軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33. 憎しみの炎

昨日と同じく『魔鉄』と『きれいな火花』集めに励む。採掘しては近寄ってきたフィラメントを倒すだけの単純作業だが、外れても『鉄鉱石』だし、採掘LVはガンガン上がるしで悪くない。

『にゃ、『白い炎』出たにゃん!』

『おお! 幸先がいい!』

昨日と合わせて2個目。

サッサさんと相談して『トーチベル』2個分の材料を集めることになっている。猫もせっかくだから『トーチベル』作っちゃおうかと思って。お金はかかっちゃうけど、使える呪歌の種類が増えるのはいいことだ。属性耐性・強化系は呪歌として有用だと思うしね。

今日も途中でBOSSが出たらしく人がワーッと2層へ駆けていった。ワンダリングBOSSは普通のBOSSと違って横殴りしても問題ないし、一撃いれるだけでも経験値が入るものだからそういう動きになるらしい。

「火属性のみで倒したい人にとっては、相当めんどくさいみたいですよ」

「それはそうにゃんね~」

うろうろするBOSSを独占して倒すのは大変だろう。苦労がしのばれる。

5層まで行くとちゃんとBOSS部屋があって、そこのBOSSを倒しても求めるアイテムは手に入るらしいけど、かなり確率の厳しいレアドロップなんだそう。

種族クエストって大変なんだなあ。

猫も風猫族に会ってクエスト進めたいとは思いつつ、会いにいける風猫族が隠れ島の虎猫マティさんしかいなくて悲しい。マティさんニャンニャンしないから……というわけではなく、なんとなくマティさんではクエスト進まない気がするんだよね。もうリボンもらっちゃってるし。

どうせ再会するなら白猫のミー(仮)さんがいいな!

などと余所事を考えつつ、カンカンしては『投石玉』を投げているうちに、必要個数が集まった。結構時間かかっちゃったね。

「よし! 早速、楽器工房へ行きましょう」

「にゃ!」

楽器工房で『トーチベル』を注文。

「やあ、うちの地方の楽器がよみがえるなんて、本当に嬉しいよ」

楽器職人さんは上機嫌で『トーチベル』を作ってくれた。サッサさんに続いて猫も注文。

「ふたりも作ってくれるんだね。トーチベルは合奏も出来る楽器だそうだから、是非とも楽しんでおくれ」

「合奏にゃ?」

「ああ。トーチベルは本来、複数人で奏でるものだと伝わっているんだ」

「そうだったにゃんね。楽しみにゃん~」

出来上がった『トーチベル』を、早速サッサさんが振ってみる。ガランガランと不思議な音色が鳴り渡った。やはり『トーチベル』は音階がないようで、鳴る音はひとつだけ。

音階がないから『トロンポス・ベル』とは違って、リズムで取るようだ。振り上げるとガラン、と鳴るので、リズムに合わせて『トーチベル』を振るといいみたい。

サッサさんも打楽器は初めてらしく、何度か振っていたが突然リズムがなめらかになった。

あ、自動演奏へ切り替わったのか。どうやら石碑の楽譜を弾いてみていたらしい。

「ああ、このリズムは…! フーフェズの泉で鳴る音色に間違いない!」

「『憎しみの炎』という曲らしいですね~」

ちらりとメニュー画面を見ると、火耐性上昇効果があるようだった。やはり街ならではの効果が出るんだね。

「憎しみにゃ?」

「泉で溢れる炎は女王の憎しみだというから、それを表したものなんだろうね」

なるほど、あの泉の火がモデルだとそうなるのか。

『やっぱり石碑のマーク、楽譜でしたね! リズムからすると、 ●(くろまる) でベルを鳴らしてます』

『『憎しみの炎』の楽譜だったにゃん?』

『と思われます。でもそうなると最後の鳴らさない空白が気になるので、やはり石碑が気になりますね…』

『にゃあ…』

再び石碑が気になってくるところだけど、うーん。猫はガラン、ガランと『トーチベル』を鳴らした。

「にゃん~、『トロンポス・ベル』は『アイスブレス』で奏でるのが本式って聞いたにゃ。これも火をつけたりするにゃ?」

「たしかに『トーチベル』ですし、火をつけるのもいけたりするのかも!?」

「あ、ああ、火素材を使っているし、火をつけるくらいはどうということはないけれど」

職人さんもオッケーをくれるので、では早速。

猫の『トーチベル』の先に『ファイア』を灯してみると、ボッと先が炎に包まれた。手を離すと、リーンと思いのほか澄んだ音が鳴る。そしてリーン、リーン、と鳴り続ける。えっ、これはどうすれば。

思わず振ってみると、振る間だけ音が止まる。

「にゃん!」

そういうことか!

『憎しみの炎』と同じように振ってみると、演奏と見なされたらしく自動演奏へ入った。おお! こっちの効果は、炎属性強化。この辺は『リリー・リリー』と一緒なんだな。

一曲終わると炎は勝手に消えた。

『石碑は合奏の楽譜の可能性が出てきましたね!』

『同じように振っても炎の『トーチベル』は ・(てん) で鳴るにゃんね!』

『はい! 楽譜であるなら、石碑を見つけるまでもなく最後の1音は必然的に ・(てん) ですね』

『もしかしたら合奏したら石碑が見つかる……にゃ?』

『ありそうですねー! 泉の前で合奏してみましょうか!』

早速、楽器職人さんにお礼を言って、泉へ向かうことに。

泉にはまだ炎が残っていた。ちょっと前に炎が湧いたのだろう。サッサさんがまだ炎を浴びたことがないというので、せっかくなので浴びてもらった。

「熱ッ! 熱いですねこれ!? アッ、でも結構じんわり…」

「面白いにゃんね~」

「いかにもファンタジー!て感じでいいですねこれ、……アッ!?」

「にゃん?」

「なんかフラグが立ちました…?」

「女王の涙にゃん? 猫も出たにゃん~」

「なんか不穏な響きですよねえ。まあ、女王さま閉じ込められているっぽいので納得感もありますが…」

「にゃん~、悲しんでたり憎んでたり諸説あるにゃんね」

「それも気になるところですよね」

サッサさんが通常、猫が火の『トーチベル』で、同時に「せーの」で振ってみた。

ガラン、リーン、リーン、と同じ動作をしていても違う音が鳴って重なりあっていく。最後に火のトーチベルがリーンと高らかに鳴ると、猫たちは自動演奏へ入った。

ちらっとメニュー画面を見ると『合奏中』の文字がある。合奏曲のタイトルは『愛の炎』。…この街、妙に愛憎推しだなあ…。

効果は火耐性減少・火属性強化。敵が火属性を持っていないならなかなか使える効果の気がする。

『アッ』

『にゃん?』

『なんかイベント起きそうです。いまプレイヤー消えました』

『にゃん!』

イベント空間に移動したってことか。

リーン、と最後の音を響かせて合奏が終わると、どこかからガラン、と鐘のような音が鳴り渡った。そしてリーン、と鈴を鳴らすような音も。そういえば泉の火が湧くときにもこんな感じの音がしたような。

石像を見ると、男性の石像と女性の石像の間に亀裂が入り、ゴゴゴゴ……と音を立てて動き始めた。そしてその亀裂から吹き出すように炎があふれでてくる。

激しい地響きがとどろき、街を歩いていたNPCたちが悲鳴をあげたり、うずくまったりしている。あわわ。

しばらくすると地響きは収まったが、あとにはすっかり様相の変わった、炎の渦巻く泉が残されている。

泉を囲む柵の一点が開き、そこに階段が生まれ、まるで猫たちに降りてこいといわんばかりだ。

「にゃわわ…」

「ま、まさかこんなことになるとは……」

いや、たしかに何か起きるかも~て思ったけど、ここまでのは予想してなかった…。

『やっちまいました…』

『にゃあ~…。出してしまったものは仕方ないにゃん、行ってみるにゃ?』

『にゃあ、せっかくだし、行ってみますか!』

開かれた階段へゆっくりと降りていく。ルイに乗りながらでは道幅が厳しかったので、帰還させることにした。この先ダンジョンだったらと思うと帰すのは悩ましかったのだが、仕方ない。街中だったのでふらふらしそうなスーニャも帰しちゃってたのが痛恨の極み。

『さっきみたいに熱いかと思ったらそんなこともないですね』

『ほんとにゃんね』

サッサさんの言う通り、泉のなかで燃えているように見える火は全然熱くない。浴びたときはたしかに熱かったのに、ふしぎだ。

階段の先は炎に包まれていたが、そのまま降りていく。やはり熱くない。幻なのかな? ただ目の前がメラメラしているので、大変眩しいし、歩きづらい。

ゆるやかな階段を最後まで降りると炎は消えて、そこには大きな空間が広がっていた。まわりは黒い石壁で囲まれているのだが、なにしろ広いので圧迫感は全然ない。丁寧に積まれた石壁なので、人工物だとは思うのだが。

ふたりが降りきるとゴゴゴ……と地響きが鳴り、階段が引っ込んでいく。

「閉じ込められたにゃん…」

「にゃん~」

イベントを終えるまで出口はない、という演出かな?

お、石碑発見。

近寄ってみると、猫とサッサさんの体がふわりと光り、しばらくして消えた。

「にゃ?」

「 系譜(ブラッド) スキルの有無でも確認されましたかね?」

「にゃあ、そうかも」

「残念ながら持ってないんですよね~~」

サッサさんが唇を尖らせつつ、石碑に触れる。何も起きない。石碑の文字を確認。

『・女王の涙が枯れはてるとき、新たなる贄を捧げよ』

贄ときたかー。

「ワオ。系譜スキル持ってたら贄になっちゃったやつ?」

「贄の基準が謎にゃんね~。女王をルイネアとすると、贄はルイネアの可能性もあるにゃん?」

「そのパターンもたしかに! アルテザのストルミみたいなものですよね」

「にゃあ、林檎を捧げたらいいにゃ?」

アルテザのクエストでは、ルイネアが異界の扉を閉じるための贄になる、という話があったはずだ。あれと同じく、女王が贄になって異界の扉を封じたパターンだった?

「えーと、たしかまず林檎を捧げると、贄になっていたルイネアが目を覚まして……みたいな手順でしたよね」

「そうにゃん~。林檎ならあるけども…」

「ここ、地下だし地面は石だし、難しそうな気もしますね」

「にゃん~~……」

うーん?

林檎といえば、アルラウネからも何か聞いてたっけ。たしかそう、廃れた都の向こう側、忘れ去られた祈りの先で、青い林檎がどうのこうの。

辺境はたしかにルイネの向こう側だし、合っているといえば合っている。忘れ去られた祈りの先、は堕ち神さまかなあとか思った記憶。その線でいくと、 青い林檎って、もしかして贄になってるルイネアのことだった?