軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11.初心者の試練

釣りをするぞ!

海に突きだした桟橋で釣りが出来るようになっている。しかし『1日漁業権』がないと釣ったら衛兵に捕まる。そんなわけで漁業権も買いました。

1500z。瞑想室に比べるとかなりお安い。いやあれは改めて考えるとかなりボッタクリ価格だったような。まあいいか!

船を出して沖釣りも出来るようだけど、スキルが要求LVに満たないからおとなしく地上釣りだ。

……あっさり初心者釣り竿を持っていかれた。小魚が引っ掛かって次に、とかじゃなくダイレクトに持ってかれたわ。

え、なにここ、狂暴なのがいるの?

ドキドキしつつ新調した釣竿の方を垂らす。じっと見てると、近づいてくる魚影がでかい。めちゃくちゃデカイ。なにこれ、これはダメなやつ、とさっと竿を引き上げる。

「にゃ!?」

釣糸を追って、巨大な影が空へ向けて飛び上がる。

ま、マグロ!?

なんでマグロ!!?

咄嗟に拡大『アポート』して桟橋に下ろしたはいいけど、跳ねる跳ねる。

「にゃああああああ!?」

ど、どうしようこれ!?

一応飛び付いてみたけど猫ごと海に落ちそう。でも使えそうな攻撃魔法なんて持ってない!

『インパクト』使ったら猫ごと海に帰っちゃううう!!

さっさと『ライトニング』覚えておけばよかった!

うう、ダメもとでめいっぱい『拡大』した『発雷』!

バヂン!と大きくマグロの体が跳ねた。き、効いてる?

もう1回、拡大『発雷』すると、びくっびくっとマグロの体が痙攣して、力を失った。

う、うおお、び、びっくりした。

必死だったからわからなかったけど、このマグロ、猫よりでかくない? 150cmくらいあるんだが。こんな浅いとこにいていい魚じゃないでしょ。

そっと手を当てると収納出来たので、倒せたらしい。倒せた……、LV19になりました。ボスほどじゃなかったけど結構、経験値あったなあ…。

採取もそうだけど、釣りも微々たるものだが経験値が入る。いや今回は全然微々じゃなかったけど。命を取ると経験値になる、そういうことなのだろう。

港に戻って「なんかでかいの出て危ないにゃんよ~!」と漁師ギルドの受付に訴えたところ、これは『ビギナーツナ』という初心者だけが会える魚らしい。釣りの神さまが授けてくれる試練なのだとか。

「釣ったというより魔法で倒しちゃったにゃん。釣り竿も全く使ってないにゃあ」

「それでも『ビギナーツナ』を取れたってことは釣りの神さまに気に入られるはずだぜ!」

そういうことらしい。

ここは釣り神さまの総本山らしく、神殿があるそうで、必ず参っておくように言われた。

掲示板で調べたら『ビギナーツナ』はほぼ魔法で狩られてるので問題ないようだ。攻略でも魚影が見えたら釣り竿を引いてジャンプさせて射落とすのが正解っぽい。見た目のわりにHPが低く、地上に落としさえすればなんとかなるんだって。

釣りの試練とはいったい??

いや、うん。神殿いっておこう。くれるものはもらっちゃう。

そういえばフロントにも何かの神殿があったようなのに、行き忘れたな。ヨハンさんの墓参りもしてないや。帰りに寄れたら寄ろうっと。

『ビギナーツナ、入荷しましたにゃ!』

『またごっついの釣ったなぁ。全部買い取りたいけど、ランは料理せんのか?』

『猫が作るとぶつ切りにして煮込むことになっちゃうにゃん』

『よし全部買い取るわ。ランはあら汁でも作りんさい』

『毎度ありにゃ~ん!』

ヤマビコさんに連絡したら丸ごと買い取ってくれるらしいので、これはこのまま保存。

ヤマビコさんからは「食材手に入れたら連絡くれれば買い取る」と言われている。

食材ならなんでも買い取ってくれるそうだが、一応、売るのは他と比べてランクが高かったり、珍しいものに限るようにしている。ヤマビコさんいわく「取りに行くのがめんどいのもあるから、その辺のキノコとかでもええで」とのことだったが、マケボに溢れてるようなのを買い取ってもらうのはさすがに気が引ける。

なおヤマビコさんは『料理』で金策してるとかではなく「ただの食い道楽」らしい。だから身内には卸してるけど、販売は別にしてないとか。とはいえ、フーテンさんに預けたりして材料費分くらいはペイしてるそうだけど。

自由都市に帰るのは予定では来週と伝えてあるので、また会ったときに売ることになった。

ちなみにビギナーツナを釣ったときの神殿報告は任意だが、捧げ物をするときは鱗1枚でいいそうだ。

鱗は倒したときにドロップとして手に入れてるので問題ない。ビギナーツナは5回採取、確定でまるまる1尾手に入り、それ以外は鱗とか魔石とかが手に入る仕様。

猫も鱗2枚と海藻、魔石だった。海藻は出汁がとれるらしいのでこれもついでにヤマビコさんに売ろう。

コンソメや鶏ガラのようにじっくり煮込んで出汁を取るのは好きだけど、昆布とかカツオ節みたいにタイミングを見て引き上げたりしないといけないのは面倒で苦手だ。

『料理』はややこしくて、美味しくても品質が低かったりするから、レシピ――特に手順や手間が重要なスキルなんだろう。品質が悪い料理は経験値が少ない。猫は早々に詰まるとみた。

猫は焼くのと煮るのだけでいいにゃん~。不思議とアク取りは苦にならないんだよなあ。

港町ポーツの神殿は、海と漁業の神と、船の神の合同神殿だった。船の神は海運の神であり、運送の神でもある。

漁業神は諸肌脱ぎのマッチョな海の男神。その頭についてるのはもしかしてねじり鉢巻なんだろうか。下半身は長い腰巻きで、全体的に見ると古代ギリシャ風?なんだけどどうにも筋肉と鉢巻の主張が強い。

神像の前に鱗を供えて、お祈りアクション。

漁業神からは「ナイスファイッ!」と声をかけられた。この世界の神、軽いよね?

漁業神の加護は『釣りにボーナス(海や水に類する地での『発見』にボーナス)』。オマケの効果が嬉しい。釣りは出来るところが限られているからなあ。

運送の神も男神、服の構造がちょっと謎。片肌脱いでるように見えるんだけど、脱いでるはずの腕や肩にも模様が描かれている。全身タイツ…? いや、石の像で色がないからわからないけど、刺青をしているのかな? 青海波みたいな模様だ。髪が長く、飾りのついたサークレットをしている。

運送の神から声はかからなかったが、ぽわと光って、猫とルイ、それにレトにも加護をくれた。『積載量が1%上昇』。しょぼいようだが、荷車を持つようになれば、1%は大きな数字になるだろう。ありがたい。

お礼のお祈りをして、神殿を後にした。

日暮れてきたら大通りに屋台がたくさん出てきたので、あれこれと買い込んだ。

なにこれ焼き魚も焼き貝も海賊汁もイカ焼きもタコ煎餅もあるぅ!

醤油の香ばしい匂いがたまらない。ちなみに醤油は普通にある。先人の努力の結晶…とかではなく最初からあったそうな。ポーツではポピュラーな調味料だ。やはり豆から作るらしい。あ、そうだ、醤油買っておこう。

ちゃんと地中海らしくブイヤベースとかアクアパッツァ、パエリヤなんかもあります。世界観が迷子。まあいいさ、買いました!

ここは食道楽の街だな!

フィッシュ&チップスのような揚げ物も多い。

イカリングに似た輪っかのフライがすごくジューシーで美味しかった。フィッシュリングといって、この街の名物らしい。何の魚なんだろう? サクサクふわふわ、ほろほろと崩れるほど柔らかいのに、噛み締めるとジュワっと白身の旨味が染みでる。

海のものだけじゃなく、甘いものもいろいろ。砂糖まぶしの木の実や、色とりどりの飴、揚げパンなんかもある。

ハッ、パン…! 買っておかねばならないものを思い出したけど、揚げパンは何か違うような……いや、美味しそうだから買っちゃう。ちゃんと後で普通のパンも買います。

飴も買っておこう。宝石のようにキラキラした飴は女子受けもよさそう。ちょっと多めに買っておこう。

レトもキラキラした目で見てるけど、これはさすがにあげられない……いや、どうなんだろ? 召喚獣だから問題ないというパターンもあるかもしれん。でもちゃんと調べてからね!

飲み物もワインとかエールとかシードルとかミードとか、色々な酒の屋台もある。1杯から売ってくれて、ミニボトルなんかもある。

猫はあまりお酒は得意じゃないが、お土産に料理にと使いどころは多そう。うーん、悩んだけど屋台価格っぽいし、酒は別にいいか。

お茶の屋台もあったので、こっちはあれこれと試飲させてもらって茶葉も購入。緑茶や中国茶っぽいのもある。しかし専用の茶器がいるんだよなあ…。ああ、茶器専門店にまたお金が吸い込まれそう。大丈夫、中国茶は買いませんでした…ッ。ううう。美味しかったなあ~。

他にもソーダとか炭酸飲料、生搾りジュースなどの屋台もあった。こちらもあれこれと試飲させてもらって購入。馴染みのある果物もあれば、ゲーム独自のものもあるみたい。 花果(かか) という種類の果物?花?は、蕾にたまる蜜水を絞ってジュースにするそうで、これも爽やかで美味しかった。買っておこ。いやあ、インベントリって素敵ね。

美味しいものはしあわせにゃ~!

海に落ちる夕日が見える坂の上まで上がって、見下ろす景色は最高だった。

ハーッ!いいなあ、海!

猫、もうここに住むにゃ! ここで釣りをして暮らすにゃ~ん!

翌日は図書室へ行って本を読んだ。

『マジックセンス』で文字と栞を回収。一応、冒険者の街フロントでは栞は虫干しの合図とされていたようなので、行政施設の受付で伝える。

こちらもやはり虫干しすると言っていた。

まあ、この報告がゲーム的に意味があるのかどうかなんてわからないけど、しないで何か起きたりすると後味悪いもん。本は宝。

ここの本の目玉はやはり『海魚大全(上)』でしたね。そう、なんと上下巻。なのに上巻しかない! 涙を飲んだ。

なお『ビギナーツナ』は上巻にちゃんと載っていた。あれは神の使いで、初心者がいないときには現れないそうだ。

本来は近海には生息するような魚ではなく、外海を回っている周遊魚の『トゥルーツナ』の近縁とみられている。といってもサイズは10~100倍違うらしい。

100倍? 10倍でもとんでもないのに? 異世界のマグロがでかすぎる。鯨か??

ちなみに『海魚大全』だったので淡水魚は掲載されておらず、リバーフィッシュは載ってなかった。『淡水魚大全』もどこかにあるのだろうか。あるとしたらどこに…。下巻もどこにあるんだろね? 本を読破するのは大変そうだ。

あとはレトが見つけてきた絵本。これは机に置きっぱなしになってたので、誰か読んでたのかも。

時と数字の話で、この世界では「時」とは「数」である、という内容だ。暦の話か!?と思ったら、全然違った。ちょっと残念。

数をかぞえるから時間を観測できるのだ、という話から「だから時間とは数である」と暴論をかますのだが、そこから更に「つまり時魔法とは数魔法だ」と繋がっていき、最終的には「時魔法の真髄は『カウント』にある」と結ばれる。

はあん……なるほど?? 何もわからん。『カウント』の教本なんて猫の売店にはなかったなあ。

魔法関連本にしては『カウント』の使い方も特に書いてなくて謎だ。しかし幾何学的な挿し絵がとても綺麗だったので許しちゃう。レトも熱心に見ていた。

印象に残ったのはその二冊くらいかな。

昨夜は「猫はここで暮らすにゃ」と思ったけど、図書室でしか本が読めないのはやっぱり不便だ。猫に本は必要。

そういえば自由都市には図書室ってないのかな。行政施設に用がないから行ったことがない。

行政施設は、プレイヤーにとっては主にクランハウス関連の雑事を行う場所だ。貴族NPCと縁のあるプレイヤーだと、物の受け渡しとかにいちいち手続きする必要があって大変、みたいな話は掲示板で見た。そんな一部の例外を除けば、基本的にはクラン関係者以外には縁がない。

ちなみにクランの設立が『冒険者の街フロント』でしか出来ない、というのは自由都市だと基準が厳しくて設立出来ない、というのが正しい。学園都市もたぶんそうなんじゃないかな~。

一度建てたクランは、どこでも通用するので、フロントで作るのがいちばん楽なんだって。