軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12.湖畔の街ビオパール

にゃふふん、すっかりお金持ちである。

まさかブリーダー業でこんなに儲かるとは思いもよらなかった。いやあ、マンドラコラも楽しみですな。

マンドラコラといえば、トレントのモリーが育ててくれている白ラコラは、猫が育てていた白ラコラより大人しい。畑を暴れまわったりしないし、駆け落ちもしようとしない。なんというか、お嬢さまという感じがする。プランターで少数育てているせいもあるんだろうか?

マンドラコラとはまともに対面したことがないので、どっちがマンドラコラとして正しいのかはわからない。とはいえ肥料や育成については完全にモリー任せなので、たぶんモリーの知ってるマンドラコラに育つのだろうと期待している。

猫のやることといえばモリーのLV上げのために肥料を差し入れることくらいだ。トレントは動物を襲って養分を取る食肉タイプなため、せっせと肉の差し入れをしている。なかなか大食らい。

食肉の牧畜をするというのもちょっと考えたのだが、飼育するより適当な魔物肉を買う方が断然安い。手間もかからないしね。

とはいえ『牧畜』のLVはあげたい。白ラコラの増産は危険だし、マンドラコラを待つ日々である。

さて、次なる目的地、陶芸村イマリへ! というところだったのだが。

『ランさん! 突然ですが、湖畔の街ビオパールに来ませんか!?』

『サッサさんこんにちはにゃん~。ビオパールにゃ?』

楽士のサッサさんから連絡が来た。おお?

『実は今来てるんですけど、ロッテンが来ていてですね。ボウフォルみたいに合奏クエストがありそうなんです。ランさんなら『トロンポス・ベル』も持っていたし、一緒にどうでしょうか』

『にゃあ、こないだのサブイベントみたいなのがありそうってことにゃんね! 行くにゃん~!』

『わあい、お待ちしてますー!』

巡礼の旅は気ままなひとり旅、遅れても飛んでも問題ない。誘いに乗って、早速ビオパールへ。適正LVには全然足りないのだが、それをいったら石壁の街ボウフォルも足りてなかった。まあ大丈夫だろう!

転移施設(ポータルポート) を乗り継いで、初めての街、湖畔の街ビオパールへやってきた。

なんというか全体的に白い。石造りの建物は白い建材で出来ているし、雪は積もっているしでそう見えるのかも。ちらほら見える屋根の赤色に、真っ青な空が鮮やかだ。ボウフォルは黒かったので、反対みたいで面白い。

それにしても、さささささ寒い!!

街に降り立った途端、寒い! これは予想外! しかもデバフ『凍え』が出ているではないか。

「あっ、ランさんいらっしゃい! まずは失礼します!」

冒険者ギルドの前で待っていてくれたサッサさんに、ポンと肩に触れられたかと思うと、ぽわっと周囲が暖かくなった。

「あったかいにゃ!」

「『サーモスタット』という魔法です。10分しか持続しないので、その間にこちらをどうぞ」

「にゃっ、助かるにゃん~~」

ついでに『毛皮のコート』を譲渡してくれる。ありがたく受け取って早速装備。ほわ~~温かい。デバフもまもなく消えた。

「事前情報を調べるのを怠ったにゃ、ありがとうにゃん~」

「いえいえ、突然誘ったのはこちらですから、福利厚生みたいなもんです。どうぞお納めください」

「ホワイトにゃん」

「雪景色だけに…」

湖畔の街ビオパールは、防寒着か防寒用のアクセサリーなどを身につけないとデバフの出る街らしい。最初は『凍え』だが、だんだん『凍結』となり、しまいには『凍傷』が発生し、継続ダメージで送還されることになる。

室内にいれば防寒は必要ないが、屋外に出る場合は必須なのだとか。

「そのせいか、マケボではあこぎな値段で防寒装備売ってるんですよね。これは現地の職人さんから買いました」

サッサさんのくれたコートは真っ白なモコモコで、防御力がかなり高い。上着装備なので『学園都市のサッシュベルト』が装備できなくなり、ちょっとMPが下がるのが難点か。

現地の職人さんがシロクマーから作ったコートらしい。熊はクマーなんだよね、このゲーム。

ちなみにサッサさんもモコモコの白コートでお揃いだ。

「装備制限は不便にゃんね~」

「ねー。『サーモスタット』があれば装備無しでもいけるんですけど、効果時間10分なので張り直しが面倒なんですよね」

「にゃあ、いろいろあるにゃん」

『サーモスタット』は体の周囲に適温のフィールドを作る魔法で、火山地帯や極寒の洞窟でも役に立つ魔法だという。魔法師ギルドで覚えられるようなので、後で寄っておこう。

他にも温かい食べ物を食べると『凍え』は取れるので、それで乗り越えたりもするらしい。なかなかの猛者だ。

猫だけじゃなくて従魔や召喚獣にもデバフは出てしまうようで、残念ながら今回はマイルームへ送還。猫が『サーモスタット』を覚えるまで待っていておくれ。

唯一、新入りのフルク、リカだけは元気だったので、猫の足になってもらうことに。大型のフルクに小型種族の猫なので、騎乗が可能なんだよね。

恐る恐る背に乗ってみると、なかなかの安定感。猫の『騎乗』のLVもそれなりに高くなってきたしな。ルイに比べると乗り心地は落ちるけど、そこは好感度の高さもある。

ギルド前の屋台で『ホットワイン』を飲みつつ、サッサさんの話を聞く。オレンジとスパイスの香りがして美味しい。

横では『幻のスープ』なる屋台が営業していたのだが、残念ながら品切で飲めなかった。くぅ、気になる。鶏ガラ出汁っぽい、いい匂いがした。

「前回のボウフォルでのサブクエストを受けて、ご当地楽器のある街なら同じようなクエストがあるかもってことで、各地を巡っていたんですよ」

そこでわかったのは、ロッテンがいないと合奏イベントには発展しないということだった。

「ロッテンってどこにでも放浪してるイメージだったんですけど、やっぱり『 純魔の系譜(マギカ・ブラッド) 』種族クエストの関連NPCらしくて」

『 純魔の系譜(マギカ・ブラッド) 』に関連する街にしか現れないことがわかったそうだ。

「あっ、そうそう、前回のサブクエストは楽士スレで話題になりまして。楽士ってマイナーなので、非常に盛り上がりました」

「にゃ、楽士スレはチェックしてなかったにゃ」

そういえば猫も楽士なんだった。いろいろやってるからついつい忘れちゃう。生産系のスレはよく見るんだけど、戦闘系のスレは流れが速い上に情報が少なくて荒れてるところが多いから、つい流し見になって、そのうち見るのを忘れちゃうんだよね。

魔法士スレとかたまに面白い話も出るんだけども。

「それで検証が進んだ結果、ロッテンはどうやら5日毎に各地をうろうろしていることがわかりました。それで今回、ロッテンが来たのがビオパールだったんです」

「すごく検証されてるにゃん!」

数の力ってすごい。

ロッテンがビオパールに来たことがわかったので、サッサさんは猫を誘ってくれたらしい。『トロンポス・ベル』がご当地楽器なのはわかっていたし。

「ご当地楽器は、楽器を作るのは現地なら可能なんですが、楽曲を得るのが困難なんですよね。街のひとを巡るクエストをしてようやく楽曲ひとつだけ、とかなので、楽士としてはリターンがかなり少なくて」

「それで、すでに持ってる猫に白羽の矢が立ったにゃんね」

「そういうわけですにゃん」

サッサさんはすでに街を巡り、ご当地楽曲『リリー・リリー』を得るところまではなんとか終えたらしい。素早い。

「曲のタイトルがわかっていたので早かったんですよ。ランさんのお陰です!」

「にゃふん。それじゃあ、猫は何をすればいいにゃ?」

「ボウフォルのように生け贄を捧げる場所を探したいんです。おそらく、ビオパールにもあると思うんですけども」

「了解にゃん!」

てことは、まずは観光だな。

サッサさんはもうすでに大分街を巡っており、重要なところもスルーしちゃうかもしれないので、と別行動することになった。

ロッテンは街に来たばかりなので、時間の猶予は十分。

「それじゃあ行ってくるにゃん~」

「私ももう一度探しに行ってきます! また後ほど」

二手に別れて、捜索開始だ!

シロクマーの帽子を手に入れた。ゴーグルと入れ替えに身につければ、冬装備な猫の完成だ。

別に帽子まで変える必要はなかったんだけど、なんとなく寒々しい気がして買ってしまった。ふわふわの帽子は温かくて可愛い。お値段はそれほど高くなかった。たまにはおしゃれ装備もよかろう。何気にゴーグルより防御力あるし。

「いつもこんなに寒いにゃん?」

「いやあ、最近の寒さは堪えるね。いつもはもう少し、風も穏やかなんだよ。シロクマーも、山の寒さが堪えるとみえる。里に降りてくることが増えていて、困っているよ」

「にゃあ、大変にゃん」

赤ら顔の皮革職人さんは、手際よく革を縫い合わせつつ話をしてくれる。

ちなみに今の季節は夏だが、ポーツが常夏の街であるように、ビオパールは常冬の街であるらしい。季節の巡りなく延々と冬。それにはどうやら、この地にある伝説が関わっているようで。

「吹雪の乙女を怒らせたものがいたのかもしれないね」

「にゃあ…」

吹雪の乙女といえば、不老不死の少女というやつだっけ?

ボウフォルでロッテンさんが言っていたやつだ。

古くはルイネアと思われる不老の少女がいて、里の男と結ばれる。少女は子を生むが、男からは捨てられてしまう。今でも少女の悲しみが吹雪となって吹き荒れている、という話。

この少女が吹雪の乙女と呼ばれ、氷の当主はその子孫であるらしい。そして谷底に凍れる百合が咲かなくなったら、贄を捧げよと伝えられていると聞いた。

そして、ビオパールではここ百年ほど、凍れる百合は咲いていない。

「吹雪の乙女のお話って有名にゃん?」

「その背を覆う髪は黒々と美しく、金の冠を飾り、肌は白く、唇は橙の実……てやつかい? 早く寝ないと吹雪の乙女がやってきて凍りつかせてしまうよって、昔はよく脅されたもんだ」

「にゃあ? 雪女みたいにゃんね」

髪が黒くて肌が白い、はまあいいとして、唇がオレンジなのはなかなか個性的だ。あと、ルイネアで黒髪は珍しい。