軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40.神さまのいうことにゃ

魚籠がそろそろいっぱいだから戻るか~と思ったら、なんか真っ赤な魚がひらひらと。

鯛?

玉網を振ってみるが、ひら、ひら、とかわされてしまう。

うーむ、釣竿でやってみて、ダメだったらライトニングかな?

敵対してないのに攻撃していいか迷うところだが、ペチカちゃんが聞いた漁師の話によると、青月夜の内に 幽世(かくりよ) の魚は捕ってしまいたいそうだ。この島に残しておくと、その魚が異界の扉を広げてしまうと言い伝えられてるのだって。

デッドオアアライブならデッドもやむ無しよ。

そーれっと釣竿を振ると、不思議なことに空中でちゃぽんっと水音がする。あ、なんか引っ張られるなこれ。どうやら幽世の水面はいつの間にかずいぶん高いところに行っていたらしい。だからタイプの違う魚も出てきたのかな?

うーん、これは無理だな。針が上へ上へ持ってかれてしまう。

釣竿での釣りをあきらめて引き上げようとすると、こちらを見向きもしていなかった赤い魚が突然襲いかかってきた!

「にゃん!?」

咄嗟の持ち替え『インパクト』がギリギリ間に合って、 ばちんと鯛の横っ面を叩く形になった。

戦闘に入る!と構えたのだが、釣竿をしまったらこちらへ興味をなくすようで、ひら~ひら~と泳いでいる。

…。

ためしに『コズミックシュート』の魔力弾を撃ってみるが、ダメージにならない。

釣竿出しつつ戦う感じか~。

蓄積ダメージならさっきのを繰り返してれば勝てる気もするけど、回復しちゃうんだったら意味がないな。

まあ試してみようっと。

……蓄積ダメージでした。

5回繰り返したら明らかにヘロヘロしてきたので、玉網で捕獲。

ちょっと悩んだけど『手当』をかけて回復させて、ササッと 魚籠(びく) へ突っ込んだ。

『真っ赤な鯛をゲットしたにゃん~!』

『赤い鯛!? も、もしいたら白いヒラメも重要かもしれません! 』

『にゃん?』

ペチカちゃんいわく『幽世恋物語』の押し掛け嫁姫さまは真っ赤でヒラヒラした服を着ているそうだ。

なるほど、赤い鯛は姫さま?

では白いヒラメとは?

『お姫さまは海蛇に住まいを乗っ取られるんですけど、どうもそのまえに白くて平たい男との結婚を嫌がったそうなんです。そして結果的に家を追われるようになった…みたいな前フリが、恋物語の方にありまして』

あっさり説明プロローグみたいな感じだったので、必要ないだろうと省略してしまっていたそうな。

そりゃ猫もそんな些細な話は、聞いてても聞き飛ばしたに違いない。

白いヒラメと赤い鯛の深海対決?でヒラメが勝って鯛がこっちの世界へ逃げ込んだ…、という話かもしれないので、ヒラメはこっちにはいないかも、とのこと。

なるほど、それも一理あるな。昔話の読み解きって、なかなか大変ね。

一応、ヒラメも探してみるかな?

アトノ島は狭いので、ルイならそうかからず回りきれてしまう。

てことで玉網漁をしつつ、一巡り走ってきたけど、ヒラメはいなかった。残念。

代わりに小さな海蛇がトッピーの群れの中にいた。桟橋の『釣り』にかかったのと同じ『リューシー』というやつ。青と白の縞々海蛇、長さ10cmくらい。

魚籠にいれようか迷って、でもこれ、魚じゃなくて、海蛇なんだよなあ。リリースしちゃえ。

「 運送神(ちち) の元へ帰るにゃんよ~」

くるん、と丸まった海蛇はリリースするとすいすい泳いで消えていった。達者で暮らせよ(二回目)。

そろそろ魚籠もいっぱいだな~戻るかな、と思っているとペチカちゃんから連絡があった。

『白いヒラメ! こちらでかかりましたぁ!』

『おお、やったにゃん!』

なんとなくミッションコンプリートな気分。

よし、猫も祠へ帰ります。もう魚の群れもほとんど見なくなったしね。

レトの指示もなくなったので、レトとしても見つからなくなったらしい。

祠へ戻ってくると、漁師さんたちは大漁に沸いていた。わいわいと楽しそうに祠へ並び、捧げ物をしている。

「ランさん、おかえりなさい!」

ペチカちゃんがでかくてビチビチする白いヒラメを抱えている。なにそれシュール。

「ただいまにゃん~、どうしたにゃん?」

「これ、ピピちゃんが捕まえてくれたんです! 漁師さんの話によると、今日捕まえた魚を祠を通じてあちらへお返しするそうです。その過程で、不思議な体験が出来るとか…。何が起きるかは、詳しく教えてくれなかったんですけど」

「にゃあ、ならこれから祠に並んでお参りにゃんね。ミニダンジョンかもしれないから補給しておいた方がいいかもしれないにゃ」

「あっ、たしかに! そうですね」

いったんヒラメは魚籠にお預かりして、ペチカちゃんと用意を整え直す。初心者強化ポーション(魔)他、使わなかった初心者強化potの在庫は預けた(あげた)し、たとえボスが来ても万全だ。

準備を終えたらヒラメをペチカちゃんにお返しして、ビチビチさせつつ祠に並ぶ。

せっかくなので猫も鯛を…と思わなくもなかったけど思いの外ヒラメの勢いがいいのであきらめた。猫にはたぶん鯛を抱えるのは無理。

なおヒラメをペチカちゃんに持たせているのは、もし個別に報酬があった場合に、猫が総取りになると困るからだ。この手のアイテム(?)を集めるギミック、特殊アイテムに限りPT共有じゃない場合もあるそうなので。

漁師さんがお祈りを終えて順番が来て、猫とペチカちゃんも祠にそれぞれヒラメと魚籠を捧げてお祈りする。

ぱち、ぱち、しゅわ、と泡が弾けるような音が聞こえたかと思うと、足元から白い泡がポコポコと立ってあっという間に周りが見えなくなる。

「おお、××様のお招きだ!」

「めでたい! 頑張ってこいよ!」

などと漁師さんたちの声を遠巻きに聞きつつ、暗転。

ゆっくりと明るくなると、周囲が全体的に青い。岩場だろうか。斑に光が当たっており、ポコポコとたまに泡が上っていく。

海の中、洞窟、かな?

ペチカちゃんもそばにいて、キョロキョロして猫を発見、すぐそばに来た。

「ここはいったい…」

『ここは 幽世(かくりよ) の 澱(よど) み、空白の場所、我が住処』

ピアノの低音を弾いたときのような、ボォン、と重たい響きの声。声というか、音? 音に言葉がアテレコされてるような、不思議な感覚。

ペチカちゃんの問いに答えたのは、岩の洞窟だとばかり思っていた岩そのもの。ぬるりと動いて目が覗くとよくわかる。この岩場、蛇だったのね。斑に見えたのは光のせいじゃなくてそういう模様だったらしい。

猫、爬虫類も平気。ペチカちゃんはヒエエってなって猫の後ろに隠れた。でもペチカちゃん、ここ、とぐろを巻いた蛇の中だと思うよ。きっと君は全方位安心できない。

「にゃん~、運送の神さまにゃ?」

『いかにも』

「お魚、お気に召さなかったにゃん?」

『いいや。多く、より多くの魚を返してくれた。届けてくれた。運んでくれた。その思いに応えよう』

ぽわぽわと光って、猫とペチカちゃんにたぶん加護がつく。

『青月は水の底に繋がる。底無しの海の幽世に繋がる。広がれば世界は浸水していくと心得よ』

「大変にゃん~」

「そ、それは、一度広がったら戻らないのでしょうか?」

『いかにも。されど人の行いには限りがある。人の手には限りがある。多く、より多くの地へ行くがよい。その手を求める地へ』

これはアトノ島ばかり来てても意味ないんだからね!という意味かな、たぶん?

ポコ、ポコと水の泡が白く浮かんでいく。…あ、これ、もしかして精霊? 運送神の蛇の鱗からポコポコと生まれていく。

「神さまが精霊を生むにゃ?」

『我は力。力は我。我の漏れ出す気が新たな力となる。我は輪廻する』

「にゃあ」

『呼び名が変わるだけ、何も変わりはしない。変わることはない』

猫はペチカちゃんと顔を見合わせた。そして共に首を傾げる。うん、何もわからん。

『生まれよ。巡れよ、世を育むものよ。共にあれ。共に暮らせ。器を持て』

蛇の前にポワポワと光が浮かぶ。これは、精霊を持ってけってことか??

でもこのイベント、事前にムーンキャッチの話とかまったくなかったんだよね。持ってない場合は収穫なしになっちゃう…、てことはさすがにないはず。

「器は何がいいにゃ?」

『なんでも。石ならば、なんでもよい。ただしその石が体となる。体が力を作る。心せよ』

ペチカちゃんは首を傾げている。ですよね!

「なんか石を出せ、てことです?」

「そうだと思うにゃん~。ペチカにゃん、たぶんSP10取られる選択肢が出るにゃん。でもそのまま取られることをオススメするにゃん」

「スキル関連なんです!? わ、わかりました」

それにしても石かあ。

どんな石がいいのかくらい教えてほしいんだが。

「石によって、どんな違いが出るんでしょうか?」

お、ペチカちゃん、ナイス!

『小さな石は小さなもの。大きな石は大きなもの。飾り気のない石は飾らないもの。煌めく石は煌めくもの。月の石は生まれたままを、生き物の石は生き物の心を覚える』

わ……わからん!!!

月の石はたぶん『色月明』か『ムーンキャッチ』だろう。生まれたまま、てことは特に進化しない、てことか?

あとは大きなのと小さなのは、石のサイズによって入れる精霊のサイズが違う…とか?

飾り気のない石ってのはたぶんアクセサリーにはしない石ってことだと思う。石ころみたいな。一応、どんな石でも『石』というカテゴリーならアクセサリーに出来るとティアラさんは言ってたけども…。

煌めく石は宝石、あと硝子も含んでいてくれるといいなあ。しかし煌めくものってなあに?

ううーん。

「たぶん小さめのきれいな石か、生き物の石…魔石?がいいと思うにゃん…、でも全然わからないにゃ~」

「私も飾り気のない石と、大きな石は違うのかなと感じました。煌めく石は元々持ってないですし…、うーん、私は魔石になりそうですね」

「月の石は猫、持ってるにゃ。『ムーンキャッチ』のことだと思うにゃん」

「あっ、『ムーンキャッチ』なら持ってます! アクセサリーなんですけど…。露店で、つい買っちゃって」

ティアラさんの『ムーンキャッチ』アクセサリー、終売前に買えていたのかペチカちゃん。

ペチカちゃんは『ムーンキャッチ』に決めたようだ。

猫も『ムーンキャッチ』で、と思ってたんだけど、生き物の石ってのも気になる。生き物の心を覚える、て何?

でも猫、魔石はほとんど持ってないんだよね。ジェリかミミットのくらいしかない。畑大ノシシ戦で手に入れた宝石も魔石だけど、あれは原石みたいな状態で、未加工だしなあ。

あとは『カーバンクルの魔宝石』だけど、最低品質だし、あれでアイテム作ると名前が変になるっていうもんね。

「生き物の石はどんなのでもいいにゃ?」

『構わぬ。しかし生き物のかたちが強固では中に入ることは出来ぬ。 其(そ) は魔力そのものである。であるからして、世を越えて渡りゆく』

お??

これ、もしや品質悪めの『カーバンクルの魔宝石』で正解なやつ?

ペチカちゃんと顔を見合わせてうなずき、お互いに手に決めた石を乗せて蛇へ差し出す。

猫は『カーバンクルの魔宝石』にしてみた。頼むぞ、最低品質だけどすごく高かったんだこれ!

『よかろう。ゆくがよい』

蛇がそう言うと、ぽわと光の玉が浮かび上がり、まずペチカちゃんの手の上の『ムーンキャッチ』イヤリングへ吸い込まれた。それと同時に、『ムーンキャッチ』が青みを帯びた輝きを放つ。『青月明』に変わったのだろう。

そして次に、猫の手へ光の玉が……と思いきや、なんと『白き月光のブローチ』へ吸い込まれた。

え。

ええええー!?

ちょ、そういうことする!?

ロニどうなっちゃうんだこれ、ていうか今の問答なんだったのさ!?!?

『待て。しばし、待て』

「にゃ」

『お前を望むものがある。望まれるもよし、望むもよし。望みを叶えよ』

「にゃん?」

どゆこと?

首をかしげていると、上から光る玉がゆらゆらと降りてきた。

…あ。海蛇。

『共に行く。共に行け』

するりとこちらへ降りてきた青と白の海蛇が、猫の手の中の魔宝石に吸い込まれる。

中央からヒビの入っていた魔法石が、まるで白い稲妻が入るようにビリッとふるえて光を放ち、光が収まると一回り小さく、そしてヒビのない魔法石になっていた。

お、おおお?

『ゆく。世の狭間が崩れ去る日も近い。心せよ。運べ。流れよ、旅せよ、共にあれ』

再び白い泡があふれて目の前を覆っていく。

『――我が名はリュガ。運べぬものがあれば呼べ』

おや。

神さまのお名前ゲットだぜ?