軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40.適材適所

『うーん、『召喚石』持ってても反応は特にないな』

『おやー? 予想が外れましたか』

『修理が始まったからかもしれないにゃん? もうちょっと待ってみるにゃ』

『んだな~。ティアラちゃんはゴーレムいらんの?』

『わたくし、攻撃は最大の防御と心得てますの!』

『あっはい。そのタイプの人ね』

ティアラさんも召喚枠は攻撃タイプで埋めてる人か。召喚枠にゴーレムがいる人はヒーラーか、ソロ魔法師のどちらかが多いそうだ。ティアラさんはたぶん、狩りにいく固定仲間がいるか、野良を組むタイプなんだろう。たぶん前者かな? 生産職だしね。

散らばっていた工具を使って、ティアラさんはゴーレムの腕や脚から丁寧に鉄板を剥がしていく。中身は銅線のようなものがびっしりと束になって詰まっている。ケーブルの中のよう、といえばそうなんだけど、ちょっとグロテスクに感じちゃうのが不思議だ。ゴーレムも生き物の一種だからだろうか。

「そういえば 魔道傀儡(まどうくくつ) の、『魔道石』っていうのはどうやって作り出されるんです?」

「錬金術師の秘術だと言われているね」

ショーユラさんの質問に、ゴーレムおばあさんが答える。

「にゃあ、『錬金術』だったにゃん?」

「おや、マレビトにも錬金術師はいるのだね。錬金術師の中でも、魔道に足を踏み入れたものが辿り着くそうだよ」

「『魔道工』にゃんね。猫も『魔道工』にゃん。猫たち、人形製作師になる方法や、ゴーレムを進化させる方法を探してるにゃん~」

『ド直球にゃんー!』

こういうのは回り道しても仕方ないからいいの!

「人形製作師はここには残っていないよ。みんな出ていってしまった……、いや、あるいは……」

「あるいは!?」

「管理者権限を持った人形が、もしかしたら残っているかもしれない。あの子なら、主人の技術の一端を受け継いでいてもおかしくないね。でも……、完璧な技術ではない」

「ほうほう?」

話している間、ティアラさんは工具を使って鉄板の歪みを叩いて直している。トンテンカンとなかなかにぎやかな音。

『ううん、この分だと素材が足りませんわね』

『おお? 何が足りない感じ? マケボで買える?』

『今のところ『ゴーレム板』と『人形のネジ』が足りませんわ。これは、一階の売店で売っていたはずです』

『なるほど。それなら作業者が行くより、買い出し班作った方がよさそうですね!』

『それと、手も足りませんわ。わたくしだけだとおそらく時間がかかりすぎてしまいます。外では『鍛冶』を使うクエストにはありつけませんでしたし、硝子連合を呼び集めてしまってもいいと思いますの』

『了解にゃん~、ここは狭いし、猫たちはいったん外に出た方がよさそうにゃんね?』

『そうですね、『裁縫』や『錬金術』のクエストが外にはあったというのも気になりますし』

『んじゃ、俺が買い出し行ってこよかな』

『よろしくお願いしますわ!』

そういうわけで、ティアラさんを残して猫たちはいったん転移扉から外へ出ることに。

「恐ろしいことに気づいてしまった……」

「にゃん?」

「この転移扉、前後から触らないと反応しない!」

「誰かが救助に来ないと出られない仕組み……!」

おや。猫たち、ティアラさんたちが気づいてくれなかったら途方に暮れてたパターン? ……いや、過ぎたことはよかろうなのだ!

最悪『リターン』があるので、閉じ込められたわけでもないしね。まあ勝手に帰っちゃうのはさすがにマナー違反だし、最終的には手当たり次第、個別チャットを飛ばしてただろうけど。

「MMOしてるとたまにボッチを滅する仕掛けが出てくるよな」

「MMOですからねー」

「そこは仕方ないにゃんね~」

「そうなんだけどなっ!」

タスクさんは納得いかない顔だ。でもタスクさん、別にボッチじゃなくない? なぜか自認がボッチな人って意外といるよね。ケータくんとかさ。

あーだこーだと話しながらも、ショーユラさんが硝子連合に声をかけてくれたらしい。

「お待たせしやしたっ! こんなとこあるなら早く呼んでくれればよかったのにー」

「早い者勝ちですわ!」

「さすが横暴ですわあ!」

「まあまあ、呼んでくれたんですからいいじゃないですかー」

「そうですぞ。まずは作業にかかりましょう。ひとまず頼まれたアイテムは買ってきました」

「あれっ、買い出し班いらん感じ!?」

「必要ですよ!」

無事にナマナマさんたちがやってきて、部屋は一気ににぎやかに。

猫たちは交代、部屋の外へ出た。

「タペストリーの裏とかあるあるですねー!」

「忍者屋敷みたいにゃん~」

壁にはゴーレムの絵が描かれたタペストリーがかかっていて、いかにもな隠し扉だった。こういうの猫、好き。

「他にもいろいろありそうにゃんね!」

「芸術都市、奥が深そうです」

うんうん、とうなずく蛍光グリーンのまぶしい熊とも途中でお別れ。ショーユラさんはタスクさんから教わった『裁縫』クエストへ、猫はティアラさんから教わった『錬金術』クエストへと向かう。

タスクさんはあの小部屋と外部との連絡係兼買い出し担当として、しばらく売店との往復を担うようだ。

なにせあの小部屋の中はアライアンスチャットはおろか、PTチャットまで不通だったからね。両方使えないのは、やはり不便だったなあ。

それだけ特殊なイベントだということか。

そう思うと離れたのが少し惜しい気もしてくるが、猫にできることはしばらくなさそうだ。切り替えていこう。

「進展があったら教えてほしいにゃん~」

「あいよー。そっちも頑張ってなー」

手を振って、猫は石造りの階段から3階へ向かう。

『錬金術』を必要としていたのは3階にある大部屋で、金属類が山積みにされた場所らしい。開きっぱなしの扉を覗いてみると、かなり広い。そしてたしかに金属類が山積みになっている。一面がスクラップのような金属片で埋まってるのは、なかなか壮観。

中へ入ってみると、リーさんの姿が見えた。あちらも気づいたようで、パッと立ち上がる。

「ランちゃん!」

「リーにゃんも『錬金術』しにきてたにゃん?」

「そうよ~。ランちゃんも呼んだけど反応がなかったから、またなにかクエストでも引っかけたんじゃないかって噂されていたのよ」

「にゃあ~、当たらずとも遠からずにゃ。猫ではクリアできないからお任せしてきたにゃん」

「あら、ランちゃんがクリアできないなんて、複雑な条件だったのかしら」

「『鍛冶』とか『召喚石』とか足りないものがいっぱいあったにゃんね~」

「それは残念。でもランちゃんがきてくれて助かったわ」

「にゃん?」

リーさんがいうには、数がとにかく多くて大変だったらしい。

「アライアンスで来ているからでしょうね、必要個数が多くって! フーテンを呼ぼうかと思っていたくらいなのよ」

そういえばフーテンさんは『錬金術』のラーニングお試し中だったんだっけ。

「にゃん~、きっと暇してるから呼んだらいいにゃ?」

「それもそうね?」

リーさんがPTチャットでフーテンさんを呼び出している間に、猫はこの部屋の『錬金術』クエストを受注する。

依頼主は部屋の隅に座っている人形で、糸のない操り人形のような姿をしている。求めているアイテムがあるが、失くしてしまった、と嘆く。

「むかしは錬金術師がいて作ってくれたけれど、今はもう……」

部屋の中のアイテムを整理して、求めているアイテム『真鍮の操骨』を手に入れるか、部屋中に転がっている素材『真鍮屑』を圧縮して『きれいな真鍮』にし、別のNPCに『真鍮の操骨』に加工してもらう必要があるそうだ。

「にゃあ、鍛冶師がいるにゃん?」

「うん、いつもぼくたちの修理をしてくれる子がいるよ」

操り人形くんが項垂れたまま、不自由そうにうなずく。

なるほど、外に『鍛冶』のクエストがなかったのはそれが理由か。

てことはもしかして、猫たちの正解はそのNPCをゴーレム・ウィッチへ向かわせることでもあったのかもしれない。

……いや、プレイヤーで解決出来そうだから、そこはまあいいか。

「にゃん~、部屋の中を探すのはなかなか難しそうにゃんね……」

部屋の中には『真鍮屑』の山がいくつもあって、退けずには奥へ進めない。退けるためには、一度アイテムを取得してインベントリに入れる必要がある。

もし『真鍮の操骨』がそこには入っていたなら、このときにわかる方式。でもたぶん、ずっと奥の方の山にあるんだろう。

猫なら3個くらい山をインベントリに仕舞えるけど、それじゃ焼け石に水なくらいには大量にある。ひたすらスクラップの山。

「『きれいな真鍮』はどうやって手に入れるにゃ?」

「今『真鍮屑』を3回圧縮して『きれいな真鍮』の最低品質を得たところよ」

「にゃん!?」

そこから更に2回圧縮しないと通常品質にならないってこと!?

「と、途方もないにゃん~~」

「それでも山は減るから、『真鍮の操骨』が見つかるのが早いか、『きれいな真鍮』の出来上がるのが早いか、ね」

「にゃん…」

出来る間際に見つけたら徒労感すごそう……!

「お待たせ~、来たよ~~。あれ、猫ちゃん戻ってきてたの!? てか猫ちゃんいるなら俺いらなくない?」

「人手はいればいるほどいいにゃんよ~」

「そうよ~、こんなに材料がいっぱいあるなんてラーニングチャンスよフーテン。好きなだけお使いなさーい」

リーさんはずいずいとフーテンさんの背中を押し、錬金釜の前に座らせた。ぐっと肩を押さえ込んで、逃がさない姿勢だ。さては飽きてきたな。

ちなみに部屋には設置された錬金釜が3つあり、誰でも使える仕様になっている。それならその辺の人を引きずり込んで使ってもらってもいいのでは?と猫は思ったのだが、それは難しかったらしい。

「PTに錬金術師がいないと、そもそも部屋に入れないみたいなの。だから入れたのはうちと、ランちゃんのPTだけ」

そしてティアラさんたちは他にも生産スキルがあったから、手伝うとしても他を巡ってからにしよう、ということになったそうだ。そりゃスキルを持ってない作業を手伝うよりは、そっちのが優先順位高いよね。

「でもスキルがないとすごい弾けるんじゃない?」

「弾けてもアイテムが減れば結果オーライよ!」

弾けるというのは、錬金釜が失敗したときのボン!て爆発するやつだ。スキルがあると失敗しない圧縮も、スキルなしだと爆発してアイテムが霧散することがあるらしい。

でも要はアイテムを溶かせれば、それでいいのだ。もったいないけどね。

「レッツアルケミーにゃん~~!」

「にゃ、にゃん~~!」