軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

29.『岩蜜』を辿って

学校、温室、神殿とぐるぐる歩いてきたので、ちょっと休憩。

学園都市はあちこちにお菓子の屋台がある。やはり頭を使うから甘いものをって発想なんだろうか。キャンディ系が多くて、色とりどり、形いろいろで見ていて飽きない。ときどきなんでこんなものを飴に…? となる謎の素材もある。いやほんとなんなのだろう、虫とか爬虫類とかゲテモノ系。絶対買わんぞ。

強烈に弾けて危ない『ボムキャンディ』なるものもある。店員さんによると食べると危険らしい。食べると危険な飴とは……?

「蟻退治にオススメですよ!」

「にゃあ、武器だったにゃんね」

そういう用途もあるんだなあ。

ちなみに蟻は森や砂漠でお馴染みのmobだけど、ここで言われているのはたぶん砂漠の方のだろう。外殻が堅くて物理だと難があるのは虫系のお約束だが、耐性があって虫系の弱点である火も氷も効きにくいという厄介な敵らしい。そこで飴玉を与えて内側から破壊すると楽、とのこと。なかなかえぐい。

蟻と戦う予定はないんだけど、砂漠へはそのうちサンドワーム狩り(金策)に行くつもりだ。

備えあれば憂いなし、ということでざっくりと購入。

『飴玉』といえば『料理』レシピで作ったことがあるけど、『ボムキャンディ』も作れたりするのかも。『料理』で危険なものが作れるとは思わないので、『調薬』になるんだろうか。

いや、待てよ。爆弾っぽいものって、このゲームにはないんじゃないっけ?

「これって何で出来てるにゃん?」

「やだなあ、お客さん。そういうのは企業秘密ですよ」

「それはそう」

「でもまあひとつだけお答えできることがあるとしたら……、砂糖が特別ってことですかね!」

「砂糖もいろいろあるにゃんね~」

「ちょっと硬いお砂糖を使って、じっくり練るのがポイントなんですよ」

「にゃあ……」

砂糖に種類があるのは、以前シュガーマンドラコラから出来る『妖精の砂糖』の話を聞いたから知ってる。いろいろランクがあるんだよね。

硬い砂糖か。

思いつくのは黒砂糖とか、氷砂糖とか。貧弱な猫の想像力よ。

まあそう簡単にレシピが明かされたりはしないものだ。

あとは無難にフルーツの飴玉入りの瓶をいくつか買って、お土産に。

「たくさん買ってくれてありがとう! ……おやおや?」

「にゃん?」

「大変だ、飴に使う砂糖がもうすぐ切れてしまう。どうだろう猫さん、ちょっと頼まれてくれないかい?」

「お使いにゃ?」

「そう。今ちょうど目が離せないところなんだ。僕のために『岩蜜』を持ってきてくれないかな」

「にゃあ、『岩蜜』はどこで手に入るにゃん?」

早速、硬い砂糖っぽい名前が出てきたな? 『飴玉』のレシピ関連のクエストだろうか。

「『岩蜜』はホーリーファームの特産品なんだ。買ってきてくれたら、『ボムキャンディ』の基礎レシピを教えてあげるよ」

「企業秘密はどうなったにゃん??」

「ふっ……。実は『ボムキャンディ』は、威力も効果も頭打ちなんだよね」

人が作る『ボムキャンディ』が気になるけど、他店にレシピは流したくない。飴屋の青年の複雑な心境であるらしい。

そこで飴に興味のありそうで、『料理』持ちの猫が目をつけられた、とな。なるほど??

「にゃあ~、猫、『料理』は得意じゃないにゃんよ?」

「簡単なレシピだから大丈夫さ。『岩蜜』、よろしくね!」

「にゃあ、買ってくるにゃん~」

押し掛けクエストっぽいけど、面白そうなので受諾しておく。

ホーリーファームって、自由都市で野菜を売ってるおばちゃんの村、もとい街だ。農家神官たちのマレビトダンジョンがあるっていう。

元々は違う村名だったんだけど、街に昇格するにあたって改名することになって、名誉街長になったプレイヤーが名付けたのだとか。

ちなみにノーカさんが名誉町長で、イナカノ街ってつけようとしてみんなから猛反対を食らってホーリーファームになったらしい。農家神官スレにあった。さすがである。

ホーリーファームは行ってみたかったし、ちょうどいい。

早速、ホーリーファームへ出発。

街道が整備されているので、道中はルイに乗ってのんびり旅スタイルだ。街を作るって、大変なんだな。でも道を整備するって大切だ。おかげで猫は楽を出来る。

教本を読みつつ進んでいたところ、レトが突然ピョンピョンと肩の上で跳び跳ねた。

「にゃん?」

はしゃぐようにルイの上を走り回って、杖をふりふり。

「にゃっ、覚えたにゃん!?」

ついにレトもミニ教本を読み終えたのか!?

うんうんとレトはうなずく。おお!

というかそもそも、レトの読んでいたミニ教本が何の教本だったのか猫は知らないんだよね。『小さな本』としか表示されなかったものだから。

早速、レトのステータスを表示させてみると、確かに増えている。

「『クリーンヒット』?」

聞いたことのない魔法だな。

調べてみると、3秒間だけ幸運値にプラスがかかる魔法らしい。バフ魔法だ。生産者とクリティカル愛好家には垂涎の魔法だが、教本売店には並ばないためインプットが出来ず、教本自体の入手もレアなのだとか。

希に生産型の従魔が覚えている(または覚える)パターンがあり、当たり個体なんだって。

ふむ……。

たしかに生産には幸運値がつきものなんだけど、『錬金術』はその限りではないんだよね。『農業』には関係してたりするのかな? その場合、かけるのはプレイヤーと植物とどっち?て話になるし、悩ましいぞ。

それにレトとしては攻撃魔法を覚えたかったような気がするので、う、うーん。

当たったけど外れたような、微妙な気持ち。

でもレトは新しい魔法を覚えられて嬉しそうだし、まあいいか!

猫も『料理』や『調薬』なら幸運値関係あるしね。全然役に立たないわけじゃない。

それにもし『カウント』で載せられるなら結構、いい効果かもしれない。うんうん。

使うと頭上に大きな星がポンッと出てきて、三度弾ける。このタイミングに合わせていろいろやると更に幸運の恩恵に与れる、と言われているらしい。情報源がロマン砲スレなので怪しいが……。

ちなみに『クリーンヒット』はロマン砲スレでも人気の魔法だ。久しぶりに見たなロマン砲スレ。

ロマン砲、ロマン羽根以降は新しいロマンを追う派と、ロマン羽根での堅実なダメージを推していく派とが生まれたらしく、新ロマン党と、真ロマン党が分離しかけていると聞く。ロマンにもいろいろあるんだね。猫としては新しいロマンを追求する新ロマン党を応援したいところだ。懐的には真ロマン党にお世話になります。

スレを見つつレトの出す大きな星を眺めているうちに、ホーリーファームへ辿り着いた。

学園都市や自由都市ほどではないけど、ちゃんと壁が立っていて、でも中にはいってみるとまだ作りかけのところも結構ある。それほど広くはなさそうで、村から街へのバージョンアップ途中を感じさせる。なんかちょっとワクワクしちゃうね。

キョロキョロ見回しつつ村へ入っていくと、早速見覚えのある人にあった。

「おっ、猫ちゃん久しぶり」

「タスクさんこんにちはにゃん~! お久しぶりにゃ」

「あれ、今日来るって言ってた?」

「にゃん~、連絡はしてないにゃ。用事が出来ていきなりやってきたにゃん」

「さすが猫ちゃん気まぐれにゃん」

農作業着のタスクさんは鍬を担いで、猫と話しつつ空中に指を滑らせる。誰かと連絡を取っているのだろう。

ホーリーファーム、みんなも用事があるだろうしいる人とお話しできればいいや~て思ってたけど、もしかして来る前に連絡した方がよかっただろうか。

「アルミハクとノーカが、猫ちゃんきたら見せたいものがあるって言ってたから、見つけたらよろしく」

「了解にゃん~!」

「マレビトダンジョン行くんだったら南の方の洞窟な。誰かしらいるはず」

「ありがとうにゃん!」

タスクさんは畑の区画整理の最中らしいので、その場で別れる。

ホーリーファームは街壁のなかに広く畑が広がっている街だ。街というより壁があるだけの村なんだよね。ノーカさんのことだから、建物より畑を増やしているんじゃないか? そのくらい畑が広がっている。区画整理も大変だろう。

こういうとこじゃ白ラコラなんて育てられないよねえ。猫の庭は白ラコラを育てるのに最適なんだな、とかちょっと考えてしまう。いや、ラコラ王国の再興はしたくないんだけど、したくないんだけども。

脳裏に浮かぶ在りし日の白ラコラたちを振り払いつつ、まずは『岩蜜』探しだ。

蜜と名がついているものの、砂糖の一種だという話だ。むかしむかしローマの人々がインドの砂糖を見て「インドでは蜂の力も借りず石から蜜を取っている」と驚いたという話を読んだことがある。『岩蜜』というのもきっとそこからきた名前だろう。

てことでまずは食料品店を当たってみよう。

たのもー。

「『岩蜜』ですか。あれはマレビトさんたちが育てて、作っているのですよ」

「にゃんと」

クエストのものだからNPC由来のものかと思ったら、プレイヤー発のアイテムだったのか。

「販売はされてないにゃ?」

「マレビトさんが卸してくれたときには、こちらで販売させていただいてます。今日はまだですね」

「にゃあ~、マレビトさんの方を当たってみるにゃ」

「そうしていただけると助かるわ」

クエストのルート的にプレイヤーが挟まるとかなり不安定になりそうなんだが、いいんだろうか?

それともプレイヤーがくるまでは幻の産物だったとか、そういう話かな??

マレビトダンジョンへ寄るので、ノーカさんに連絡を取っておく。

『ホーリーファームへ来たにゃん~、マレビトダンジョンにもお邪魔していいにゃん?』

『ホーリーファームへようこそ。どうぞ、寄っていってください。お待ちしてます』

簡潔なお返事をいただいたので、早速向かう。タスクさんが言ってた見せたいものがあるって話は、会ってからかな。

しかし本当にのどかというか牧歌的な村の風景なので、街壁で背景がないのがなかなか残念だ。まあ害獣とかから守られると思えば、風景なんて言ってられない話なんだろうけども。