軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5.メインストーリーの残滓

レトとルイを連れて草原へ。ルイは1日1回牧草を食べればそれ以上欲しがらないのだが、草原に連れていくと牧草を探して食べていた。働いたからお腹すいていたのかな?

横で牧草を採取しつつ、ミミットを探す。

お、いたいた。ミミットと、ジェリもいるな。うーん、これはめんどくさい。

ジェリはどうということのないmobなのだが、近くにドロップアイテムが落ちると直ぐに 集(たか) って消化してしまうという困った性質がある。

ミミットを先に倒すとジェリに肉を取られるし、ジェリを先に倒すとミミットが逃げてしまう組み合わせだ。

ジェリを倒してすぐにミミットを撃つ、うまく出来るだろうか?

『ジュエル』で宝石を作る。

まずジェリをコズミックシュートの魔力のみで撃って、逃げ出したミミットを宝石で狙い撃つ。いける、か!?

ポン!とミミットがちょっと先でドロップに変わるのが見えた。おお。

『アポート』してドロップを引き寄せ。

ジェリは魔法弱点だから、コズミックシュートの魔力だけでも倒せるのがよかった。そっちのドロップはレトが拾っておいてくれたようだ。

そして、ついに…ついに!

『投擲』をラーニングしたぞ! やったぜ。

長かったなあ…!

森に香辛料やらベリー摘みに通って、ポルクスをペチペチ撃ってても覚えなかったから、もう覚えないもんだと思ってた。有効打以外にも、討伐数とか絡んでるのかもしれん。

それか『学びの神』の加護のおかげ? もっと早く神殿行っておけばよかったか? いや、それはさすがにこじつけか。

まあ、加護はこれまでの行動によるので、まだ何もしてない初心者の頃にいっても何の加護ももらえないらしいのだ。だから行ってなかったのもあり。

神像巡礼、結構時間かかるし大変だから、そう何度もは出来ない。間を置かずに行ってもそう増えるものではないから、巡礼までは滅多にしないらしい。3ヶ月から半年に一度くらいで十分だそうな。

決まった神様の加護がほしい人は、聖地の方へ行くので総合神殿の巡礼は新しい加護の開拓専用。たしかに半年で十分だろうね。

『投擲』ラーニングやったぜ記念にその辺のジェリを乱獲するなどした。いや、ジェリを倒したかったわけじゃない、ミミットを探してるのにジェリしかいなかったんだ!

おかげでジェリ水と魔石の小さいのをたくさん手に入れた。魔石はLVの低い魔物だとプチレア、高くなると通常ドロップという感じ。これはただの体感で、ドロップの取得回数が三回以上になると魔石が取れやすくなるというだけの話だ。ドロップ確率自体はあまり変わらないのだろう。

ジェリ3~5体で魔石1個取れてるかな。ジェリ水が大量だ。

冒険者ギルドにはジェリ水の納品クエストが常時あるけど、あまりうまくない。一度は報告のために納品したけど、それ以降は経験値稼ぎたくなかったし箪笥にしまってある。

ジェリ水と雑草を煮て作る『緑の栄養剤』でも作ってみようかな? 生産としては調薬分野だけど、煮るくらいはなんとかなるはずだ、農業ギルドにレシピがあったんだし。

今日はご飯作るからまた今度ね!

大量の野菜と『塩漬け肉』を煮込んだ『コンソメスープ』はなかなか上手く出来た。

『塩漬け肉』は狩猟祭イベントで余ったやつ。いや丸々1個じゃなくて半分でいいっていうNPCがいたので半分渡したら(『塩漬け肉(半)』になった)、最後まで残り半分が余ってしまったのよ。あれは罠だったね。本屋さんったら少食なんだから。

煮込んでる最中に時短で『経過』を使うとどうなるのか、気になったので試しに使ってみたところ、火が消えた。消えるというか、薪が燃え尽きた。『経過』ってそっちにもかかるのか!

時短して燃料代を節約~とかは出来ない仕様なのかもしれない。まあ納得はいく。

お肉ごろごろ~というスープを予定してたが、煮込み過ぎたようでお肉ホロホロなスープになった。結果オーライ。

そんなわけで出来上がったスープに、パン……あれ、またパンを買い忘れてるな。毎回忘れている気がする。次は忘れないようにしないと。

まあコンソメスープは鍋いっぱいに出来たし、これだけでも夕飯には問題ない。わはは。

テントの前、焚き火にヤカンをかけて、小さなテーブルと椅子。野営の準備は万端だ。

夕暮れ、遺跡の残骸である石壁の向こうで大きな太陽が沈んでいく。雄大だなあ…。

狼と犬のあいだ、赤と青の混じりあう空色が綺麗で、眺めているうちに、あっという間に夜がやってきた。

暗い!

焚き火は明るいけど、それにしてもそんなにしっかりとは明るくならないものなんだなあ。

空を見上げると、今日は白い月と赤い月の半月、青い月は三日月。それぞれの組み合わせや形で呼び名があるらしいんだけど、そういう暦の話とか、ちょっとした伝承とか書いてある本は資料室にはなくて、わからない。

資料室って言わば専門書が集まってるところだから、一般書がないのは仕方ないのだけど。

農業ギルドに、月の満ち欠けや季節で育ち方が違うという話の載ってる本があったのだけど、『立待昼の霜夜月が…』とか当たり前のように月の異名?が出てきて、それについては一切解説がなくさっぱりわからなかったのだ。一般常識をくれ。

廃都にもちょいちょい本はあるらしいから、そこで読めるんじゃないかなと思っている。

ヤカンからティーポットにお湯を入れて、茶葉を蒸す。焚き火でお茶。遠くは見えないけど、焚き火の周辺は明るいからこのくらいの作業なら困らない。本は読めないかな。

カップに注いで…と繰り返して6杯流れ作業で淹れたら、1つを残してしまう。ティーポットは『浄化』して片付けて、ヤカンにはまた『流水』をいれて『ピュリファイ』。すっかり浄水生活が板についてしまったぜ。

ヤカンのお湯が沸いたらそのまま片付けることにして、ぼんやりと星を眺めてみたりする。

『ムーンキャッチ』は用意してきたけど、満月以外だと『月明』になっちゃうので、今日は見送り。

月の満ち欠けがどういう運行をしているのかも猫にはまだ全然わからない。青以外の月を見たのも、今日が初めてだ。

月と星空を眺めつつ焚き火を満喫していたら、何か物音が聞こえる。最初は空耳か風の音かと思っていたけど、これは違うな。

「うっ…うう、う……ううう」

泣き声? 呻き声? ホラーですか? お呼びじゃないんですけど。

ぼんやりと遠くに白い霧?のようなものが見えたかと思うと、声と共にどんどん近づいてくるやつ。これはホラーですね。

実は猫、見えるやつは平気。

見えない、何かわからないものが迫ってくるのが怖い派。その点、あのチュートリアルの隠れ鬼ごっこはやばかった。あれ鬼は結局なんだったの?

さておき、なんていうか捻りのない幽霊である。透き通ってぼんやりと光る、女性の幽霊。近づいてくるとわかる、彼女はルイネアだ。耳の先が尖っていて、長い金の髪。

「うう、ああ、我らの故郷、白き花咲く我らの約束の大樹…、なぜ、なぜ…」

んんん?

これ、猫知ってる! 攻略サイトで見た!

え?

メインストーリーのなんだが??

猫、メインストーリーはまったくノータッチで来てるんだけど、何で出てきちゃったの?

メインストーリークエストと、お使いクエストはまったくの別物である。

文字通りこのゲームにおけるマレビトたちが歩む流れの正史が『メインストーリー』なわけで、サービス開始初期の頃は、公式イベントでメインストーリーが進行することがよくあったらしい。

そしてその展開上、現在ではすでに存在しない土地や建物、それにともない当時とは入手難易度が極端に違うアイテムなどが複数ある。

なので追っかけでメインストーリークエストを行うと、存在しない土地へ行くよう言われるなどして、途中で進行が止まってしまう。

もちろんちょっと回り道をすると回避して進めるようになってはいるのだが、その回り道が分かりにくくて、結構な数の人が途中から進行できない、という状態に長らくなっていたらしい。

補完進行ルートは早くから攻略サイトで紹介されていて、情報収集するタイプの人はちゃんと進めてたそうだけど。

でもやっぱり分かりにくいよねってことなのか『こういうことが起きたんだよ』という流れを別のチェーンクエストで履修して、途中からメインストーリーに合流出来るようにしたのが第三エディションからの『お使いクエスト』なわけだ。

お使いクエストをすべて終えると、学園都市のメインストーリーに合流出来るようになっている。

ややこしいのはお使いクエストはメインストーリーとは独立した別のチェーンクエストのため、合流する前であればメインストーリーと両方こなすことも可能だというところだ。

とはいえメインストーリーのクエスト報酬は渋く、たいしたものはもらえないのにめんどくさいため、エピソードを自分の手で見たい人以外はさくっと合流するよう推奨されている。

メインストーリーは廃都スタートなので、猫はまだ始めてもいない。そしてお使いクエストもまだメインとの合流地点に来ていない。

つまりこれは、バグ???

嘆く幽霊を尻目に攻略サイトを開いて確認すると、あったあった、これだ、『林檎の幽霊』。

……冒険者の街フロントでのメインストーリー進行後、『ルイネの林檎』を持った状態で遺跡の残骸で野営すると現れる、とな?

…たしかに林檎は持ってるけどさあ。

えーと掲示板、『林檎の幽霊』…はヒットが多すぎるな。『バグ』を足して検索、と。

お、発見。

『【チート】裏技探究スレ4【バグ】』…いろいろなスレがあるな…。

……『林檎の幽霊』がメインストーリーの進行に関係なく出てくるバグ。消滅済の場合は出てこない。問い合わせた結果、『仕様です』とのこと。修正見込みなし。選択肢によっては普通に林檎をぶんどられるので注意。『絶対に渡さない』を選択して遠慮なく殴れ。今のお前なら滅せる。推奨フルPTLV25↑、ソロならLV30↑(職による)――

今の猫では滅せない!!!

『林檎の幽霊』『戦闘』で検索だ!

……『林檎の幽霊』は不死・闇属性。霊体のため物理無効。光属性が弱点。残念ながらTUは効かない。体力魔力ともポーションを大量に使う持久戦を強いられるが、魔法師4人回復2人のフルPTで挑めばLV20に満たなくても勝てる相手。挑発は効かず対象無差別、テレポートもするため、タンクなし推奨――

猫はソロなので厳しいにゃん!?

…あ、追記がある。

……聖水使うと大幅に弱体化。LV10台ソロでも楽に勝てる相手。マケボで買え。――

持っててよかった『初心者聖水』!!

「お前、お前の持っているのは我らの果実……それは我らのもの…」

あれこれと怨み言を言っていた幽霊がこちらへ目を向けてくる。

ぽわわんと目の前に選択肢が浮かんだ。このゲームにおける選択肢はアシストで、少なくともこれに類する言葉を言っておけば分岐しますよ、のサインだ。示された以外の選択をすることも可能だし、NPCと話すのが苦手ならタッチ選択も出来る。

「これは猫のだから渡さないにゃあ!」

敵対宣言をすると幽霊は驚愕し、それから狂ったように笑い始めた。それなりに美しい女性の姿をしていた幽霊が変化していく。口は裂け、目は白眼が消えてすべてが黒く。両手足がだらんと力を失って、ふわりと浮かび上がる。

あ、待って聖水はどう使うの? 投げるの? かけるの? それとも武器とかにかけるの? 祈る?

わからん、投げておけば間違いないか??

「ならばお前を殺して返してもらおうか…!」

幽霊の顔がこちらを向いて、戦闘開始が宣言された。