軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17.雪崩の後先

「ミツメの秘密を探れっていうクエストがありまして。ミツメを倒すとちょっとずつ進むんですよ!」

「にゃあ、そんなクエストもあるにゃんね~」

そういえば小人族も三つ目の種族なんだっけ。ミツメの秘密とやらも気になってしまう。いや、猫は他人の種族クエを気にするより、自分の種族クエを探さないといけないんだけども。

「なんか、ますます人為的なものを感じちゃいます!」

「せやなあ…、地人族か地鼠族でも関わってるんか?」

「地人族! その線は考えていなかったな」

ロッテンさんが驚いたように言い、ヒナを抱っこしながら思案に耽る。

その間に猫は魔法玉をポイポイとゴーレムに投げつける。弱点属性を探るにはこれがいちばん簡単なのだ。

おっと、ダメージ星が出た。

「雷属性にゃんね~~」

「オーソドックスなのきたね、鉄ゴーレムかな?」

「地人族が作ったにしてはショボい感じもするな」

「たしかに。ドゥーアでみた若様のゴーレムを考えると、かなり見劣りするわね」

「ほんじゃ仕事しま~~す」

雷属性のヴィを召喚したフーテンさんが後ろへ下がり、ヴィが『サンダーストライク』を放つとゴーレムは呆気なく倒れた。

「にゃ??」

「やっぱり見かけ倒しのゴーレムか」

「いくら弱点属性だからって、BOSSが一撃はないよねえ」

ガラガラガラ……と崩れ去ったゴーレムのなかに人は乗っておらず、呆気なくドロップアイテムと瓦礫に変わった。

ドロップアイテムは『鉄鉱石』と『錆びついた眼』となかなかショボい。

「中身も入ってないし、こりゃ地鼠族のゴーレムやないな。真似て作った 紛(まが) いもんとちゃうか?」

「偽物のミツメシロクマー、か…」

「なにか気になることでもあったにゃん?」

ヒナを抱えつつ憂いのある表情を浮かべるロッテンさん。理由を尋ねてみれば、首を振る。

「いや、禁足地の守護にはミツメがいると言われていたのを思い出しただけだよ」

「ちょ、ちょっと詳しくお伺いしたいですね!?」

サッサさんがぐいぐい行くと、ロッテンさんは苦笑した。

「そのままの伝承だよ。ミツメが守るは人が足を踏み入れてはならない大地。乙女の眠りを預かって、守護には目が3つあるのだと」

「ほうほうほう!」

吹雪の乙女は眠っているというのが、ビオパールでは共通認識っぽいね。石壁の街ボウフォルでは女王を異界に閉じ込めちゃったみたいだから、かなり違う。

でも人が足を踏み入れないような土地に追いやられているとも取れるし、なんとも言えないか。

未確認魔物改めゴーレムを倒してからも、冬山登山は続く。何度かノーマルのシロクマーと遭遇したが、逃げていった。BOSSが倒されたからだろうか。逃げてくれるのは助かる。

途中で食事休憩を取ったりしつつ雪道をひたすら登り、ついに氷の尾根まで辿り着いた。

「おー……、 吹雪(ふぶ) いてますなあ」

はい。

ホワイトアウトしちゃってまっしろけ。能天気に感想を述べていられるのは、ロッテンさんにかわって『ウィンドカーテン』を使ってくれたフーテンさんのお陰だ。習熟度の違いか、範囲が広くて助かる。

「なーんにも見えないねえ」

「親ペングーを探せっていっても、これじゃあね」

「さすがに何も引っ掛からんな……」

「にゃあ、とりあえず合奏してみるにゃん?」

「それしかなさそうね~、よろしく~~」

「私はヒナをみているよ」

ロッテンさんが一旦、ヒナを雪面に置く。ヒナはぼーっとしている。おねむかな?

『トロンポス・ベル』はなかなか爆音なので、さっきと同じくリカからは降りる。

おっと、雪がかなりやわらかい。同じく降りたサッサさんはズボッと沈んで、バタバタともがいている。猫、思ったより軽かったみたい。

「大丈夫そ?」

「やるにゃん~!」

ファントム・フルクに乗ったままのフーテンさんから心配されたけど、幸い吹雪は止めてもらっている。風もないので、足元がちょっと柔らかいくらいなら問題ない。猫は。

「私も大丈夫です! いけます!」

「頼もしいにゃん~!」

サッサさんも起き上がり、いけるようなので早速合奏。

『リリー・リリー』の最初の音が出始めると、これまでとは違った現象が起きた。ふわりと猫とサッサさんの周りを、金粉が取り巻いたのだ。

音が続くにしたがって、ゆるやかに金色が渦巻き、さざ波のように広がっていく。ビオパールで聞いたラッパの音色とはちょっと違う動きだけど、これは成功なんじゃないかな!?

そして最後の音まで奏で終わるかどうかというタイミングで、プアー……とラッパの音が聞こえてくる。

思わずサッサさんと顔を見合わせた。

演奏の続きを奏でるように、ラッパの音が繋がる。すると金粉の流れが変わって、猫たちをひとりずつくるりと包んだあと、最後にヒナに向けてキラキラと降り注いだ。

ぼーっとしていたヒナが目覚めたようにピチピチと短い翼を動かす。

「反応は得られたが……、何も見えんな」

「相変わらず真っ白だねえ」

うむ。天候が回復しないので、結局真っ白なままだ。

さてどうするか、と思った矢先、天上が急に明るくなった。みるみる空が晴れていき、雲を突き抜けたように濃い青空が広がる。

そして尾根を伝って、何かがこちらへ歩いてくる。

白と黒にオレンジ。ペングーだ。

雪の積もる中を時々は滑ったりしながらズモズモと歩いてやってきたペングーは、予想外にヒナと同じサイズだった。つまり猫と同じくらいの背。

近くまで来るとヒナがピルッとふるえて、ペングーへ向けて走っていく。

親鳥(?)はヒナを受け入れ、猫たちの方を向いた。

「ニンゲン……」

『しゃべったァ!?』

『そりゃ瑞獣なら妖精族だし、喋るだろ』

『五分五分かなと思ってましたけど、喋る方でしたね!』

猫は喋らないと思っていたからちょっとびっくりした。声が思いの外渋くて二重の驚き。

「我らの子を盗んだニンゲンではないな……」

「にゃん~、やっぱり人間にヒナは盗まれたにゃん?」

「風の子、いかにも」

速報、猫、風の子だった。

その呼び方でいくと猫はこのペングーさんを氷の子と呼ぶべき?

「愚かなニンゲン共が、我が子を盗んでいったのだ」

憤慨やるかたなしと言わんばかりに手足をバタつかせるペングーさんの言うことには、ヒナ泥棒は初めてのことではないらしく、もうすでに何匹も盗まれているという。

プアーッと口から氷の吐息を吹き出すペングーさん、たぶん武力的にそんなに強くない。まあ風猫族の猫もたいして強くないので親近感わきます。

そもそもここはペングーさんたちの繁殖地であり、人は足を踏み入れない約束があったそうだ。それが破られるようになったことにも、腹をたてているようだった。

「古の約束をニンゲンはもう忘れたか!」

「その約束はいつ頃されたものにゃん?」

「そういう話はしておらん!!」

「にゃあん~~」

怒るペンギンは大変可愛いけど、怒れば怒るほど寒くなっていく。目の前のペングーさんから吹雪が吹き出してくるから『ウィンドカーテン』も使えないし、猫、風邪を引きそう。『凍え』が出ております。

そっと『サーモスタット』を重ね掛けしていると、ヒナがペチペチと親ペングーさんを叩いた。

「ムッ、我が子を連れて戻してくれた恩人を凍えさせてしまうとは。仕方あるまい、ついてきなさい」

ペングーさんは怒気をおさめると、猫たちに背を向けて歩き始めた。ついてこいというので、みんなで後についていく。

この雪深い中、尾根を渡るのはなかなか危険な気がするのだが……、と思った矢先、地面が滑った。

「んにゃ!?」

「うえええ!?」

「ちょっ、ここで落ちるとかある!?」

ちょうど踏みしめていた雪が、斜面を滑り落ちる。すごいはやい! 白い雪煙で何も見えないけど落ちてることだけはわかる!

ヒエエ、これは全滅不可避では!? 一瞬焦ったが、よくみるとペングーさんも一緒に滑り落ちている。しかもあちらはまったく焦っていない。

「案ずるな、問題ない」

「まさかの順路にゃん!?」

「ダイナミック帰宅過ぎる!!」

そのまま滑り落ちた先、地面の氷が砕けて一面が雪に埋まる。猫もリカもみんなも、あとからあとから押し寄せてくる雪に埋まっていく。

本当に大丈夫にゃん~!?

疑ってしまったが、思わず閉じてしまった目を開けると、そこには全く別の光景が広がっていた。

「えええ?」

「ビオパール、にゃん?」

そう、猫たちは白い石造りの建物が並ぶ、小さな街――ビオパールのなかに立っていたのだった。

いや、雰囲気こそ似ているけれど、道行く人はペングーだし、よくよく見ると見覚えのない大きな建物もある。石造りの建物の周りにはかまくらが大量に立てられている。ビオパールにはなかったものもいくつもある。

猫は一通りビオパールを回ったから、詳しいんだ。ここは似てるけど、ビオパールじゃない。

「まさか、雪崩で失われた街、なのか?」

ロッテンさんが呆然と呟く。

「雪崩で失われた街?」

「にゃあ、ビオパールは数百年前に雪崩が起きて、街が一回壊れているそうにゃん。それは氷の 純魔(マギカ) が瑞獣を失ったときだったらしいにゃん?」

さすがに枝葉は端折って伝えていたので、改めてフーテンさんたちに説明。いや、猫もよくわかってないから、聞いた話をそのまま伝えるだけなんだけども。

「雪崩で壊れた部分がそのまま残ってる、なんてこたあり得んから、十中八九、異界やろなあ」

「たしかに、マイルームには帰れなくなってるね~」

「セーフティーエリアではあるようだから、魔道具マーケットみたいなダンジョン型の街ってことだろうな」

「そうだね。雪崩というより、異界の扉が開いたんじゃないかな」

なるほど、雪崩って情報自体が間違ってる可能性もあるか。数百年前で、記録も残ってないんだもんね。

「こっちの街に噂の祭壇とやらがあるかもしれないわね」

「アッ、そうですね、そうかも!」

ペングーさんは猫たちがワチャワチャしているのを見守った後、さあこちらへとばかりに手を差し出した。そこには一棟(?)の大きなかまくらが立っている。

「まずは中で暖まりたまえ。お茶を用意しよう」

「お茶……」

どうしよう、ただのペングーだと思ってヒナに生魚あげてたけど、もしかして加熱したものをあげておいた方がよかったんじゃなかろうか!?

もうあげてしまったものは取り返しがつかないけども。まさかお茶を飲むような文明的な暮らしを送っているとは思わなかった…!