軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

42.運送神の加護

猛毒の森はかつて猛毒を撒き散らす古代遺跡があったとかで、環境適応した猛毒の植物と生物、そして人造物しかいない。遺跡自体はメインストーリーで既に機能停止しているが、森に出没するmobに変化はなかったはず。

全体的に毒攻撃してくるのでめんどくさい場所って攻略サイトに書いてあったな。猫、ずっと前にこういうとこに来る前に毒耐性つけとこって思ってたことがありましたね。

毒耐性? ないよ!

目の前のガーゴイルも例に漏れず、毒持ちの人工物だ。たしか索敵範囲内に入ると迎撃するタイプのmob。

ガーゴイルは既に猫たちに視線を定めており、臨戦態勢だ。

ささっと前へ躍り出たモモチさんが「フンヌゥ!」とガーゴイルを持ち上げて投げる。まさかの武器なしバーサーカースタイルかモモチさん!

当然素手で触れたモモチさんは猛毒に……あれ、ならない。

「ぬ?」

「あれ、モモチ毒耐性持ち?」

「モモチ、毒つよくない」

「おや?」

「……んにゃ!!」

もしかしてさっきの栞か!?

「さっき、魔道具マーケットでアライアンス全体?にかかるっぽい毒耐性取得したにゃん。そのせいかも?」

「おおお! ナイス猫!」

「こんなん毒なかったらなんぼあってもいいですからね!」

「腕力はすべてを解決する!」

ジェノンさんはメイスでガーゴイルに殴りかかった。こっちはこっちで殴り 神官(プリ) か。シメジさんとヤマダーさんもそれぞれの武器で殴りかかる。

猫? 攻撃しようと銃を構えてみたら「弾もったいないからやめとき~」て言われたので、それもそうだなと思って久しぶりの気がするコズミックシュートでポコポコ。ダメージが…渋い!

毒ガーゴイル、近接武器での攻撃が弱点らしいので仕方ないんだけどね。ちなみに魔法と投擲武器には滅法強く、近接には弱いが攻撃する度に猛毒を食らう面倒な相手。

つけててよかった毒耐性!

コズミックシュートでポコポコしてたら突然にルイがガーゴイルに体当たりしにいったりしてびっくりもしたけど、無事撃破したのだった。

猛毒の森、毒がなければただの森――。

ということでその後は特に詰まることなく、自由都市へ到着。運送神官のジェノンさんによる移動速度上昇魔法が光った。めっちゃはやーい。

これは走っているのではなく運送神の導きを受けている状態とのことで、速度の割にスタミナ消費が少ないのが特徴。いいなあ。

自由都市に到着したら、早速物資を調達。こちらもすでにクエストで話がついているようであっという間だ。

PTで持てるだけ持っていくタイプのクエストらしく、持てば持つほどクリア成績がよくなるが、到着までのスピード感も問われる。

この手の持てるだけ持っていく依頼は、重量によって帰還までの難易度が異なるらしい。

「行きはよいよい、帰りは怖いやで!」

「言うて猛毒の森突っ切ることになるだけだし、あそこならBOSS復活してても毒だけだし」

「もう何も怖くない…!」

「フラグ、ダメ」

荷積みはパズルのようなもので、荷物(重要アイテム)毎にも食料や薬など種類があり、更に重量はそれぞれでバラバラ。みんなギリギリまで持ち込めるように、あーだこーだと交換しつつ際を攻めていく。

猫もいったんマイルームに戻って全部の私物をタンスに放り込み挑んだ。

最初はポイポイ詰めてたけど、ギリギリになってくるとやはり数字パズル状態だ。猫の荷物と、ルイの荷鞍と、荷車と、3つのインベントリにギリギリまで種類のバランスよく積むのはなかなか頭を使う。

「よし! みんな積めたな? もう入らんな??」

「オッケーオッケー」

「いっぱいにゃん~」

「ほな出発するで~!」

猫たちが自由都市から出発した頃、アライアンスからも鬨の声が上がった。

『レイドはじまった!』

『予想はしとったけど大群系やな!』

『地図が気持ち悪いくらいエネミー』

『大群系ではいつものこと』

『これなら猫ちゃんも安心よ~』

大群系というのは文字通り大量のmobが群れとなって攻めてくるタイプで、mobのLVは低~高までさまざま。出現地帯によってLVが偏ったりするので、自分に合ったLVの辺りに行くと適度に活躍出来るというわけだ。

ちなみに低LVmobは本当に山のように出るので、取り合いになったりすることはないらしい。むしろ中高LVのプレイヤーも対処してくれないと低LVプレイヤーがつぶれるそうな。

途中で中BOSSとか出てきて、最後は大BOSSするのはお約束と言えよう。

『なるべく早く辿り着きたいにゃんね~!』

『がんばるニャン!』

『待ってるにゃん~!』

『にゃん~!』

チャットがにゃんにゃんしたところで、出発!

「猫ちゃんは人気やなあ」

「にゃん? みんなにゃんにゃん言いたいにゃん」

「言いたいかぁ?」

「一度言ってしまえば癖になるにゃんよ~」

「にゃにゃにゃ」

「ヤマダーお前!?」

ヤマダーさんは招き猫ポーズまでしてくれた。猫もしちゃう。にゃんにゃん。

「にゃんにゃん」

「モモチまで!?」

モモチさんの真顔のにゃんにゃんいただきました。

まあ実際、猫が人気というよりにゃんにゃんなら言いやすいからノリで言ってるだけだと思う。

レイドはやはり橋を守る形で起きているらしく、プレイヤーは橋のこちら側に立っての防衛だ。

拠点防衛なので橋を守りきればプレイヤー側の勝利となる。この手のレイドは時間いっぱい続くので、プレイヤーは適宜休憩して交代するのがお約束だ。

元々CVCとかする強いクランなんかは、大群系のときだけはその他のクランと協力して、戦力が偏らないように交代で休んだりするんだって。

そういうところまで考えるのはすごいな。

移動は予定どおり猛毒の森を突っ切る。ぐんぐん進んでいく。

運送神官ジェノンさんの特殊神官魔法『キャリッジ』によってとんでもない速度が出ている。行きも十分速いと感じたけど、これはもう別格だ。これまでにない速度でジェットコースターみたい。

ジェノンさんいわく「荷が重ければ重いほど速度が出る」とのことで、今は積載量ギリギリまで積んでいる状態、「天辺まできとる」とのことだった。

はーやいはやい。そしてガーゴイルとか毒フルクとかが出てきても、先頭のシメジさん(タンクである)が撥ね飛ばして終わる。スピードが出すぎているとそんなことが出来るんだね!?

完全に倒せる訳じゃないんだけど、飛んでいってしまうので戦闘にならないっていう。

「これ、大丈夫にゃん?」

「距離離れりゃ敵視切れる、何の問題もあらしまへん!」

「周辺にプレイヤーがいたら押し付けになっちまう可能性もなきにしもあらずだけど、今はいないからへーきへーき」

本当か!?

ちょっと怪しいがこの速度では何もできない。ついていくだけで精一杯だ。

まあ黄色星出てるのでかなりのダメージだし、仮に押し付けてしまっても瀕死mobなので許されると思いたい! すまないすまない。

そんな感じで撥ね飛ばしながら進むことしばらく、予想通りBOSSが登場した。

したんだけど、猛毒の森のBOSSもmobと同じ特徴を持っている。つまり近接弱点の、猛毒持ち。

はい、毒耐性つけててよかったね……!

モモチさんが主体となって、シメジさんは盾でジェノンさんはメイスで、ヤマダーさんは双剣で、ついでにルイもたまにお邪魔。

ちょうどいいタイミングでシメジさんが行動阻害ノックバック攻撃を撃つのでほぼ完封できてしまって、囲んでポコポコしているうちにリザルトが出た。

猫ったらルイやみんなの従魔(白馬たちも参加してた)に補助かけたりするくらいしかすることなかった。なお回復はレト。

「猫ちゃんヒーラーおおきになあ!」

「回復せえ神官」

「運送神の神聖魔法に回復はないんや、わかっとるやろ!」

「お役に立ったならよかったにゃん~!」

運送神はヒーラー向きじゃないタイプの神官らしい。代わりに移動補助系が多いみたいだし、ちょっと気になっている。加護はあるし、光魔法……いやいや。

戦闘を終えて猫たちはまた風に乗る。

ビュンビュン飛ばして、あっという間に魔道具マーケットの『夜闇に透ける霧の橋』が見えてきた。うっすら光ってるからわかりやすい。

つまり、もうレイド地帯に入っている。

「ヒャッハー!」

ここでも敵mobを弾き飛ばしつつ、味方のいない道を選んで進んでいく。

「どいたどいた~! 街までの運送便やで~!」

ジェノンさんが声をかけるとワラワラと人が逃げていく。そこを猫たちは馬蹄を鳴らして駆ける。うわわ、さすがにPK無効だとは思うけど、万が一踏み潰しちゃったらと思うと怖いんだけど!?

「前方にフリーの中BOSS発見!」

「よっしゃ任しとけ! ついでに轢いたろ!」

「張り切りすぎうける」

「うっさいわ、こういうときのためにマイナー神官しとんねん!!」

爆走する4体の馬(内1匹ロバ)に、プレイヤーたちがワーッと蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

そりゃこれだけ大きな蹄の音を立てて、とんでもないスピードで走ってくる馬と荷車があったら猫も逃げる。ヒエエ、速い、はやい!

「やったるでー! 『チャリオット』!!」

ジェノンさんの声と共に、ボオン…とピアノの低音に似た音が戦場へ響いた。

ギリギリと金属を軋ませるような音、そして高らかな馬の嘶きと、ズシンと重たい蹄の音。ガラガラと引きずる鎖の地響きが連なる。

猫たちに重なるように4頭立ての馬車(馬はケルピー、後ろ足はヒレで波を引きずっている)が現れ、走り始める。猫たちも追いかけるように走る。

運送神の特殊神聖魔法『チャリオット』は、積載量が多ければ多いほど攻撃力が上がる。攻略サイトで調べたときには、4頭立ての馬車が現れ突っ込んでいくと見た。なるほど、これがそうか!

現れた馬車の上で手綱を引いているのは青い肌の男性。おそらくは運送神の化身なのだろう。ひらりと鞭が踊り、パアンと大地を音高く打ち付ける。

中BOSSは大きな半人半獣のミノタウロスで、「え?」とでも言ってそうな顔をしていた。

星を降らせるように辺りがパアッと明るくなる。

「すげー! メタリック星!」

「ンナハハハハハハ!!」

「んにゃ!?」

……ああ!! これダメージ星か!

少し赤みを帯びているからおそらくは銅の大きな星が3つほど出て、それから七色の星がキラキラとあちこちで散った。

あわー!?

戦闘の中心にいるってこんなに目映いんだね!?

「サイコー! このまま街まで行くでー!」

ドドドッと蹄を鳴らして猫たちは透き通る橋を渡る。