軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

38.初心者還元・前

「猫の金策手段が断たれたにゃん~~」

「いやあ、猫ちゃんほどマイルームやら生産廻りが充実してる初心者いないからねえ。普通は庭で畑とか出来ないよ~、いっぱい儲けたねえ」

「それはわかってるけど、一度覚えた金の味が忘れられないにゃん~~」

「ダメだこの猫はやくなんとかしないと」

そんなわけで今日は露店を開いて管を巻いている。

フーテンさんはこの一週間で、服毒しつつ無事15属性を覚えきったそうだ。結果、教本売店が爆発したらしい。

元々が一属性に絞ってる(フーテンさんは風魔法師)上級魔法師だから、教本販売の基準LVもさぞすごいことになっただろう……と思ったらそうでもなく、中級入りたてくらいまでだそうな。それでもすごい量らしいけど。

そんなわけで、今日は15属性ありがとうキャンペーンとして、フーテンさんが教本詰め合わせセットを猫に持ってきてくれたのだ。

わーい。

10冊はさすがに多すぎる気がしますがね??

「受付のお姉さんに『初心者にプレゼントするオススメ教本、生活魔法を全部覚えて無属性魔法をかじり始めたところ』て相談したら選んでくれたんだよ~~教本プレゼントってNPCの間ではわりとよくあるらしいねえ。俺も知らない魔法が結構あって謎なんだけど、たぶん俺セレクトより猫ちゃんにいいラインナップなはずよ~」

なんと受付お姉さんセレクト。猫もあのお姉さんには『インパクト教本』以来、いろいろお世話になっている。なにしろオススメが的確なのだ。さすがギルドの受付さんである。

「ありがとうにゃ~ん! 最近、自室に『本棚』を買ったにゃん~早速しまって読むにゃんね」

「えっ?? もしかして『文豪の書斎』の家具買ったの? あれ部屋からめっちゃ浮くでしょ? しかも高い」

「にゃん? 猫は本屋さんで買ったにゃん。本屋さんは本棚も売ってくれるにゃん~」

「本屋さん???」

「知る人ぞ知る店にゃん。つい『羽根大全』も買っちゃったにゃあ」

「あれ買えるの!?」

「ちょっとお高かったにゃん」

「知らないとこでも散財してた気配…!」

散財しました。

だって図鑑系とか、やはり手元に置きたいじゃない。

『魔道具の源』や『森の仲間たち』も買ったし、『冒険者の知恵~採取すべき植物について~』ももちろん買った。『真円の書』も。

でもでも、これでも大分堪えているのよ! 本屋さんは魔性。

本屋さんではどうやらこれまで読んだ本だけが販売されるらしい。今のところ、本屋さんで初めて見た本は一冊もない。

だからあちこちで本を読んで来ないと、買える本は増えない。逆に言うと面白いとすでにわかってる本が買えるのだ。

そりゃあお金も羽つきで飛んでいくにゃん。

「フーテンさんのお部屋にインテリアとしても本はオススメにゃん~」

「え~~沼の予感しかしないにゃん……」

「底なし沼にゃん……」

本をインテリアにすることについては賛否両論あろうが、猫はゲーム内ならアリ派だ。そもそもログハウスには鳥の図鑑があるもんだよ。異論は認める。

本屋さんの場所は伝えておいた。散財しておいでよ。

フーテンさんが本屋へ旅立った後も露店は続く。

今日は買取露店のついでに『薬草(若葉)』とか売っている。

露店で売りにくいものしか販売物がないので早くぬいぐるみを手に入れたい。猫も身代わり店主になるんだ…。道のり長いけど。

無人露店も出来るけど、猫の商人ランクでは10分くらいで自動で閉められてしまうので、特に売れ筋アイテムのない露店としては微妙だ。

ちなみに今日の買取アイテムは、初心者シャツとズボンを1000zでそれぞれ10着まで、これはまあちょっとした還元祭のようなもの。

万能薬で荒稼ぎしたので、ちょっとくらいは。いうて2万だけど。しかも元はすぐ取れるという。

後は『ビー玉』を1個10zで。

こっちは魔法玉で元が取れるしもう少し高くてもいいんだけど、ティアラさんから買取りなら初心者相手でもそれで十分と言われている。

あまり高くするとわざと失敗して売る人も出るからよくないって。なるほど?

他には最低品質の初心者素材、爪とか牙とかの買取。これは素材買取所で買ってもいいんだけど、ついでなので。

猫がギルドで買う金額にしてるので、売る方にとってはギルドよりちょっとだけ高めのはずだ。魔物素材についてはわざと品質を低くするってのは出来ないらしいから、買い取るのも安心だ。

金策なのに買取ばかりしてる?

うむ。なにせ錬金術は秒で素材が溶ける。釜は特にね。錬成陣はまだましだけど、それにしても魔法玉なんて消耗品だから、1個2個で済むものじゃない。どんどこ作ってる。ビー玉もシュワシュワ溶ける。

『光魔法玉』『闇魔法玉』を売ってるのは、ダンジョンの仕掛けで使えるからだ。

元々ダンジョンには魔法で動く仕掛けは多いらしくて、その中でも取得者が少なくて解除をあきらめがちなのが光と闇なんだそうな。

それを聞いたので販売しはじめて、細々と売れている。1個300z。値つけは大商人フーテンさんがしてくれた。飛ぶようには売れないけどまあまあ売れる、特に転売もされてない、いい案配。

ちなみに時とか空間属性に至ってはほとんど取得者がいないので仕掛けがあるかどうかすらさだかではなく、認識もされてないので、売り出すのはまだ早いんじゃないかって。マケボ棚にも限りがあるしね。

リーさんに試してもらったけど、菱形でも『魔法玉』は作れるけど、『生活魔法』は込められないらしい。低級素材を使用することを考えると、初心者の金策向けじゃないかって。

『生活魔法』じゃなくても、各種属性魔法のLV1で取得する魔法には、MP5消費の戦闘向きじゃない魔法がある。これを込めて1属性分の消耗品『魔法玉』として売るのでも、十分金策になるんじゃないかというのがリーさんの見解だ。

『生活魔法』覚えてなかったら、自分の使える以外の属性は買い集めてる、と言ってた。『魔法玉』で圧縮や合成試して、いいのが出来そうなら魔石を買って集中的に作る、ていうのをするんじゃないかって。

錬金術で使う魔石、属性によりけりだけど、安いのでも10万からする。全属性揃えるのは錬金術師の初期の難関らしい。魔石なので磨耗するアイテムではあるけど、一度買い揃えてしまえば長く使える。でもそれまでの道程がとにかく長いとか。

なるほどなあ。

これも『錬金術』と『生活魔法』がセット販売になるまでの限定金策かな。

猫が思うに、真円は釜でいうところの『圧縮』、菱形は『合成』なんじゃないかと考えている。圧縮と合成で同じアイテムが作れることもあるが、基本的には別の技術で、作れるものはそれぞれ違うのではないか?と。

菱形買ってないから何もわかんないんだけどね!

ちなみに錬成陣にはあと『星型』がある。そして釜も『錬金術』LVが上がると『変成』というアーツを覚えるらしい。

そんなことを思いつつ、教本をパラパラしながら露店してると、結構、店の前で立ち止まる初心者服の人は多い。

このゲーム、装備をすべて脱ぐ裸にはなれない仕様だ。なので目の前で装備がローブに変わったりすると、脱ぎたてのシャツとスボンが売られたのだなとわかる。

ふふ、気持ち的にちょっと微妙だが釜に入れちゃうから平気。

お。シャツもズボンも10枚ずつ買えたみたいだ。よいしょ、と買取をしまう。

「あ、あの、シャツとズボン以外の初心者装備の買取はないですか?」

話しかけてきたのは銀髪の人族の少女、初心者ローブに着替えたて。腰に差してるのは杖。魔法使いかな。

腕にミミットを抱っこしている。額に石はないから『使役』の従魔だ。珍しい。

「ものによるにゃん。靴とナイフなら1000z、他は要相談にゃ」

「ナイフと靴ならあります! あとは帽子と、ベストと杖なんですけど」

そのラインナップならマケボで買えばすぐ10個集まるな。

集まりにくいのは鎧と、その他のレア。初心者メガネとか、オシャレアクセサリ系もあるのでややこしい。マケボに売られてないか、売ってても謎に高額なので買えるけど買いたくない。

「にゃん~全部1000zで買うにゃん。今日は還元祭だから、特別にゃん」

「やったあ!」

純粋に喜んでもらえると嬉しいね、て待って、裸足じゃん。

「靴、ないにゃん?」

「え、売ろうかと思って」

「ダメにゃん。人族は靴を履いてないと移動速度がめちゃくちゃ落ちるにゃん。靴は絶対にゃん」

それもあって、初期取得スキルでひとつでもパッシブスキルを取っていれば『初心者の靴』が手に入るようになっている。

掲示板の初心者向けスレにも書いてある。『まず靴を履け、話はそれからだ』と。

「そうなんですか!? 知りませんでした」

靴は丁重に返して履き直してもらった。

「にゃん~武器も売っちゃって大丈夫にゃん?」

「杖はなくても魔法は使えるので」

「ダメにゃん、杖がないと魔法を使う速度が落ちるにゃん。代わりの装備がない限り、武器と靴は売っちゃダメにゃん」

「そうなんですか!?」

なんだろうこの子、心配…。

「攻略とか掲示板とかまったく見ないタイプにゃん?」

「見てないですねえ…、掲示板は読み方がわからないというか、スラング?とかが苦手で」

「スラングで話してるのは一部の特殊なスレッドだけにゃん。初心者向けまとめ系のスレッドは目を通しておくことをオススメするにゃ、有志が気をつけるポイントとか、初心者がつまずきやすいところをわかりやすくまとめてくれてるにゃあ」

「うーん、でも冒険の醍醐味?みたいなの薄れません?」

「裸足に素手でポルクスに蹂躙されたいならそれはそれで醍醐味だと思うにゃん」

「ポルクスめっちゃ強いですよね……」

ポルクスはそこまで悲壮感を背負うほど強くないはずよ。

「差し支えなければLVはいくつにゃん?」

「5になったところです」

思ったよりかなり低かった。そりゃポルクスめっちゃ強いわ。

「見たところ、純生産志望で戦闘は一切したくないとか、そういうタイプではないにゃんね?」

「はい、戦闘も生産もほどほどにやりたいエンジョイ勢です」

「従魔がミミットな辺りでエンジョイなのはわかるにゃん」

『使役』でのミミットは基本、愛玩用従魔と言われている。

まずホルンミミットに進化させて、さらにペリドットミミットになると魔法使いとして開花するが、そこまでが長い。二段階進化だもの、大変そうなことはわかる。

だから従魔のスタメンを揃えた後、四匹目以降で気長に育てる愛玩用の位置付けなんだそうな。

従魔は召喚獣と違ってスキルは覚えず、LV上げしかないので初期メンバーがミミットは修羅の道…とか言われていたはず。

本人が先にお使いでLV上げて盾になってミミットの養殖をするのと、一緒にLV上げていくのとどっちがいいんだろうな?

「お使いクエストでLV20まで上げる方法があるのはさすがに知ってるにゃん?」

「そんなのがあるんですか!?」

お、おう…。これは公式から案内出てるし、第三エディションでは結構目玉だったはずなんだけどな。みんなにすぐ追いつける!みたいな。いうて20だけど。

ちなみに第三ではLV80にLV上限がありそう、て噂。第二であったLV60のキャップ外れたらしく、前線はLV上げに必死である。

「そういう道もあるにゃん~。詳細は攻略サイトを参照するにゃん。猫はクエストで10まで上げてそこからはまったり遊んでる口にゃん。LV20までにしか出来なかったり、やりづらいこともたくさんあるから、どれも好きずきにゃん。クエストしてもスキルLVは上がらないのが注意にゃんね~」

戦闘に関しては、猫はまだ『投擲』も取れてないので偉そうなことは何も言えない…。ポルクスはルイがやっつけてくれるし。

「LVに関してはまったり上げればいいかーって感じなんですけど、なにしろお金がなくてですね…、生産で金策しようにも、材料を手に入れるのも大変ですし」

「金策は初心者の悩みの種にゃんねえ。でもミミットはその辺でご飯食べられるからまだよかったにゃん」

「えっ」

「え?」

なんか変なこと言った?

「そ、その辺でご飯を…?」

「ミミットは草原に放つと自分で食事するにゃ。草原の生き物は、みんなそうにゃんよ。『採取』持ちにゃん?」

「あ、はい、持ってます」

「ならミミットがご飯食べてる横で採取すればミミットが食べてるものが手に入るにゃん。採取スポットじゃないけど、そういうものにゃ」

「え、じゃあもしかして『牧草』って買わなくてもよかった…?」

「…今までミミットを野に放ったことがなかったにゃん?」

「猛ダッシュで消えたと思ったらポルクスに齧られてたことがあって、それから抱っこ移動してました…」

「初心者はポルクスのいない南平原で遊ぶにゃん…。北平原はLV15越えてからにゃん」

草原にまでポルクスが出てくるのは東か北だけど、たぶんこの感じだと北に行ったんだろう。

「が、学園都市に行きたいんですけど」

「乗合馬車に乗るか、北の広場で『ポータル』頼むか、護衛を募るにゃん。暇な人がいれば連れていってくれるらしいにゃん。まあ『ポータル』にしても護衛にしてもお金はかかるにゃんね」

「やっぱり金策しないとぉ!」

「にゃあ…」

ここまで情報なしで来る人もいるのだなあ…、とちょっと遠い目になってしまった。

『ポータル』はPT単位での転移魔法だが、使用には空間属性の魔石(お高い)を消費するので、無料で使ってくれることはまずない。

PT人数に余裕があって行き先が同じなら、初心者を無料で乗せてくれることもあるらしいけど、それを宛にする初心者を嫌う向きもある。

猫の『下級転移石(学園都市)』を初心者スタミナポーション100個と交換で渡す手もあるけど、うーん。

この調子では学園都市に行ってもカツカツじゃないか?

心なしかミミットも痩せているように見えてしまうぜ。そんなことはないんだろうけど。

先日また野菜売りのおばちゃんの豊作大セールしてて、ついつい買ってしまった最低品質の『黄キャロ』がいっぱい余ってるのであげよう。

抱かれているミミットにちょいちょいと『黄キャロ』を見せると、両手を揃えてこちらへ差し出した。

ふあ、この子、チョーダイしてる…!

「え、あああ、ごめんなさい買う余裕が…!」

「いやいや、そんな非道な押し売りしないにゃん。これは最低品質の従魔おやつ用野菜だから気にせず食べさせるといいにゃあ」

「わ、あ、ありがとうございます」

少女は一旦その場にミミットを下ろした。少女に黄キャロを渡すと、ぺこりと礼をしてからミミットに食べさせ始めた。

うむ、ペットに勝手にご飯やおやつをあげるのはさすがに礼儀に反するので、受け取ってくれてよかった。