーを配る。

そしてエドさんには、投擲専門店を紹介してもらったお礼のクラゲのゲソ。

「『海月坊のゲソ』か。まさか船で会ったのか?」

「にゃん~、露店で売ってたにゃ。お安くしてもらったにゃんよ~」

お安くしてもらったというか、そのあとお高く買ってもらったので相対的に安かったというか。嘘は言ってない。

「いい素材だ、ありがとうな」

「投擲専門店の紹介お礼にゃんよ~」

そしてヤマビコさんにはデビだ。タコなデビ。

「これを使って例のアレをお願いしたいにゃん」

「おっ! すごいやん、ラン、デビはなかなか取れないんやで。もろてええんか?」

「にゃん? 魚屋さんの屋台で普通に売ってたにゃん。デビ焼き期待してるにゃんよ~!」

「屋台販売は品目が日替わりやさかい、狙って買うのが難しいんや。ほんなら作っとくで、楽しみにしとき」

たこ焼き確保だぜ!

「フーテンさんにはこれにゃん」

「にゃん? 『ムーンキャッチ』?」

はい。『ムーンキャッチ』を5個ほど。

実は黒月に『ムーンキャッチ』した場合に何になるのかって、まだ不明なのだ。

やはり順当に『 黒月明(くろつきあかり) 』になるのかなと攻略サイトと掲示板の両方で調べてみたけど、見当たらなかった。

かといって、月がつくアイテムでは幅が広すぎて探しきれず。たとえばさっきの『海月坊のゲソ』とかも「アイテム名に月を含むアイテム」ってことになっちゃうし、アイテム検索ってなかなか大変なのだ。

黒月では検索結果少なすぎて何の役にも立たなかった。まったく情報がないってことはないだろうから、なんらかのネタバレに引っ掛かってて制限スレに入ってるとかかなあ?

まあそんなわけで『ムーンキャッチ』はこれから、まだ知られていない新アイテムに化ける可能性が高いのである。

「黒月に当てるとどうなるのか気になるにゃん? 猫は今、『ムーンキャッチ』の在庫が豊富だから分けてあげるにゃん~」

「ああ~! なるほどねえ。 ……え、もしかしてガラス最大手の小人姫がアクセサリーから手を引いたのって、猫ちゃん関係あったりする?」

小人の姫でガラスでアクセサリー、といったら間違いなくティアラさんでしょうな。

「ティアラさん、小人姫って呼ばれてるにゃん?」

「そう、たしかそんなお名前。水色のくまさんよ。あ~~…、なるほど月と精霊関連のアイテムねえ…」

「ティアラさんがアクセサリーから手を引いたのはそっちじゃなくて、ガラスの上位アイテムが見つかったからにゃんよ~。『ムーンキャッチ』関連はその後にゃんね」

「ガラスの上位アイテム!?」

「もしかして『硝子瓶』がプレイヤーにも作れるようになるのか?」

エドさんは探索者だから、売店もチェック済か。

「たぶんそうにゃん。『硝子玉』が出来て、そこから『硝子板』にも到達したって言ってたにゃ。その先に『硝子瓶』があって、更に『試験管』があるらしいにゃん」

「名前からして『調薬』関連っぽいな。『調薬』でうまくいかないレシピが出てきたってリーたちが愚痴ってたが、その辺が原因なのかもしれん」

「道具の更新ね~~。そうきたかあ…。『調薬』はガラス製品多いもんねえ」

そう、ガラス工って調薬道具も一部、作れるらしいんだよね。

でも道具類は装備と違って耐久値がない。一度作ったらそれで終わり。需要に対して供給過多すぎる分野だと聞いている。

ビーカーに漏斗、ガラス棒にピペット。その辺をセットにした『調合キット』はマケボにもズラッと並ぶ定番商品だ。

しかし硝子で道具更新かぁ。

それは猫は思い至らなかった話だな…。でもたしかに必要だろう。ティアラさんたち硝子連合、大忙しの未来が見えちゃう。

フーテンさんが『月と精霊の扉』を読み終えて、次はヤマビコさんとエドさんが読み始める。

その間にまたドアチャイムが鳴ったので、今度はフーテンさんがお迎えに。

「ランちゃん、いらっしゃい!」

「お邪魔してますにゃ~ん!」

「ランにお土産を持ってきたんだよ」

「お土産にゃん?」

やってきたリーさんとポユズさんから、はい、と渡されたのは大根。

……大根??

あっ、違うわ、これマンドラコラだ!?

「この前行ったダンジョンにマンドラコラがいたから、射程拡大『タイムパス』で接敵前に花咲かせたらいいんじゃない?て話になってね」

「やってみたら出来てもうたんや。これめっっちゃ楽やな!」

「便利すぎて逆に心配になった」

「なんでや使いどころ限定的すぎるやろ!」

そんなわけで花を咲かせたマンドラコラを、猫にもお土産に持ってきてくれたそうな。

わ~~いありがたや~~。

今回のマンドラコラは青み(緑み?)を帯びた白で、以前見たシュガーマンドラコラより細くてしゅっとしている。ちょい長。

「ホースマンドラコラだよ~」

ホース…ラディッシュ…的な…? 辛い系?

「味はまさにワサビやな。シュガーよりめんどくさくないけど、痛い」

「いろいろあるにゃんね~」

攻撃力が高いタイプなのかな? マンドラコラも種類がかなり多そうだ。奥深い沼を感じる…。

「せっかくだからみんなで植えてみようってことになったんだ。それで前にランが赤ラコラ育ててたから、もし種を持ってたら売ってもらえないかと思って」

「もちろんあるにゃん~! でもラコラ種、特に白は何とでも交雑してしまうらしいにゃ。だからマンドラコラも、他の植物とも交雑出来るかもしれないにゃ。赤ラコラでいいにゃん?」

そんなわけで相談した結果、フーテンさんとエドさんは無難に赤ラコラ。…このふたりは冒険しないというか、無難を愛するタイプっぽいからそうくると思ってました。読み通り。

ポユズさんとリーさんの調薬組は薬草やハーブなどと試してみるそうだ。ふたりはメイン生産が調薬師だから、その辺りのシナジー狙いですな。これも納得。

そしてヤマビコさんはあれこれ悩んだ後、赤ラコラに帰結していた。ホースマンドラコラの辛味を生かせそうな組み合わせが思いつかなかったらしい。さすが食道楽の人、食べることを第一に考えてる…! 猫にはない観点で面白い。

赤ラコラの種はギルド売店の10倍で売れた。まいどありにゃん~。

新しく来た二人が席について、お茶とお菓子が出される。猫たちにもお代わりを入れてくれた。お茶請けはポーツクッキー。おもたせ感。

ポユズさんには『 白月明(しろつきあかり) 』をお土産に渡した。狩猟神の儀式魔法は白月夜限定だと聞いたから、使うと擬似的に白月夜になる『白月明』は使いどころがあるかと思って。

「白月明はマケボでもなかなか売ってないから、助かるよ。ありがとう!」

「今度、機会があったら儀式魔法見せてほしいにゃん~!」

「もちろん。綺麗だから、楽しみにしておいて」

そしてリーさんには属性圧縮で色変出来る面白素材、『七宝魚の鱗』のお裾分けだ。

こちらも、属性が色ではっきり出る素材に喜んでくれた。

「名前に虹とかレインボーってつくモンスターと、七宝って名のつくドロップって意外とあるのよ。もしかしてそういうのも圧縮で化けるかもしれないわね! 後で箪笥をあさってみなくちゃ。見つけたらランちゃんにもお裾分けするわね!」

「面白い素材はいつでも歓迎にゃん~!」

リーさんとはちょいちょいレシピ交換などをしている。

といってもリーさんのLV帯で手に入る素材は猫には入手困難なアイテムなので、こういうアイテムを圧縮するとこうなる傾向がある…ような気がする!みたいなアバウトすぎる情報交換だ。

それでも錬金術師同士でお話し出来るのはとても助かる。なにせ指針もなく釜に放り込み続けるのってなかなか飽きるのだ。こうかも~くらいの目安でも、ある方が捗ろうというもの。

掲示板……、いや、もはやなにも言うまい。