軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

38.昔話を読み解けば

そういえばポーツの神殿で見上げた神像は、片肌脱いでるのに肩の辺りから模様がついてて、刺青でも入れてるのかな~て思ったんだっけ。

もしかしてあれが蛇の鱗を表していたんだろうか。

『道理で討伐報告が見つからないわけにゃん~! ありがとにゃ、ちょっと考え直してみるにゃん』

『何をして襲われる予定なのかわからないけど、ほどほどにねえ』

そういえばなんで海蛇は魚を釣ってると襲ってくるんだろうね?

圧縮して出来た低品質雷属性『七宝魚の鱗』に『ライトニング』を込めてみたら盛大に弾けた。わあ、これは無理そう。

おとなしく『発雷』を込めた『雷魔法玉』を何個か作成して、約束の時間だ。

「えっ? 海蛇は敵じゃないんですか!?」

「海運の神の化身らしいにゃん~。そう考えると、漁師が追われたのは空飛ぶ魚を持ち帰ろうとしたせいかもしれないにゃん」

「あっ、なるほど。ということはお姫さまそのものが、何らかの魚の暗喩だった可能性もありますね」

「物語って複雑にゃんねえ」

やはり本だけではわからないこともあるなあ。

海蛇については改めて『メモリー』を検索してみたけど、『海魚大全(上)』以外に書いてある本がなかった。今回、神話系はスルーしてしまったのでそれもよくなかったかもしれない。

ペチカちゃんは猫がくる前に神話もざっくり目を通してたそうだが『海運の神は巨大なシー・サーペントとなって船を引く』と書いてあったが、頭の中で 海蛇(ウミヘビ) とは結びつかなかったそうだ。まあ、ウミヘビって一般的には白黒縞々にょろろんだもんね。

「考えてみれば、シー・サーペントってまんま海蛇のことですよねえ…。すみません、すっかり和風な想像をしちゃってたから、一致しなくて」

「にゃん~猫は読んですらいなかったから、気にしなくていいにゃあ」

落ち込むペチカちゃんから『ヤノ蔦の 魚籠(びく) 』を受け取り、猫からは『ライトニング教本』を渡す。『渦』をまだ覚えていないそうなので、『ターゲット教本』はやめておいた。

ちなみに猫が魚籠を受け取るのは『運搬』持ちだからだ。カゴ類は道具ではなく、鞄扱いなんだって。鞄は『運搬』持ちが持つことでポテンシャルをフルに発揮できる。

まあアクセサリーを整理しないといけないのだが。スカーフを外して、魚籠に変更。

『積載量+500(魚のみ)』に加えて、更に『イベントアイテム』の表示が出た。

「にゃあ、『運搬』持ちも必要みたいにゃん」

「もしかしたら、乗り込んできた奥さんが『運搬』持ちだったのかもしれませんね」

ペチカちゃんの新たな読みとしてはこうだ。

漁師は異界の扉を通って、あちらの世界へ迷い込む。そして魚を釣り、持って帰ろうとしたところ、海蛇に襲われて逃げる。しかし魚籠の中に魚を隠して逃げおおせることができた(お姫さまとの出会いの場面と憶測)。

味を占めた漁師は魚籠を使って海蛇を惑わして魚を取り続ける。そして欲をかいた漁師は魚籠に入る以上の魚を取りたいと、こちらの世界へ魚を放流してしまう。そして魚は空を飛んで逃げてしまう(これがお姫さまの押し掛け嫁と憶測)。

帰りの遅い亭主を心配した嫁が現れ、魚を密漁する漁師に激怒。こちらで逃げた魚を捕まえて、あちらの世界へ帰すために奮闘する(白熱のキャットファイトではないかと憶測)。

そして魚を無事あちらの世界へ帰すことが出来て、海蛇と和解、流通と海運の神からあちらの世界との交易を許されたのではないか…。

「なるほど、あり得るにゃん」

「完全に妄想と憶測なんですけどね! 」

「ということは、この魚籠は海運の神の目を掠めて魚を盗めるアイテムってことになるにゃん?」

「ハッ!? とんでもないアイテムを作ってしまいましたね!?」

ペチカちゃんいわく、ヤノ蔦は本来カゴには向かない素材らしい。なにしろまず太いし、重い。しかしこの辺りではヤノ蔦が多く、何処でも手軽に採れる素材ということで、おそらく漁師の家の貧しさを表しているのではないかと思ったそうだ。

「普通に考えたら籠なんて作らない素材ですから、このイベント専用のアイテムなのかもしれません」

「海蛇に目をつけられるかもしれないにゃんね~」

「無害アピールを! 和平を願いましょう!」

よほどのことがない限り海蛇とは敵対しない、向こうの世界へ渡れることがあったとしても魚は採らない、持ち帰らない、と二人で決めた。

界が広がっても困るし、猫もせっかくもらった海運の神の加護を取り消されるようなことはしたくない。

そうそう、加護、行動蓄積でもらえるからには、行動蓄積で消えちゃうこともあるみたいなんだよ。有名なのだとブロックされるような悪質な行動をしてると神の加護から消えていくっていう話がある。

それ以外にも、生産系の神さまはその生産を辞めて他の生産に移ったりすると、加護が消えちゃったりするらしい。

たとえばティアラさんが通ったという鍛冶→ガラス工ルートでガラスオンリーになると、冶金神からの加護などは消えてしまうそうだ。この神さまは金属を扱っていないと消える神として有名なんだとか。

ちなみにガラスも色付けのためなどに金属を使うので、要はガラス瓶とかで中途半端にLVを止めてると消えやすいって話みたい。といっても金属の加工にプラス効果のある加護なので、本当に『ガラス工』に絞って『鍛冶』をしてないなら何の影響もないらしいけども。

閑話休題、海蛇との敵対は可能な限り避けようね、という話。

でも強敵が海蛇ではなく、魚の可能性もある、ということで、やはりペチカちゃんには『ライトニング』を覚えてもらうことにした。

『発雷』を覚えていないせいかかなり苦戦していたが、猫が隣で『発雷』を実践してみせたり、解説したりすると理解が進んだらしい。おお、やはり先達が教えると覚えやすい、あるのでは?

ポータルとかアンチポイズマ、フーテンさんに教師頼もうかなあ。いや、さすがにMPの法則は無視出来ないか。

ペチカちゃんが無事『ライトニング』を覚えると、教本は見るからにボロっちくなった。おお、こうなるから覚えられるのは2人までって言われているのか。なるほどなあ。

ペチカちゃんはめちゃくちゃ申し訳なさそうにやはり弁償すると言ったが、別に持っただけで分解するわけじゃなし、全然構わない。

「他に読ませる予定があったわけでもなし、何の問題もないにゃんよ~」

「ううう、でも本を汚してしまった気がして心が痛みますし…!」

その気持ちはちょっとわかっちゃう。

「それなら今度ペチカちゃんがこれだと思う教本があったら読ませてほしいにゃん~」

「ハッ! なるほど、わかりました! いい教本を探してきますね…!」

人からもらった本で恩を売りつけてしまった。

まあ、本人が望んでるならそれでいいか…。

『ライトニング』を覚え終えてもまだ少し島までは時間があったので、今度は手分けして船の乗客や、乗務員から情報収集を行うことにした。

というかこれを先にしておかなきゃダメだったね! 反省。まあ時間はまだあるし!

「島へ渡るのに『 玉網(たもあみ) 』を持ってきてないなんて、準備が悪すぎるよ!」

『玉網』について教えてくれたのはまだまだ若い、というか少年の漁師NPCだ。大きな玉網を振るのがいちばん『トッピー』釣りの効率がいいそうな。

ちなみにトッピーとは空飛ぶ魚の名前らしい。ジェットフォイルかな?

『海魚大全(上)』にはいなかった。下巻はどこにあるんだ。

「にゃん~『虫取り網』じゃダメにゃん?」

「それ『キラーホッパー』も採れるやつ?」

「むしろそんな大きな虫取り網あるにゃん??」

キラーホッパー、猫よりちょっと小さいくらいのでかさらしいんだけども。いや、玉網としてはそのくらい、珍しくないサイズか?

「うーん、オイラも自分の網しかさすがに持ってないんだよね。でも、船乗りのおじさんに頼んだら『破れた 投網(とあみ) 』をもらえるかも。これと『流木』があれば、『玉網』が作れるんだぜ」

「猫は『木工』とか出来ないけど作れるにゃん?」

「『木工』出来ないのに釣りをやるなんて大変じゃないか?」

『釣り』と『木工』ってオススメセットなのか、知らなかった。でも言われてみれば釣竿も作れるし、ルアーとかも作れるし、あるといいスキルだね? 猫はドサッとしてチン以外は出来ないので難しそうだけど。…エドさんに釣竿も頼んでいいだろうか…。

「そう言われても猫は『錬金術』しか出来ないにゃん~」

「めちゃくちゃ胡散臭いやつじゃん」

半目で見られた! なんてことだ!

やはりポーツ含む廃都エリアでは第二エディション以降のスキルは覚えがよくない、とかそういう感じ?

「俺の親戚のおじちゃんにも『俺は錬金術師になる!』て 自由都市(マケット) にいっちまった人がいてさァ、帰ってこなくなっちゃった…」

アッそういう…。少年の傷を抉ってしまった…。

「でも、あっちでちゃんと錬金術師にはなれたみたいでさ、手紙と小包がたまに届くんだ」

「いいおじちゃんにゃんね~!」

「ああ、『貝殻』をたくさん箱に詰めて送ってくれ、なんて言ってくる変なおじちゃんだけどな!」

お、これはもしかして『貝殻』の圧縮、二段階くらいすると化けるやつかも? ちょっと楽しみ。

他にはなにやら重そうな風呂敷を持つ若い料理人NPCなどもいた。ちなみにお姉さん。細い体に大きな荷物で気になったのだ。

「重そうな荷物にゃんねえ」

「ええ、ようやく独り立ち出来るようになったので、ご加護を願いにいくんですよ」

「にゃん? 島には『料理』の神さまでもいるにゃ?」

「いえいえ、違います。あの島にも神さまはいらっしゃいますが、料理神ではないですよ」

ほう。まあ祠があるっていうんだから、神さまが奉られててもおかしくはないか。

「持ってるのが捧げ物にゃ?」

「いえ、これに加護を願うんです。ポーツで商売をするには、『漬け物石』がないと始まりませんから」

ほ、ほう??

『漬け物石』…? お漬け物がないとお店出来ない…??

見せてもらったが、漬け物石としか言いようがない立派な『漬け物石』だった。うむ、わからん…。

石は黒いのと灰色のと2つある。

「2個いるにゃ?」

「え? はい、それはもちろん! 2個なければ片手落ちになってしまいます。同時にいただけるとよいのですが…駄目だったらまた次にも来なければ」

2個いるのか、『漬け物石』…。そして1個ずつしか加護がもらえないこともある…。

というか、加護を願うのに捧げ物じゃない、ていうのがふしぎ。これに加護を願う、てなんだろ?

どういう神さまなんだろうね??

もう少し突っ込んで聞きたいところだったけど、タイムアップだ。

情報収集を終えて合流。かくかくしかじか。

ペチカちゃんも漁師関係では同じ情報に行き着いたらしく、『壊れた投網』をもらってきていた。

「猫はマケボで『玉網』買ったにゃん」

「ああっ!? その手が!!?」